2024/05/12
【実銃】口径・サイズが似通ったコンシールドキャリーを実射比較!【後編】
DETONICS
COMBAT MASTER Mk VI
feat. Springfield Armory V10 Ultra Compact
1970年代、コンシールドキャリーガンといえばスナブノーズドリボルバーという時代に、画期的な大口径サブコンパクト1911が産声を上げた。
デトニクス コンバットマスター。3.5インチブッシングレスコーンドバレル、マルチスプリングリコイルシステム、さらにはステンレススティールフレーム/スライドという現代ではスタンダードな仕様を、世界で初めて採用した先進のサブコンパクトピストルだ。
実射
今回の実射では、まず15ヤードからシューティングスタンドを使っての5発精度テスト、そして興味深い3.5インチバレル1911同士の撃ち心地テスト、さらにはコンバットマスターによるコンクリートブロックとガロンボトルの威力テストをしてみた。
まずは二人で双方を数マガジンずつ撃ってみる。7ヤードからシルエットターゲットのボディ2発、ヘッド1発を繰り返す。この距離だと外す気もしないが、V10の方がほんの少しフロントサイトの戻りが速く、1秒以内ではあるがより早く撃てるというのがわかる。
ここでの大きな違いは、ビーバーテールグリップセイフティを備えたV10のハイグリップに対応した掌の収まりの良さである。グリップそのものもコンバットマスターと比べると10mm以上長く厚みもあるので、握りしめた際の安定感に優れている。
コンバットマスターの方は右手の小指が完全にはみ出てしまうので、リコイル時のグリップに不安が残ってしまう。.45口径のリコイルに対して、何だか心許ないのだ。マズルライズそのものは体感的にはそれほど大きな違いはなく、コンバットマスターの方が健闘している感がある。
面食らってしまうのは、V10の発射音のでかさと、盛大に上方に噴き出す発射ガス/炎だ。コンペンセイターとは違い、ポートからの発射ガスはまだ燃焼中の爆発ガスであり、ライフリングに直接穴をあけるという構造上、火薬カスだけでなく削り取られた弾頭のクズなどが盛大に噴き上げてくる。腰だめで撃つ可能性もあるキャリーガンとしては、むしろシューターにとって危険ともいえる。
暗い場所で撃った場合も、上方に吹き上がる発射炎は盛大で、瞬間的に目が眩んでしまう傾向がある。コンバットマスターにしても暗がりで撃つと、毎回といっていいほど盛大なファイアボールがマズル前に繰り広げられることになるが、見えている範囲がV10より小さいので眩しいほどではない。これはバレルの短いセミオートの宿命ともいえる現象ではある。
15ヤードからの精度テストでは、コンバットマスターがFederal 230gr HSTで1.25インチ、V10の方がPMC 230gr FMJで1.75インチと、それぞれ悪くない精度を叩き出している。サイトピクチャーはV10の方がリアサイトのノッチが狭く、フロントサイトも見やすく好感が持てる。
コンバットマスターはフロントサイトが分厚く低いので、リアサイトのノッチも幅広で、いわゆるシャープなサイトピクチャーとはいい難い。
両モデルの撃ち心地に関しては、写真を見てもらうとわかるが、確かにV10の方が10~20%はリコイルが抑え込まれており、結果としてより早く精確に着弾させることができる。ただし前述したようにその発射音とマズルにおけるファイアボールは盛大で、コンシールドキャリーのセルフディフェンスガンという用途からすると、やはりコンバットマスターに軍配が上がりそうだ。
このテスト中に双方ともに1回ずつ、Prime社の230gr JHPでマルファンクションが出た。どちらも装填不良で、カートリッジがチェンバーに入りきらずストップしてしまうという現象だった。マガジンを抜いてスライドを少し前後してやればクリアはできたが、あまり喜ばしい状況ではない。コンバットマスターの方はしばらくリコイルスプリングを交換していないので、それが原因のようだ。
V10に関しては、最後にポート部分にターゲットを載せて撃ってみたが、これが盛大な穴が開き、周りに黒い何かのカスがあちこちにこびりつくという嬉しくない結果だった。.45ACPの10連発1911というデザインコンセプトは共感できるので、願わくはポート無しのモデルをチョイスしたいところだ。
次に、コンバットマスターでコンクリートブロックを10ヤードから撃ってみた。使用弾はFed 230gr HSTで、3.5インチバレルだと、その銃口初速は750~800fpsであり、5インチフルサイズと比べると100fpsほど遅くなっている。それでもアメリカンメイドの堅牢なブロックの一辺に大きな穴をブチ開けてくれた。
同じブロックに対し、グロック19を使いFed 147gr HST JHPで撃ってみたが、5mmほどのクレーターを作ったのみで貫通には至らなかった経験がある。さすがは.45ACP口径である。
さらに同じコンバットマスターで、これも同じ10ヤードから2本の1ガロンジャグを撃ってみた。そのぶっ飛ばしぶりは写真を見ていただきたいが、さすがは.45口径、中身をぶちまけながら、二つのジャグを40cm以上は蹴っ飛ばしていた。納得のパワーといえるだろう。トリガープルは5ポンド(約2.3kg)ほどで、キャリーガンとしてはまずは妥当だろう。
この優れたキャラクターを持つコンバットマスター、果たして現代にも通用するかといわれれば、その答えは否だろう。
.45ACPのストッピングパワーは魅力的だが、9mm147gr弾頭の性能向上が著しい昨今においては、6+1発の装弾数やそのオールスティールが故の重量、短すぎるグリップなど、マイナスポイントが目立ってくる。しかし、我々のようなおっさんにとっては、そのセンチメンタルバリューは最高で、もし千ドル以下の価格で売りに出ていたとしたら、これは万難を排して買いに行ってしまう魅力を持つ存在なのは間違いない。
Photo&Text:Hiro Soga
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2022年5月号に掲載されたものです
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