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2024/11/24

ロケ地としても利用される廃墟「鹿島海軍航空隊基地」Photo Shoot Ruin【アームズフォトグラフ】

 

 

 茨城県南東部には日本第二の面積を誇る湖、霞ヶ浦がある。その湖畔の南部に今回の目的地はある。
 美浦村 村名の通り湖沼である霞ヶ浦に面しており、平地ではその豊かな水源から田園風景が広がるのどかな土地。競馬が好きな人であればトレーニングセンターがあるので聞きなじみがあるかもしれない。

 

 帝国海軍は首都防空の要として東京の周りに多くの基地を設けていた。中でも茨城県はかなり航空基地が多く、故に今でも多くの遺構が残っている。その中の一つが今回訪問した『鹿島海軍航空隊基地跡』になる。

 

14mm / F8.0 / 1/200 / ISO 100
今回は廃墟らしく暗い雰囲気とは反対に、多くロケ地利用されているということで作品の設定画やイメージカット風の現像を行ってみた。
白飛び黒つぶれを抑えて全体的に柔らかめな雰囲気で仕上げた

 

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  • 田園広がる湖畔沿いの航空基地

 

 8月某日、東京からおよそ2時間弱、最寄りの稲敷ICで降り、村の中心街であり少し起伏のある道を過ぎると視界は開け、一面青々とした田園風景が広がる。そんな田園風景広がる中に今回の目的地である大山湖畔公園こと『鹿島海軍航空隊基地跡』(以下:航空基地跡)はある。

 

「航空基地らしい開けた空の地だな」と思いながら、旧自動車車庫に車を止め公園へと向かう。一番に最初に目につくのは公道からも見える庁舎跡だ。ここには司令官室もあり航空基地の本庁舎として運用された。


 この航空基地跡は戦後東京医科歯科大学霞ヶ浦分院として病院利用もされており、この本庁舎は分院として開院から閉院されるまで使用されてきた。そのため、航空基地跡から病院として扱うための改修が多く施されており、航空基地時代とは外観から内部まで少し異なる。
 

24mm / F8.0 / 1/60 / ISO 5000

 

 とはいえ庁舎内はなかなか見応えがある。入口からエントランスへと入ると、当時の建築で広く見られる中央階段に高い天井と中央階段がお出迎えする。
 入って左側は展示室となり、ここには航空基地についてや、ロケ地利用、企画展や当時の食堂を再現した部屋などがある。残りは立ち入り禁止箇所も多いが航空基地・病院跡の雰囲気を残す建築になる。
 

43mm / F4.0 / 1/60 / ISO 500
窓の周りをマスクで少し露出上げ+ローコントラストにして柔らかな光にしてみた。色見も少し暖色に振ってノスタルジックな雰囲気に

 

105mm / F4.0 / 1/60 / ISO 1000

 

24mm / F4.0 / 1/60 / ISO 100


 

14mm / F8.0 / 1/640 / ISO 640

 

 

 中央階段を上り二階に上がる。
 窓ガラスが割られるのを防止するためにすべての窓が板で封じられている。そのため、二階は上がってすぐはまだ明るいのだが、少しでも廊下に入ると途端に暗闇の中に放り込まれる。

 

 この階に展示物はなく、部屋をそのままの姿で見学することができる。できるが、前述の通り板の隙間から漏れ出る光か中央階段からの僅かな光しか届かないので写真撮影はかなり難しい。懐中電灯を持ちながら探索する体験は、さながらホラー映画を体験している気分。

 

22mm / F8.0 / 1/60 / ISO 640
二階は光が届きにくく暗めなのであえて彩度をかなり落として現像。窓が封じられることがなければもっと綺麗な光が差し込んでいたと思うと残念(保全という観点では廃墟である以上付きまとう問題)

 

35mm / F1.8 / 1/250 / ISO 1250

 

35mm / F1.8 / 1/250 / ISO 1000

 

24mm / F2.8 / 1/60 / ISO 1250
 

 

