2024/05/03
Netflix映画『シティーハンター』冴羽獠役 鈴木亮平 ガンアクション座談会 後編
テーマは“ガンアクション”
冴羽獠役の鈴木亮平と
関係者による濃厚トークセッション
伝説のコミックが日本初の実写化となり、いよいよ配信がスタートしたNetflix映画『シティーハンター』。主人公・冴羽獠を演じるのが、原作をこよなく愛し、いま映画界で燦然と輝いている俳優・鈴木亮平だ。とりわけ「ガンアクション」は見どころのひとつで、彼を中心に国内の第一人者たちが集まり、並々ならぬ情熱が注がれているという。このたび、そんな彼らによる濃厚なトークセッションが実現した。
この後編ではプロップガンにまつわる話や、ハイライトのひとつ「40人戦」について語られているので、お楽しみいただきたい。
座談会参加者4人のプロフィール
※写真左から
タナカ広報担当N
トイガンメーカー・タナカの社員。同社は主人公の愛銃であるパイソンなど、本作に登場する銃を多数提供している
納富貴久男
「BIG SHOT」代表。日本の映像作品に登場するプロップガンの製作およびガンエフェクトにおいて、第一人者として知られる
鈴木亮平
俳優。Netflix映画『シティーハンター』主人公・冴羽獠役
武藤竜馬
元陸上自衛官のタクティカルインストラクター/ガンアクションアドバイザー。ガンアクションの演技指導担当。X(@scarprecision)
映画とブランクガン
納富:実写版の『シティーハンター』といえば、フランス映画の『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』(2018年)で使われているコルトパイソン、実銃ではないのはご存知でしたか? 映像を見て違和感を覚え、アメリカの友達に確認してみたら「Umarex(ウマレックス:実銃やトイガンなどの販売・製造を手掛けるドイツの企業。傘下にワルサーを持つ)の空砲銃(blank gun:ブランクガン)のようだ」と。これは実銃とは別カテゴリーの空砲(blank)を用いる銃で、パイソンを模した空砲銃も存在しますが、大きさやライフリングの形状などが微妙に違う。
鈴木:気づかなかった。さすがですね!
納富:実銃のパイソンは意外と貴重で、いわゆるコレクターズアイテムだから映画用に貸してくれることはないでしょうし、新品を用意するにも高価です。入手しやすいベレッタ92などはおそらく実銃ベースのブランクガン(以降は映画撮影用のプロップガンを指す)だと思いますが。
N:実銃のパイソンは数千ドルの値が付くこともありますよね。コルトは近年パイソンをリニューアルして発売しましたが、旧来のパイソンとは材質や製造法も異なります。映画用のブランクガンに改修することは実銃としての機能をつぶすことになるので、そのためにヴィンテージものの実銃パイソンを使うのはもったいない、ということですね。
納富:撮影用の空砲は軍用の空砲とは異なり、火(マズルブラスト)を出すために火薬を使ったりします。日本の銃刀法を考慮すると(拳銃のプロップガンは)プラスチック製に限られるうえ、銃口に詰め物を入れて弾が飛ばないようにしなければなりません。アメリカの映画業界でも銃にまつわる法律は厳しくなってきていて、たとえばハリウッドとニューヨークでも法律が全然違うのですが、ずいぶん前からニューヨークでは撮影用の空砲銃は弾を飛ばせないように穴が小さくなっています。事故(※注)が起きて以来、厳しくなってきていまして。
N:最近のアメリカ映画に登場する銃器にも、トイガンが見られるようになってきましたね。また、CGで光などのエフェクト(視覚効果)を追加するやり方も増えたと思います。CGとモデルガンの発火とでは光の具合、「バーン!」って広がり方が違いますよね。ハリウッドでも発砲が厳しくなってくるなか、日本映画ではちゃんとモデルガンを使って発火させている。これは貴重なことだし、いい話なのかな、と思います。
鈴木:日本の場合はトイガンがあり、海外のブランクガンは実銃をつぶして作るものもあると。やはり日本のモノ作り、モデルガン作りにおいて、海外製品と比べて進んでいるところなどはあるのですか?
