エアガン

2019/04/29

飯柴智亮が語る「特殊部隊用の銃器とは?」

 

 Tier-1部隊(※1)において、どのような銃器が要求されるのだろうか? 銃器の特性を語るには、部隊の特性を理解する必要がある。
 Tier-1部隊はどこも少数精鋭だ。例えば、アメリカ陸軍ODA(※2)は12名で構成される。そのため如何にひとりひとりが強靭な将兵であろうとも、チーム単体の火力は微々たるものだ(CAS(※3)は除く)。人数で押されると意外なほどもろい。映画『Tears of the Sun』を思い出してみるとよいだろう。こうしたことから武器には下記のような特性が求められる。

 

 

  1. 質実剛健、故障が少ないこと
  2. 軽量であること
  3. Jumpable(空挺降下可能)であること
  4. 補給・兵站に心配がないこと(弾薬や補充部品)
  5. クラス1メンテナンスが容易なこと
  6. 実戦で証明されていること。もしくは実戦で証明された銃器を多数製造している会社が製造していること

 

※1: Tire-1とは一流の意味、つまり特殊部隊。
※2: 陸軍特殊部隊グループ(いわゆるグリーンベレー)の最少単位、Operation detachment A(作戦分遣隊A)、Aチーム。
※3: 近接航空支援。

 

 

では以下に、それぞれ説明しよう。

 

飯柴智亮が語る「特殊部隊用の銃器とは?」

 

 

1. 質実剛健、故障が少ないこと

 

 まず1番だが、銃器であれ何であれ、簡単に故障する装備はTier-1部隊には居場所がない。これを最重要に考える隊員は、あえて旧ソ連製AK-47小銃を使用する。また、空挺降下時に地面に叩きつけられることも、頑丈さ(信頼性)が求められる理由だ。

 

 

2. 軽量であること

 

 次に2番。Tier-1部隊は個人の携行装備品が多いため銃器に限らず軽量な道具を好む。また機動性が求められるため、重量がある銃器は好まれない。

 

 

3. Jumpable(空挺降下可能)であること

 

 3番。Tier-1部隊は例外なく空挺部隊である。例えば「陸軍第1特殊部隊グループ」は「1stSFG(A)」と表記される。(A)はAirborne(空挺部隊)の意味だ。空挺部隊とは全員が空挺資格を有する部隊を指し、装備類も空挺降下に耐えうるものでなければならない。具体的には、全長が長い銃器は好まれない。降下時に邪魔になるからだ。狙撃銃など、ある程度の銃身長が必要な銃器は、ストックが折り畳み式もしくは伸縮式である。

 

 

4. 補給・兵站に心配がないこと(弾薬や補充部品)

 

 これは非常に重要である。特に弾薬は死活問題であり、友好国もしくは敵性地域においても調達可能な弾薬であることが望ましい。AKが好まれるのは1番の理由に加えて、4番の点にも優れるからだ(※4)。避けるべきはH&K MP7やFNH P90など特殊な弾薬を使う銃器だ。特殊部隊はいかにも特殊な弾薬を使っていそうだが、こうした銃器の使用はかなり限定される。

 

※4: 加えて、発射音が敵と同じなので音で存在を発見される可能性が低い利点もある。

 

 

5. クラス1メンテナンスが容易なこと

 

 これについては、メンテナンスのクラスフィケーションから説明しよう。クラス1が各オペレーターレベル。つまり銃身交換など。クラス2はアーマラーレベルが担当するもの。クラス3は製造メーカーによる修理もしくは交換が必要なメンテナンスだ。1番とも重なる話だが、メンテナンスが容易なら故障も少ない。グロックがいい例だ。故障が少なくメンテナンスが容易。近年多くのTier-1部隊が使用しているのは、そういった理由が大きい。

 

 

6. 実戦で証明されていること。もしくは実戦で証明された銃器を多数製造している会社が製造していること

 

 これはもはや説明不要だろう。なお民間市場での販売実績が豊富でも、あまり信頼は置けない。軍・警察機関向けの実績が豊富な会社の製品こそ信頼される(もちろん、そうした会社でも駄作はあるが)。

 

 

 以上が特殊部隊の銃器の“必要条件”だが、最後に「サプレッサーが装着可能」という条件がある。条件というより、もはや常識とすらなりつつある。Tier-1部隊の作戦行動は隠密性が求められることが多いため、騒音は少ないほうがいいに決まっている。また夜間戦闘において、マズルフラッシュが狙われるので炎が出ないサプレッサーの有効性は説明するまでもないだろう。

 

 

解説:飯柴智亮

 

 


この記事は月刊アームズマガジン2019年6月号 P.28~29より抜粋・再編集したものです。

 

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