22mm / F2.8 / 1/60 / ISO 6400
このように二階は窓がすべて封じられている

 

 さらにこの庁舎には屋上もある。先日同公園が開園一周年記念としてガイド付きで屋上の一般公開が行われていたが、普段は上がることのできない場所。
 屋上へは建物内で右側にある階段から登っていく。一人しか通れない様な急で狭い階段を上ると3階へ、そして扉を開けると屋上へとたどり着く。

 出入口から1mでも横に動こう物なら屋上から落下するような場所で、他の場所にも柵はなく雑草の生えた場所なので、そのままの姿を残すのであれば案内がなければ一般公開は難しいのを実感する。

 
 柵がなく危ない分…と言うべきか、屋上の解放感は素晴らしい。関東平野という文字を理解できるほど平野が遠くまで続く。北側を見ると海のように霞ヶ浦が広がって、ここに航空基地が作られたのも納得できる。
 

24mm / F4.0 / 1/1600 / ISO 100
柵がないので地面が向こうまで続いているような錯覚を受ける

 

35mm / F1.8 / 1/640 / ISO 100

 

14mm / F2.8 / 1/400 / ISO 100
広角で安直な感想だがジブリ作品にありそうな雰囲気を漂わせる

 

41mm / F8.0 / 1/800 / ISO 100

 

35mm / F1.8 / 1/160 / ISO 100
屋上へと通じる鉄製のドア。少し開けると壁面に絡みつく蔦の緑が顔を出してくる

 

 屋上を堪能したら庁舎を後にして敷地内奥の方に向かう。かつてはこの辺りにも士官宿舎(病棟)が建っていたが、現在では自然に飲まれかけたその基部を残すのみ。
 反対側からも生い茂る草木から庁舎が顔を出している。こちら側見ると壁面にびっしりと蔦が張っていて、自然に飲まれた廃墟らしさをふんだんに醸し出している。
 

24mm / F2.8 / 1/2000 / ISO 100
個人的に好きな写真だが高精細な大画面やプリントじゃないと出したい良さが伝わりにくいのが悲しいところ

 

 草木生い茂る道を歩くと舗装された道にたどり着く。ここは当時舗装された道で、現在のアスファルトとは違い小石の混ざったコンクリートが特徴。次は舗装路を辿り歩くと敷地外からも目撃できる巨大な煙突のある建築にたどり着く。ここがボイラー室になる。

 

 外観はかなり緑に取り込まれているが、内部はそこまで草が侵食することもなく程よい廃墟感を味わえる。昭和14年製でレンガ積みの巨大なボイラーはその大きさから撤去するのも難しかったのか、そのままの姿で佇んでいて姿も特徴的。

 

21mm / F2.8 / 1/100 / ISO 100
ボイラー室は時間帯によって光の差し込み方が変わってくる

 

24mm / F4.0 / 1/200 / ISO 100
二つのボイラーが並ぶ光景は圧巻。時間帯によっては逆光でいい感じの光がはいってくるかも…?

 

22mm / F2.8 / 1/60 / ISO 100

 

35mm / F7.1 / 1/60 / ISO 125

 

73mm / F4.0 / 1/60 / ISO 100

 

27mm / F8.0 / 1/2500 / ISO 100

 

 ボイラー室から少し歩いた先が最奥になり、ここには自力発電所と物乾場がある。ここは廃墟・写真好きであれば一番廃墟として美しく撮りごたえのある場所になる(個人の感想)。

 トタンの外装に木製の屋根で作られ、蔦が絡みついた外見はかなりボロボロで状態が悪く見えるが実際にはかなり堅牢になる。

 

67mm / F8.0 / 1/320 / ISO 100

 

