実銃

2024/06/22

クラシックなスタイルにモダンな要素を散りばめた正統派1911「SPRINGFIELD ARMORY 1911 RONIN5」【前編】

 

SPRINGFIELD ARMORY 1911 RONIN

 

 

 ブラックスライド+シルバーフレームは80年代1911カスタムのお約束。このレトロスタイルをベースに、新しい要素を随所に盛り込んだハイグレードなディフェンスモデル、それがRONINだ。ネオクラシックな魅力に満ち溢れた1911がここにある。

 

 


 

スプリングフィールド

 

 久しぶりに1911だ。コルトではなく、スプリングフィールドアーモリーの製品。名前が洒落ている。“RONIN”ときた。たまたまARMSLISTで中古が出ていた。写真を見るうちに欲しくなった。見れば見るほど、スイートなルッキングではないか。

 

 

 1911系のクローンに目が留まるなんて、珍しい心の動きだ。AMTとかの色物は別として、自分は正直、1911絡みはワザと流す傾向がある。基本、一通りは経験済みだし、できれば他の系統の銃を試したい気持ちのほうがいつも強い。

 

スプリングフィールドアーモリーのRONINだ。.45ACPの正統派1911クローンだ。今となってはレトロな白黒ツートンのボディに、最新のカスタムパーツがうるさくない程度に散りばめられている。そのほどほど感が魅力の一挺だ

 

 だから1911系は、自分でも呆れるほど所持数が少ない。普通の5インチはシリーズ70とレイルガンの2挺だけ。他は、コマンダー1挺にボウランドとウイルソンとクラークのカスタムが3挺、そしてデトニクスが1挺と.22コンバージョンを載せたコルト(シリーズ70 )が1挺。これだけである。リポーター20年選手としては少な過ぎだろう。

 旧Gun誌時代、そしてガンプロになってからも、自分は相当な回数、1911系のリポートは書いてきた。が、そのほとんどは借り物か預かり物だったという経緯もある。

 

スパッとフラットにカットした銃口に、左回り6条のライフリングがクッキリと浮く。クラウンは極々浅いすり鉢型で、処理がひたすらていねい。トラディショナルなバレルブッシングとリコイルプラグが嬉しい

 

 突き詰めてみると、カスタムは別として、ついついコルトのブランドにこだわっているのがいけないようだ。自分が1911に求めるのは、歴史だったりノスタルジーだったり伝説だったりのストーリーが主なのだろう。

 しかしそうなると、勢い懐が追い付かない。純正コルトの昨今の値上がりときたら尋常じゃない。だったら、いっそパラオーディナンスのLDA みたいな色物系に走っちゃうかという悪循環(“悪”は不適切か)だ。まあ自分の場合、色物好きは1911に限った話ではないんですけども。
 

マッチグレードのステンレス製バレル。先端部1cmあまりの範囲が僅かに太くなっている。ブッシングとのタイトフィットを狙った処理だ。それに合わせて、ブッシング側も内側の先端部を少しだけ盛り上げてある

 

 さて、珍しく1911クローンに心が傾いたついでに、改めて「コルト以外の1911ならどれが自分は好みか」について真剣に考えてみた。コレはなかなか悩み甲斐のある問題だろう。とは言いつつも、今の鉄砲業界なら自分は二社に絞り込める。スプリングフィールドアーモリーと、キンバーだ。

 

 決して、他社がダメと言ってるわけじゃない。S&WやRUGERはわざわざ1911じゃなくてもと避けてしまうし、SIGはデザインが独特で別物感がある。パラオーディナンスは多弾数&DAのイメージが強く、その他ウイルソンとかSTI(現スタカート)は超高級過ぎ、逆にロックリバーやトーラスは庶民向け過ぎてやや敬遠。そうやって消去法でいくと、スプリングフィールドか或いはキンバーに絞り込まれてくるのだ。

 

 じゃあ、この二社ならどっちを取るかの質問を、今回、友人知人の鉄砲仲間らにアンケートの形でぶつけてみた。総勢36名から回答を得て、結果はスプリングフィールドが24票、キンバ―が10票、保留2票で、スプリングフィールドが大勢を占めた。

 

付属品一式。コストを抑えるべく、プラスチックのケースではなくカードボードの箱に入れ、一応ナイロン製のソフトキャリングケースを付けた。マガジンが一個のみで予備がないのはかなり残念


