実銃

2024/01/27

【実銃】ルガーが誇る超ロングセラーライフル「Ruger 10/22」【前編】

 

 RUGER 10/22 

 


 RUGERが誇る、超ロングセラーの.22オートライフル10/22の登場は1964年、それ以降、稀代のプリンカーはベストセラーであり続けている。これは10/22のタクティカルモデルで、ルガーの純正カスタムだ。

 ちょっとワクワク感が漂うアグレッシブデザインだが、不満な部分もある。しかし、この57年間に登場したカスタムパーツは膨大で、好きな形に作り替えるのも簡単。究極のお遊び銃、それが10/22なのだ。
 

 

ブラックパンサー

 

RUGERの10/22だ。.22口径のセミオートライフルだ。コイツはTACTICALモデルというバージョン。口径は非力ながらも、折りたたみストックと立派なスコープまで載った勇姿は、男心を大いにくすぐってくれる


 RUGERの10/22と言えば、MGCがその昔に出したブラックパンサーを思い出す方がきっと多いだろう。細身のボディーに樹脂製フォールディングストックを装備し、当時としては大容量の400連マガジンを誇ったガスオートのカービンだ。

 

機関部の様子。何やらメカメカしく、一端のスナイパーライフルの雰囲気


 MGCはそのブラックパンサーを皮切りに、木製ストック仕様のスポーター、サイクロンバレル付きのスペリオールSSSそしてH-BARと、矢継ぎ早にバリエーションを展開。同社の名作ベレッタM93Rのメカを発展させた“固定インナーバレル&可動チェンバー”システムが調子よく、電動ガン登場前夜のサバゲシーンにおいて引っ張りダコの存在だったと伝え聞く。


 伝え聞くと書いたのは、実は自分はブラックパンサーには全く縁がなかったのだ。発売開始が1987年の12月。その一ヵ月前に渡米していたからである。

 

バレル先端にフラッシュハイダーを装備。えらくカッコ良い。TACTICALモデルの特徴の一つだ。ライフリングは6条右回り、ツイストは1:16インチだ


 なので、10/22のイメージと聞かれると、いきなり実銃の話となる。カリフォルニア在住時代に、EATONというアフターマーケットの樹脂製ホールディングストックでドレスアップした一挺を知人から預かり、たまに撃って遊んでいた。やたらと調子が良く、感心した記憶がある。


 今回、自前の10/22をようやく手に入れた。今回と言っても、もう二年くらい前の話。ARMSLIST経由で、.308および.223の弾との物々交換でゲットだ。で、ゲットしたはいいが、バタバタ忙しくて撃つチャンスがないままずっとお蔵入りにしていた。

 

銀色に光るエジェクションポート。エキストラクターはピボット式だ。レバーの形状はM1カービンに似ている

 

 記事用のネタとしても、.22口径はメインで扱うにはやや役不足。他の何かとの合わせ技、例えばピストルタイプの22CHARGERもしくは二分割が可能な10/22 TAKEDOWNモデルでも手に入れたらとウジウジやってるうちに、2021年5月号で矢野さんに先を越されちゃったんだよね。


 斯くなる上はと、どマイナーのコーナーに出すつもりで準備してたのが、ネタ不足その他の都合で堂々のメイン記事投入と相成った。しばしお付き合い願いたい。

 

トリガーには緩いグルーブが付く。プルは2kgほどだ。クロスボルトのセイフティは右サイドへ押してオン。ボルトキャッチとマガジンリリースレバーは、どちらもいまいち使いづらい

 

10/22


 アメリカでは、.22口径の銃がよく売れている。非力で扱いやすく、また弾代も安いことから、初心者向けの入門銃として親が子供へ買い与えたり、山歩きのバックパッカー銃、あるいは車のトランクに常備する護身銃等々として、広くポピュラーな存在だ。

 

スコープはBSA製の3-9×32倍。前の持ち主が付けたもの。安物だけど十分狙える。マウントベースはWeaverと22 Tip-offがコンビとなっていてとても便利


 そんな中にあって、1964年に登場したRUGERの10/22は、当初から特出して人気が高い。なぜかと言えば、10/22には注目すべき特徴が幾つもあるからだ。

 先ず一つ目は、ロータリーマガジンだ。リムファイアの弾は、リム部がお互いに干渉するからマガジンの設計が割と難しい。その困難を、ロータリーという離れ業で乗り越えている。10連のマガジンは銃本体に完全に隠れるコンパクトさ。調子も良く、他メーカーのボックス式マガジンに比べて一歩も二歩も抜きん出ている。

 

フレームの後端にスリング用のスウィベルスタッドを設置。その奥に見える円形のパーツは折り畳みストックの開閉ボタンだ


 そして、バレルのレシーバーへの接合もユニークだ。従来のバレルにねじを切る方式ではなく、バレル下部の切り込みへバレルリテイナーVブロックなるくさびのようなものを当てがい、二本のねじでレシーバーへ留める方法を編み出した。コレによって生産性が飛躍的に上がり、バレル交換を含めたカスタムが個人でも容易に行なえるようになった。

 

ストックはATI製(RUGERのロゴ入り)。6段階に伸縮し、左サイドへ折り畳みが可能。チークパッドも調整可能だ


 さらに三つ目。シンプルなブローバックでありながら、次弾の装填を安定させるための減速メカまで持つ。ブローバックで後退したボルトがボルトストップに当たると、後端が僅かに下がるよう設計されている。

 この変化で、サイクルを減速させるのだ(breechblock decelerator)。減速した分、マガジンのテンションも柔らかく設定できたとされる。実際、フォロワーの動きは至って軽く、装填はとても楽だ。

 以上の3点。優秀である。

 

ストック先端にはしっかりレイルが付く。下部の1本は4インチ、左右は2インチだ。トップ部にも追加で設置が可能

 

 RUGERは、1949年の22ピストル、1953年のシングルシックスと、22プリンカー・ファンの心をワシ掴みにしてきた下地があった。そこへ投入されたのが10/22だったのだ。“22口径ならRUGERにお任せ”みたいな流れがすでに出来上がっていたわけである。


 誕生からもうすぐ60年。その間、2007年のチャージャーやら2012年のテイクダウンやらと積極的な展開を見せつつ、ひたすら売れ続けている。10/22は恐ろしい化け物ロングセラーなのだ。

 

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Photo&Text:Gun Professionals サウスカロライナ支局

 

 この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2022年1月号に掲載されたものです

 

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