実銃

2024/06/23

ネオクラシックな魅力に満ち溢れた1911「SPRINGFIELD ARMORY 1911 RONIN」【中編】

 

SPRINGFIELD ARMORY 1911 RONIN

 

 

 ブラックスライド+シルバーフレームは80年代1911カスタムのお約束。このレトロスタイルをベースに、新しい要素を随所に盛り込んだハイグレードなディフェンスモデル、それがRONINだ。ネオクラシックな魅力に満ち溢れた1911がここにある。

 

前編はこちら

 

 


 

RONIN

 

 長い長~い前振りはこの辺にして、主役のRONINだ。登場は2020年。発売価格は849ドルで、現在は899ドルに上がっている。自分は中古に760ドル払った。前の持ち主は「1マグしか撃ってない」と言っていたが、それは大げさとしても、ほぼ新同のフレッシュさを保った状態だったので決断した次第。

 

 5インチバレルの、所謂ガバメントモデルである。口径は無論.45ACP。フレームはステンレスでスライドがスチールのガンブルー仕上げ。バレルはマッチグレードのステンレス製でノーマルなリコイルプラグが付いた、実にトラディショナルな面構え。


 スライドのリアルなブルーはやはり魅力だ。ペイントベースのフィニッシュが一般化した昨今では新鮮で貴重。それをステンレスのフレームに合わせた白黒ツートンのコントラストがまた素敵。今となってはレトロな風景だが、筆者にすればモデルガン時代からの憧れだ。実銃ならパックマイヤーのカスタム、モデルガンならMGCのカスタムガバが思い出されて泣けてくる。

 

リアサイトはタクティカルラックと呼ばれるもの。盛り上がったトップ部を机の角に押し付けてスライドの操作が可能だ。片手が使えない時に役立つ。そんな乱暴なこと、自分は絶対やらんけどね。ノッチはスクエアで、二個の白ドット入りだ

 

 姉妹品として、9mmと10mm、そしてコンパクト版とアルミ合金フレーム版も用意されている。アルミ合金だったら、この中古は個人的に流したと思う。逆に9mm口径なら、アルミもアリかもと自分は考える。

 

 RONIN の名称は、もちろん侍、浪人の意だ。黒澤映画のおかげで、欧米人でもRONINの単語を知る人は多い。西部劇の流れ者とはちょっと違う部分とか、コンセプト的にも割と皆さん理解してるように思う。ちなみに自分は、『七人の侍』よりも『隠し砦の三悪人』、そして『用心棒』よりは『椿三十郎』に惹かれる黒澤ファンである。

 

 話を戻して、第一印象は、上品。派手なのに控えめ。物腰は割と柔らかく、しっとり感、潤いのようなものを感じる。有名大名に仕えていた頃の品格が残る、良き姿を留めた浪人一年目の侍といった出で立ちか。

 

ストレートなメインスプリングハウジングに20 LPI のチェッカリングが入る。ココが唯一のチェッカリング加工箇所だ。なお、同社の1911にはかつてインナーロック付きもあり、それはこのハウジングにキーホールが開くが、今は廃止になったようだ

 

 手に取った時の一体感は上々だ。市販品の割に、銃全体がこっちりタイトなフィッティング。手元にあるコルトのレイルガンだと、グリップセイフティの取り付けが甘く、新品購入の時点からカタカタ音がした。人件費を浮かすため、擦り合わせ作業が省ける緩々なクリアランスで組んでるんだよね。

 

 RONINはパーツどおしが程よくマイルドに溶け合っている。当たり前のことが当たり前に処理されている。加えて、全鉄製の肌触りと重量感も、レトロファンには大歓迎だろう。グリップがちょっと気に入った。前後幅が短く、しかも薄め。色も派手さの無いダークな茶色。この一種地味なグリップが、銃全体を引き締め、落ち着きをもたらしている。握り心地は第一級。手が小さい自分には余計に確かなフィット感だ。

