実銃

2024/01/03

【実銃】AKをベースに生まれたロシアンショットガン「SAIGA-12」【Part1】

 

SAIGA-12 Custom

 

 

 カラシニコフライフルをベースにしたセミオートマチックショットガンSAIGA は、AR 系ショットガンより大幅にスリムで軽量という魅力がある。確実な作動を実現させるには、手を加える必要があるが、それに成功すれば最高のパフォーマンスを発揮する。SAIGA は高いポテンシャルを秘めているのだ。

 

 

SAIGAコンバージョン

 

AKを基に開発されたセミオートショットガンSAIGA-12。今回のモデルは1989年に施行された海外製アサルトウエポン輸入規制のため、ハンティング用ストックを備えたスポーティングショットガンとしてアメリカに輸入されたものだ。しかし、18U.S.C.922r(1990年に制定)規制に従って特定数以上のアメリカ製部品と交換すれば、法的にアメリカ国内製造ショットガン扱いとなる。そこで所有者の友人が2014年のロシア製銃器輸入禁止措置の前に入手し、MAGPULのパーツを含めた国内製パーツを組み込み、さらに大型マズルブレイクを装着して、この形状のSAIGA-12カスタムとして完成させた

 

SAIGA-12(カスタムモデル)
口 径:12ゲージ

  • 全 長:950mm  
  • 銃身長:457mm
  • 全 高:230mm (5連マガジン装着時)
  • 重 量:4,077g
  • マガジン装弾数:5/10発 MAK-90口 径:7.62mm×39
  • 全 長:869mm  
  • 銃身長:415mm
  • 全 高:180mm (5連マガジン装着時)
  • 重 量:3,321g
  • マガジン装弾数5:30発

 

AKシリーズ本来の口径である7.62mm×39のスポーターモデルとの比較。これは中国がコピーしたType 56のセミオート版であるノリンコのMAK-90だ。モデル名はModified AK-1990の略で89年輸入規制後、バヨネットラグを廃しサムホールストックを装着しスポーターとして手直しされた規制対策品で、1994年まで輸入された(これは94年製)。当時は200ドル以下で販売されていた安価なAKコピーだったが、今や相場1,600から2,000ドル近いから驚きだ‥。規定数のアメリカ製パーツを組み込む事で922rコンプライアントとなり、ピストルグリップを合法的に装着できるようになった


 世界中で使用され続けるAKシリーズは第2次世界大戦の終戦直後にソビエトで開発され、当時欧米のNATO諸国に対抗するためにソビエトブロックに誕生したワルシャワ条約機構の加盟国を中心にその採用が広がった。その後、AKは第三世界にも広く普及していく。

 

 

SAIGA-12のレシーバーの生産法はAKMのそれを継承したシートメタルをプレス加工したものだ。バレル基部を支える大型金属ブロックのトラニオンをリベット等で固定する方式で、伝統的なAKそのものだが3インチ装弾まで対応する強度がある。これはラスベガスにあるアーセナル社が販売したものだが、現在同社はショットガンは取り扱わず、国内製造のAK系ライフルを展開中だ。
2005年までEAA(ヨーロピアンアメリカンアーモリーコープ)が輸入し、この当時の説明書によると12ゲージモデルの仕上げはブルーとカモ、バレル長は19/24/26/28インチが選べた


 その多くはソビエト製や正規のライセンス製造品ではなく、コピー製品で占められた。構造がシンプルで製造に近代設備は要らないため、中東地域では現在も村の作業場レベルのような場所でも量産され続けている。1949年の量産開始以来、コピーを含めた世界各地の派生モデルの総生産数を正確に調べる術はないだろう。


 その数は1億挺以上とも推測されており、アサルトライフルの生産数ではダントツなことは間違いない。世界のアサルトライフル開発史の中でも特に象徴的な存在であり、現在のアメリカでも高い人気を誇る。

 

本家AK-47のレシーバーも切削加工からプレス加工のスタンプドレシーバーへと改良されたAKMに移行、同様にこのMAK-90もプレス加工品だが、通常1mm厚のところ1.6mmと僅かに分厚く剛性がやや高い。ブルー仕上げで切削加工レシーバー版も存在した

 

AK伝統の右側面のセイフティレバーを持ち上げるとセイフティが入り同時にレシーバーの穴を塞ぎダストカバーとしての役目を果たす。この状態でボルトはレバーにぶつかりコックできない