武藤:トイガンのジャンルでは、たとえば台湾でもエアソフトガンの製造が盛んですが、モデルガンに関しては日本が断トツではないでしょうか。
N:モデルガンは日本で独自に進化してきたもので、基本的には「銃の模型」として存在します。発火モデルなら火薬を使って発砲させることができ、火が出て音が鳴ることを楽しむものですよね。実銃を所持できる国では必要性がありませんが、日本では実銃が入手できないからモデルガンが進化し、このように映画などでも使われています。
鈴木:逆にモデルガンを使うほうがリアルになっていることもある、と。ガラパゴス的な進化を遂げているのも、日本らしいですね。
※注記:2021年10月22日、アメリカで映画撮影中に俳優が小道具として使用された実銃を発砲したところ、撮影監督と監督が死傷するという事故が起きた。
ハイライトのひとつ「40人戦」の裏話
武藤:「40人戦」のシーンでは、主人公の冴羽獠だけでなく敵の警備隊の40人もリアルさを追求したマガジンチェンジをやっています。
鈴木:撃ったあとにやっていましたね!
武藤:ちなみに、マガジンチェンジがアップになったシーンでは、僕が警備隊員役で出ていました。どうしても技術が必要な動きで。
鈴木:どおりでスムーズだったわけだ。隊員たちのタクティカルな動きとかも?
武藤:アクション監督の谷本さんと相談し、警備隊のチームコンバットの動きを再現しました。だから「敵もプロ」だというところをアピールしたいですね。
鈴木:敵が弱そうだと、獠の強さが際立たないですからね。あと、現場で「鈴木、面倒くさいな」と思ったところとかありますか。
(一同笑)
武藤:印象的だったのはリロードなどのアクション指導の際、僕の中では「毎回(鈴木さんに)課題を出されている」ような思いでしたね。MP5のマガジンチェンジで「こういうのはどうですか」と提案したところ、鈴木さんには「いや、もっとこう」と上を求められて。
鈴木:「それ普通ですね」とか「他の映画で見たことあります、その動き」とか。
納富:意見は言うけどできない人もいるなか、鈴木さんはいろいろな動きをやってのけている。
鈴木:できるまでしつこく練習します(笑)。僕の中でこだわったのは「見たことのない動き」をするということ。そのためには、「崩れる」ことが大事で。たとえば投げたマガジンを受け取るときも、一番取りやすい場所で綺麗にキャッチするのだと「見たことのある動き」になっちゃう。だから、予想外に上に投げられたマガジンをジャンプして取り、少し崩れた体勢でマガジンチェンジしてそのまま行く、とか。また、二挺拳銃になるシーンで、投げてもらったベレッタ92を、変な感じでつかんじゃって、クルッと回転させながらもう一丁のグリップエンドでスライドを引く…とか。あ、でもそのとき、ベレッタのリアサイトをバキッと壊しちゃった記憶もあります。
納富:ベースガンがプラスチックのトイガンなので、どうしても壊れちゃう。そこが日本の撮影現場の弱いところですね。実は、鈴木さんのパイソンだけで発火できるものを5挺くらい用意してありました。
鈴木:僕も自前のパイソンを持参していたから、6挺は現場にあったわけですね。
納富:5挺とも、すべてブルーイング(酸化被膜処理の一種。スチール製の銃の防錆目的)職人の方たちに依頼して色味をそろえています。
コルトパイソンの“ブルー”
鈴木:タナカさんからブルーイングバージョンは出さないのですか?
N:製品化するのであれば、メッキできれいなのを出したいです。
武藤:ブルーイングは意外と手間暇がかかるし職人の技術が必要です。このプロップガンも何気なくブルーになっていますけど、ブルーイングをプロに依頼したら結構な金額になってしまう。
鈴木:僕のパイソンはメッキ仕上げですが、タナカさんのメッキ、大好きなんですよ。鈍い光り方で。
N:メッキはプラスチックに対して金属の被膜を付けているので、この輝き方は金属のものなのです。塗装では絶対に再現できません。良い時代のコルトは「ロイヤルブルー」「コルトブルー」と呼ばれる、黒と青の中間の独特な色ですね。今のコルトではもうやっていない。
納富:ヴィンテージのパイソンは「青い」というイメージがあって、かつてイブ・モンタンが主演で題名に「パイソン」が入るフランス映画がありまして。すごい渋い映画で、冒頭にダーン!とパイソンが出てくる。その青さが印象に残っています。
鈴木:マニアックな映画ですね。
納富:原題は『Police Python 357』で邦題が『真夜中の刑事 PYTHON357』。この映画は我々世代というか、たとえば松田優作が『最も危険な遊戯』(1978年)などを村川透監督たちと撮っていた時代の作品です。村川さんはこの映画を相当意識していましたね。
武藤:僕も納富さんに教えていただいて『真夜中の刑事 PYTHON357』を見ましたが、劇中では当時最新のタクティカルテクニックを使っていましたね。ジャケットからドロウする際も、体を動かさずに抜くとか。拳銃を撃つ際も、現代のような両手保持ではなく、銃を持つほうの前腕の下をもう一方の手で押さえるようなやり方でした。
納富:警察監修がついていたのでしょうね。
武藤:トレーニングシーンに多かったので、たぶん警察出身の方か現役の方がトレーニング方法を教えて、それを映像化していたのかと。リアルでした。
ウィーバースタンス
鈴木:構え方もいろいろありますよね。膝を曲げたスタンスとか、体は正面のまま銃口と顔を標的に向けるようなスタンスも習いましたね。
武藤:ウィーバースタンスとか。一応参考のために。
鈴木:獠は基本片手撃ちですけどね。
納富:ウィーバースタンスはハリウッド(映画)なんかでもよく見るけど、役者さんが好むのかな?