 

ウルトラスリムのラミネートウッドグリップ。対角線の半チェッカーが特徴的で、クロスキャノンのロゴがカッコイイ。アルタモントのOEMとのことだ。ステンレス製のトルクスねじもオシャレ

 

 スライドを引けば、一切ガサつき無し。鉄の素材も悪くなさそう。スプリングフィールドは、自社のウェブサイトで素材の質の良さを殊更にアピールしている。キャストではなくフォージング(鍛造)を強調している。それが製品の強靭さと耐久性の秘密だと。確か昔は、ブラジルで鍛造した素材を同社は使っていたが、今は何処製だろう。意外とS&Wが請け負っているのかも。各部を細かく見ていこう。

 

◎ サムセイフティが片側のみだ。エクステンデッドのセミワイドだがアンビでない。この手の仕様は自分は初めて。


◎ 昔ながらのリコイルスプリングプラグを使用。ファンクションは無論タイムプルーフ済みだし、分解組み立ても容易。何より、景色に懐かしさと安心感がある。

 

トリガーは樹脂製。4個穴のジェネレーション2スピードトリガーだ。ミディアムロングで前面にはグルーブあり。パフォーマンス高そう


◎ スライドのフロント部にグルーブが切ってある。後部のグルーブと同様のアングル付きだ。確か同社の1911は、85年の登場時からアングル付きのグルーブだった。


◎ トリガーは黒の樹脂製4ホール・ジェネレーション2が付く。プルは4.5ポンド(2,041g)。軽過ぎず重過ぎない、いわゆるコンバットトリガープルというヤツ。ブレイキングもクリーンだ。


◎ ハンマーはスケルトナイズドされた軽量デルタスピードハンマーを採用。デルタ穴が異常に広く、マジで軽そう。

 

三角穴が大きく開いたデルタタイプのハンマー。指の掛かりはコーンタイプより全然良い。70~80年代のカスタムにはまった自分には、凄い進化に見える

 

◎ その軽量ハンマーを、長く伸びたビーバーテイルグリップセイフティが深く包み込む。包み込みが深い分、ハイグリップが可能。キレを確実にするメモリーバンプも付く。


◎ フロントサイトは今時のファイバーオプティック。赤い輝きが実に鮮やか。一方のリアサイトはタクティカルラックと呼ばれるもの。机の角等に押し付けてスライドの操作が可能だ。ノバック主流の昨今では少々珍しい仕様。

 

ファイバーオプティックのフロントサイトサイト。レッドのアクリル棒がビビットに輝く。お好みでグリーンの予備チューブも付属する。構造上、ベース部の形状がやや華奢に見えるが、考え過ぎか


◎ マガジンはイタリアのMEC-GAR製だ。8連発のエクステンション仕様。OEMではなく、MEC-GARの刻印が堂々入る。構造が凝っており(写真参照)、樹脂製フォロアーの滑らかな動き等、かなり良い出来。同社は1965年の創業以来、100ミリオンを超えるOEMのマガジンを作り続けてきたのだそうだ。ノウハウの蓄積が凄そう。


◎ エジェクションポートは無論、ローワー&フレアー加工で決めている。

 ざっとこんな具合。

 

ローワー&フレアー加工が施されたエジェクションポート。チェンバーのトップ部に残弾の確認穴があるが、小さ過ぎてイマイチ見えずらい

 

 その他、ハウジングにはチェッカリングが刻まれるが、フロントストラップは真っさら。トリガーガード下部のえぐれも無ければ、マグウエルの面取りも必要最小限に留めてある。今時の1911でありながら、結構あっさり、しつこさが全くない。セミカスタムではなくてハイグレードの様相。多分その辺りが、RONINのRONINたる所以だろう。

 

Photo&Text:Gun Professionals サウスカロライナ支局

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2022年5月号に掲載されたものです

 

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