 

本来SAIGA-12には取り付けできないAK用ハンドガードを固定するため、ガンスミスがカスタム加工を施しネジを追加したが、そのまま撃たずに保管し続けていた。しかし、取り付け方法に問題がある事が今回の実射で発覚した


 冷戦の緊張が緩み始めた80年代から、AKを土台にセミオート化したスポーターモデルがアメリカに輸入され始めた。冷戦終結後の自由化の波に押され、本家ロシアの製造元であるイズマッシュ(Izhmash)も、輸出向けスポーツ版AKであるSAIGA(サイガ)を輸出し始めた。


 ところが1989年のアサルトライフル輸入規制により、多くのミリタリーモデルがモデル名を変更し、サムホールストックを装着するなど軍用銃のスタイルから遠ざける変更を余儀なくされた。

 

所有者の好みでマグプルのAK47/74用ZHUKOVハンドガードを装着。3/6/9時方向にピカティニーレイルセクションを取り付けるためのM-LOKを有する

 

ロングストロークガスピストンによる作動方式を持つMAK-90。
導入するガス量を調整するような機能はない単純設計で、ガスポートの大きさを必要サイズよりやや大きめに設定する事で、高めのガス圧での作動安定性を引き上げ、必要ない分のガスはシリンダーの小孔から排出する。AKの伝統的な設計だ

 

 SAIGAも例外ではなく、一般的なハンティングライフルのようなストックを装着し、トリガーの位置も後方に移動、大きくその姿を変える事で世界各国への輸出を容易にした。日本にもこの時期、数多くが輸入されている。

 

 その一方で、ミリタリーモデルを望むファンの気分は盛り上がらなかった。完全なロシア製をオリジナルスタイルで所持したいと望んでいたからだ。SAIGAというネーミング自体も、ロシアを含む寒帯に住むウシ科の草食動物のサイガアンテロープから採られたもので、あえてAKを名乗らず狩猟用を印象付けて軍用銃のイメージから遠ざける目的があった。

 

ハンドガードに合わせて同じくMAGPULのMOE AKストックとMOEピストルグリップを装着。タクティカルなスタイルを得られると同時に、これらもアメリカ製のため922r対応品扱いとなる

 

ノリンコの木製ストックとアメリカ国内製造のポリマー製グリップを装着している。ストックの材質や仕上げはあまり良いとは言えず、いずれ交換予定


 このころ、イズマッシュが取り組んだのがAKのショットガン化だった。AKの基本構造を継承しつつ、ボックスマガジンから.410、20ゲージ、12ゲージを発射可能とした。ショットガンにする事で狩猟用として汎用性がさらに高くなり、市場の間口も広がり輸出も伸び大いに売れている。


 ただアメリカでも原型に近い姿に戻す術は残されていた。規定数以上のアメリカ製パーツに交換する事で、輸入銃からアメリカ国内製造銃へと法的な位置づけが変わる。これを狙ったのが、922rコンバージョンだ。2004年9月にクリントン政権が10年続けていたアサルトウエポン規制が解除され、11発以上のハイキャパシティマガジンも含めて自由な状態に回帰したため、国内製なら原型のスタイルを取り戻せるのだ。

 

ロシア製のコブラレッドダットサイト。ロシア版C-Moreサイトといったところで箱に記してある4種類の表示に切り替え可能

 

レシーバー左側面のサイドレイルマウントに直接取り付けできる


 今回ご紹介するSAIGA-12はコンバージョン化を経てオリジナルのAKスタイルを取り戻したカスタムモデルである。このSAIGAコンバージョンにより一部アメリカ製部品ではあるが念願だった本家イズマッシュのロシア製AKを所持できる事から国内のAKファンの間ではブームとなっている。

 

レイルに沿ってスライドさせてから下のロックレバーを約180°回転させて固定する

 

 

装着した状態。スコープ取り付け位置として最適なレシーバー上部は、AKの場合レシーバーカバーが薄手のプレス製で結構ガタがある。そのためレシーバー側面から伸びるサイドマウントが考案された

 

 

スコープはオフセットではなくレシーバーの中心に位置する設計だ。C-MOREのような円型レンズで視野も広い。サイト調整は付属ツールで行ない、右側面のレバーでレティクルの表示を切り替える

 

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Photo&Text:Gun Professionals LA支局

 

 この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年10月号に掲載されたものです

 

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