 選択の理由は様々だが、印象に残ったお二方のご意見を紹介すると、先ずタニコバの小林さん。彼は中立派とのことで、「スタイルが洗練されていて角の部分が使いやすく面取りされており、しかもデザイン的にも美しい…数ある1911のなかで最も“機能美”に溢れている代表がキンバーだと思う。

 

 一方スプリングフィールドの1911はまるで“質実剛健”をデザイン化して1911の魅力を工業製品として追求し、次第にそれが洗練されてゆく所がとても魅力的。したがってこの両社は魅力の根源が異なるので、双方の優劣は縦には並ばないと思っています」とおっしゃる。さすが、デザイナーとしての造詣の深さが滲み出るお言葉の数々。

 

ウイルソンのスーパーグレイドと。スプリングフィールドの9mmモデルをベースにした、.38スーパーのカスタムだ。ご覧の個体はロブ・リーサムがマッチで使った実機、正真正銘のワークスマシンである。トリガープルが恐ろしく軽い

 

 そしてもう一人、ハワイで射撃ツアーをやっているキャプテン中井さんはスプリングフィールド推しとのことで、「ツアーで今まで2桁の1911系を使ってきましたが、やはりスプリングフィールド派です。判断は個人所有とビジネスユースとの差と言えるかも知れません。理由としては、


同じ仕様ならスプリングフィールドの方が安価。


COLTと並ぶ米国の造兵廠的としてのイメージと説得力。


スプリングフィールドの購入時のアクセサリー(ケースやホルスター
の付属等)は他社よりも豪華。


大体、1,000ドルレンジでもトリガー(プル)系の仕上げがしっかりしていて当たる(安価なモデルは分かりませんが…)。


2000年代にキンバーのフレームの強度不足が指摘されているのを聞き、以来、何となく敬遠した。


30年に渡り、レンジでスプリングフィールドを延べ5~6万発撃ったが致命的なトラブルは無かった。

 

 以上の6点です」

 う~ん、コレはもう説得力が有り過ぎて困るくらいだ。射撃ツアーという過酷な耐久テストを通しての重みのあるご意見。キンバーの影が薄くなっちゃっていけない。

 

 誤解なきよう付け加えると、キンバーだって良いガンだ。どこまでも華やか且つエレガントな外観は美しいの一言。MIM工法のパーツでコストを下げ、カスタムガバをお求めやすい価格で作って1911ワールドを飛躍的に発展させた功績は非常に大きい。それは絶対に忘れてはなるまい。

 

機関部。スライドはホットソルトブルー仕上げ。ステンレススライドとのコントラストが美しい。現時点で、同社のガンブルー仕上げはRONINのみだそうだ。サムセイフティとスライドストップとグリップセイフティとハンマーは、ビードブラステッドのつや消し仕上げとなっている

 

 でだ。自分はどっちなのかと言えば、スプリングフィールドに傾く。キンバーに比べてやや地味で、何処か実直な雰囲気が性に合う。それと、手元にあるウイルソンのスーパーグレイドもボウランドのアルティメイトスペースガンも、ベースがスプリングフィールドなのだ。

 

 80年代後半のマッチシーンにおいて、ロブ・リーサムがぶっちぎりで優勝を重ねていた頃の破竹の勢いのイメージが、強く脳裏に残っているのである。スプリングフィールドが1911スタイルの銃をリリースしたのは1985年だ。コルトが労使交渉のあおりで品質を著しく落としたその虚を突いて躍進。当時は他のコンテンダーもなく( キンバーが1911を作り出したのは95年)、独り勝ちの様相だった。

 

トップの様子。当然つや消しで、ひたすらノーマルな装い

 

 上記のアンケートに答えてくれた友人知人は自分と同じく50代以上が多く、世代的にスプリングフィールドに偏った可能性は高い。そういえば、昔からキンバーベースの本格的なレースガンはあまり見かけたことが無い。単なる気のせいだろうか。もしかして独特な安全メ(Swartsセイフティ。トリガーではなく、グリップセイフティに連動したファイアリングピンブロック)が影響しているのかも。

 

 ともあれ、お忙しい中、アンケートに答えてくださった皆さん、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
 

Photo&Text:Gun Professionals サウスカロライナ支局

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2022年5月号に掲載されたものです

 

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