鈴木:やはり見映えはしますよね。
武藤:タクティカルな視点で言うと、チームコンバットの時は正面を向くほうがよいです。後続のチームは前の人が何をしようとしているのかを見抜きやすいし、自分の正面を広くカバーできる。その代わり、体が正面を向いているから被弾面積は広い。そう考えると、個人ではウィーバースタンスが結構有効で、アクション映画の主人公は1人のことが多いから、自然とウィーバーになるのではないかと。
納富:それに、フレームに映る視点でみると、ちゃんと顔も見えて格好いいですよね。
鈴木:顔の正面に銃がくる構え(アイソセレススタンスなど)だと、見映え的にあんまり格好よくないんですよね。だいたいなんでも斜になったほうが格好いいんですよ、人間って。
(一同笑)
納富:実際にサイトで狙うと、顔を映したいときに正面から撮れず、横からカメラを入れるしかないですからね。
鈴木:『シティーハンター』はコメディだからこそアクションシーンは絶対に軽くしちゃダメだと僕は思っていて、アクションシーンが本格的であればあるほどコメディも立つし、逆もしかりです。こんなにガンアクションにこだわっている作品は、最近でもそうそうないんじゃないかと感じています。
Netflix映画『シティーハンター』
クールでもっこりな“あの男”が新宿に舞い降りる―。
「シティーハンター」はじまりの物語。
息もつかせぬ濃密なガンアクションに注目
1985年に連載がスタートした北条司の大人気コミック「シティーハンター」。単行本は累計5,000万部を突破しアニメ、ドラマ、映画化もなされ今に至るまで世界中の人々に愛され続けている一大エンターテインメント作品だ。そしてこの令和に、佐藤祐市監督のもと日本初の実写映画化がついに実現したのである。主人公・冴羽獠役の鈴木亮平は、「シティーハンター」に対する溢れんばかりの作品愛を持ち、裏社会のトラブル処理を請け負う超一流のスイーパー(始末屋)でありながら、美女にはとことんだらしがないという獠の二面性を魅力たっぷりに熱演。ガンアクションに対する大変なこだわりは前ページの座談会でも明らかで、ガンエフェクトはBIGSHOTが手掛け、主人公のコルトパイソンをはじめとする銃器はタナカが、ESSのアイウェアをノーベルアームズが提供するなど、ガンアクションにまつわる様々なこだわり要素が劇中の随所にちりばめられていることにも注目いただきたい。
STORY
相棒の槇村秀幸と共に、有名コスプレイヤーくるみの捜索依頼を請け負った“シティーハンター”こと冴羽獠。その頃新宿では謎の暴力事件が多発し、警視庁の敏腕刑事 野上冴子は手を焼いていた。息の合ったコンビネーションでくるみを追う獠と槇村だったが、捜査の最中、槇村が突然の事件に巻き込まれ死亡。現場に居合わせた妹・槇村香は兄の死の真相を調べてほしいと獠に懇願する。
DATA
■キャスト:鈴木亮平、森田望智、安藤政信、華村あすか / 木村文乃
■監督:佐藤祐市
■脚本:三嶋龍朗
■エグゼクティブ・プロデューサー:髙橋信一(Netflix)
■プロデューサー:三瓶慶介、押田興将
■制作:ホリプロ
■製作:Netflix
■原作:北条司「シティーハンター」/原作協力:コアミックス
Netflixにて独占配信中
Netflix映画『シティーハンター』配信開始記念
鈴木亮平さんサイン入り
タナカ「COLT PYTHON “RYO SAEBA” Model」
プレゼント(1名様)
提供:タナカ
応募方法はこちら
タナカ「COLT PYTHON “RYO SAEBA” Model」紹介記事はこちら
協力:BIG SHOT/Netflix/Scarprecision/TANAKA WORKS/ホリプロ/マンハッタンピープル
©北条司/コアミックス 1985
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