実銃

2024/06/23

ネオクラシックな正統派1911を実射「SPRINGFIELD ARMORY 1911 RONIN」【後編】

 

SPRINGFIELD ARMORY 1911 RONIN

 

 

 ブラックスライド+シルバーフレームは80年代1911カスタムのお約束。このレトロスタイルをベースに、新しい要素を随所に盛り込んだハイグレードなディフェンスモデル、それがRONINだ。ネオクラシックな魅力に満ち溢れた1911がここにある。

 

前編はこちら

 

中編はこちら

 

 


 

 実はRONINのキャッチコピーが、“CLASSIC STYLING. MODERNFEATURES”だ。その謳い文句の通り、温故知新と先端テックの融合というか、ベーシックを数ステップだけ発展させたアドバンスド・ベーシックというか、ミニマムのプラクティカル・パッケージといったノリが顕著。


 ネットのレヴューでは、“ディフェンスとコンペティションの分岐点辺り”と評価する向きもある。が、同社のコンセプトはそこにはないだろう。今時のコンペ用1911は、例え入門レベルでもブラッシュアップのレベルがもっと高い。敢えてオフェンス型ではなく、浪人という孤高のストリートファイターにふさわしいシリアスなディフェンス用のツールと見るべきと自分は思う。

 

マグウエルにはリロードを考慮した面取り加工有り。サラッと深追いしていないところがポイント

 

 補足として、RONINのファイアリングピンはタイタニウム製だ。同社の1911は全種タイタニウムだそうだ。強靭であると同時に、軽量だから慣性を受けにくく、銃を落下させた時の暴発を回避できる。一種の安全の担保だ。


 安全といえば、同社の1911は未だにファイアリングピンブロックは未装備だ。だからこそのタイタニウムでもある。加えて、同社の1911が長年レーシングカスタムのベースに重宝されてきたのは、あくまでもミルスペックに則った、ファイアリングピンブロック未装備のシンプルな構造だったからに他ならない。

 

フレーム内部の様子。同社の1911は、未だにファイアリングピンブロックは未装備だ。タイタニウム製のファイアリングピンを採用することで乗り切っている


 ということで、RONIN、いかがであろう。まさに質実剛健を絵に描いたような、百戦錬磨の浪人が後生大事に携える刀のイメージ。天下の銘刀ではなく、どこまでも実戦重視の研ぎ澄まされた一振りといった塩梅にそろそろ見えてきたのではあるまいか。


もしも一点、自分が手を加えるとしたら、フロントサイトかな。決して悪くはなく、むしろ性能は一級で非常に見やすいのだか、浪人なんだからココは派手さを控えたい。ファイバー抜きの、鉄のソリッドタイプ。白点入りでつや消しの地味なヤツに換えて、RONINをSU-RONIN(素浪人)にしたいです。

 


 

RONIN実射編

 

コルトのレイルガンと。2009年に遅ればせながら登場したレイル付きの1911だ。コルトのマークと特価に釣られて買ったが、RONINに比べるとあちこちが空き空きで詰めが甘い。スプリングフィールドの製品では、“OPERATOR”モデルがレイル仕様だ


 では撃とう。

 弾は、フェデラルのFMJ(230gr)でいく。コロナ前に買った100発入りのお徳用パックだ。こーゆーのが出回るくらいに早くマーケットが回復して欲しいところ。

 

 硬めが安心感のマグキャッチボタンを押してマガジンを取り出す。マガジンの弾込めはスムーズだ。8発が無理なく入る。スライドをガションと引けば準備完了。

 

 そして、発射!

 相変わらず豪快で力強く、それでいてトゲの無い野太いリコイルだ。野球で言えば、ただもうホームランバッターの逞しさ。アメリカ人が好むのも分かるような気がする。

 

火を噴くRONIN。スリムなグリップが非常に握りやすく、サイトもビビットでよーく見える。トリガーの切れも上々

 

 続けてドンドン撃つ。 
 空撃ちでは気にならなかったが、トリガーに僅かな遊びを感じた。実弾の緊張感で神経過敏になったか。個人的に、フェイスがもう少しストレートのほうが指に合いそう。

 

 また、ファイバーオプティックのサイトは作りにやや華奢な部分を感じる一方、このビビッドな輝きは老眼が進む筆者にとって狙いやすいことこの上ない。やっぱり、替えないほうが無難か。

 

空ケースが宙を舞う。オールスティールの重い作りでエクセレントなコントロール。ハッキリ言って撃ちやすい。写真はリコイルの途中だ。最終的にはもうチョイ跳ね上がる


 さらにドンドン撃ち進んでも調子は全く崩れない。前章で述べた全体としてのまとまり、しっくり馴染んだ一体感を射撃中も強く感じた。コイツは行けそうだ。

 

 50発チョイ撃って、もう十分と実射終了。ジャムはその兆しすらなかった。

 

7ヤードからの両手スタンディング3発の結果。やや左に寄りつつも2cmのグルーピング。腕が良ければワンホールだろう


 精度のほうも、7ヤードのスタンディング両手撃ちの3発が2センチのグルーピングなら悪くないだろう。ちゃんと動いてサイトも見やすく、トリガープルも適度でしっかり当たる…良き相棒銃の条件が揃い踏みである。


 ついでに、MEC-GARのマガジンにもつくづく感心した。滑らか且つ確かな作り。二流どころの代替えマガジン屋のイメージは、遥か昔の話のようだ。

 

簡易分解。もしやと思ったが、リコイルスプリングは極めてノーマルなもの。レイルガンのような二重ではなかった。各部のフィットは市販品の割にはタイトで、好感が持てる。データは、全長218mm、全高148.5mm、スライド幅23mm、フレーム幅19.3mm、グリップ幅28.9mm、バレル長128mm、バレル先端径14.8mm、装弾数8+1発、重量1082gといったところ

 

 

付属のMEC-GAR製マガジンを分解して驚いた。内部のバネがご覧のように変則な作り。研究されている。8連は信頼性の問題で敬遠する人も多いが、MEC-GARはアウターチューブ自体を延長しているので無理が無い

 

 しばし、大らかな45ACPの手応えを満喫した。浮世の憂さがちょっとだけ晴れた気がする。拳銃が様々に変化し進化しようとも、人それぞれが頼りにする心のベーシックがあろう。多くのガンナッツにとって、それは.45ACPの1911に違いない。


 9mm全盛の今も、.45ACPは全然健在。10連マガジン制限のある州ではなおさらだ。きっとこの先も、さらにファンを獲得しつつ、45の1911は生き続けることだろう。

 弾の高騰が落ち着いたら、RONINをもう少し撃ち込んでみたい。そしてチャンスがあれば、キンバーも一挺くらいは買ってみよう。

 

ラストは、古い古~いクリムゾントレースのレーザーグリップを装着。実はこの製品には、アンビセイフティ用の切り欠きがない。だから片側セイフティのRONINはバッチリ好都合。マガジンは、チップマコーミックの10連だ

 

Photo&Text:Gun Professionals サウスカロライナ支局

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2022年5月号に掲載されたものです

 

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