 扉はなく中に入ると廃墟として満点な風景が広がる。入口上部だけに残る屋根は木製でありところどころに隙間が見られ、発電機が置かれてあったであろう場所は見上げると鉄骨越しに青空が見える。これによって印象的な光が建物内に入ってくる。
 建物内も植物に浸食されており、ところどころに見えるコンクリートがいい味を醸し出している。入って右左を向くと何かに使用されていた部屋と思わしき場所があり、その屋根もいい感じに崩れているだけではなく下には崩れた屋根とトタン壁が散乱している。

 

 時間帯によって様々な隙間から光が顔を覗かせ地面や壁に綺麗なコントラストを生み出す場所なので、椅子を置いて一日この場でゆったりとしたいほど。

 

14mm / F2.8 / 1/1250 / ISO 100
もっとも廃墟らしく、季節によって植生も変わってくるので四季を楽しめるかもしれない自力発電所の廃墟                                                                                             

 

25mm / F5.0 / 1/250 / ISO 100
隣の部屋も中々いい雰囲気の廃墟感漂う

 

22mm / F2.8 / 1/250 / ISO 100
鉄骨の赤、空の青、自然の緑が色彩にいいコントラストを生んでいる 

 

14mm / F2.8 / 1/60 / ISO 100
広角で地面のがれきから屋根まで一枚に入れてみた。現像で全体的にニュートラルにしつつ、空のハイライト部にワンポイントで少し滲みをいれて雰囲気を出してみた

 

 他にも道中草木に埋もれたコンクリートを目にすることがある。今ではそれが何であったのか資料を見ないと判別が不可能だが、これらもそれぞれ役割を持つ建物であった。
 そんなこんなで見学を終えて外に出る…が、このまま帰るのは実は少しもったいない。まだすぐ近くに航空基地の名残が残っているので少し寄り道していく。
 

39mm / F8.0 / 1/400 / ISO 100

 

49mm / F8.0 / 1/400 / ISO 100


 公園を出て左、湖畔方面へと行くとかつて水上機を離着陸させるのに使用していたスロープが見えてくる。なだらかで穏やかな波も打ち付けるので遠めだと一瞬砂浜かと勘違いする不思議な場所。風向きが変わっても離着陸できるよう、湖畔にL字型で作られている。
 まるでSF作品に登場するような不思議な光景は、ある意味必見かもしれない。

 

24mm / F10.0 / 1/400 / ISO 100
コンクリートのスロープと霞ヶ浦。水の色を柔らかい青色にし、スロープをコンクリートのくすんだ灰色から少し砂浜っぽい明度の高く暖色よりの色にしてみた

 

24mm / F10.0 / 1/500 / ISO 100
ぱっと見海のような雰囲気を感じるが海じゃない違和感のある景色に仕上がった

 

  そして少し地味かもしれないけど、スロープ近くにはかつて荷下ろしに使用していた小さい港と、当時から使用されている防波堤。その近くにはかぶせていた土が無くなりコンクリートが露出している軽油倉庫が存在する。

 これで鹿島海軍航空隊基地跡の見学は終わりだ。

 

73mm / F10.0 / 1/400 / ISO 100

 

94mm / F8.0 / 1/200 / ISO 100

 

34mm / F8.0 / 1/125 / ISO 100


 史跡公園として後世にこの飛行基地跡や戦争体験を伝える役割を持つ公園ではある。しかし、そう重く考えず是非とも訪問してほしい公園だと思う。単純に「廃墟が見たい・好きだから」「フォトジェニックだから」「ドライブがてらに」といった気軽な気持ちで来ても悪くはないし楽しめる。

 

 こういった戦時遺構は数あれど、しっかりと管理され見学でき、それでいて廃墟としてもかなりレベルの高い場所は全国的に見ても少数である。是非とも訪れてほしい場所です。僕も次は個人的に美浦トレーニングセンターと共に再訪したいところ。

 

 

鹿島海軍航空隊跡(大山湖畔公園)

 

 

  • 場所:〒300-0402

 茨城県稲敷郡美浦村大山

 

 

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PHOTO&TEXT:出雲
撮影協力:プロジェクト茨城
     大山湖畔公園

 


 

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