実銃

2023/12/09

【実銃】「S&W Model 66」新旧モデル比較!外装から内部構造に至るまでの差異を見る【中編】

 

NEW vs OLD

 

Smith & Wesson
Model 66 Combat Magnum

 

 

 モデル66が初めてリリースされたのは、もはや半世紀前の1970年のことであった。インスタントヒットとなったモデル66であったが、時代の流れとともにその存在感は薄れていき、2005年にはS&Wカタログからも消滅してしまった。

 それでも、2014年には4.25インチバレル、2017年には2.75インチバレルのモデル66-8がリイントロデュースされ現在に至っている。今回は、このNew モデル66-8を新たに手に入れた友人に登場を願い、新旧モデル66を比較してみた。

 

前編はこちら

 

 


 

 まずは、新旧モデル66を目の前において、その違いをリストしてみる。

 

モデル66-8 4.25”グリップはオリジナルより小型のHOGUE(ホーグ)社製に換装

 

HOGUEグリップは、オーナーの好みで下側のフィンガーグルーヴが削り取られた

 

おーっ、やっぱりこのリアサイトは狙いやすい

 

何やらバレルが長ーく見える4.25インチモデル。ラウンドバットなので、グリップが短い。オリジナルのグリップだとスクエアバットのように長いので、コンシールド性を重視するディーンはグリップを替えたのだ


1.バレルは2ピース構造となり、ステンレスバレルに別パーツのシュラウドがかぶせられている。フロントサイトはピン止めのレッドインサート入りだ。

 

モデル66-1 1980年製。新モデルのマット(ビードブラスト)仕上げと違い、きちんと表面がポリッシュされている。“ピンド&リセスド”と呼ばれるレアなバージョンだ


2.フォージングコーン(バレル最後端のブレットが飛び込む部分)は真円となり、旧モデルの下部がフラットで薄くなっていた(この部分にクラックが入りやすかった)のに比べ、.357マグナムのハイプレッシャーに耐えるようになった。

 

フォージングコーン(バレルに弾頭が飛び込む部分)が真円になり強度が上がっている

 

こちらはモデル66-1のフォージングコーン。シリンダーのガスチェック部分をクリアするため、下部がフラットにカットされている。この部分がハイプレッシャーの噴出ガスにより、ひびが入ってしまう


3.トリガーとハンマーはブラックオキサイド仕上げのMIM製で、ファイアリングピンはハンマーノーズからフレームマウントに変更。シアやメインスプリングストラップの設定も合理化されており、新旧モデルで互換性はない。

 

旧モデルは存在感溢れるラインによって構成されている。40年前にはクラフトマンシップが存在していた


4.エジェクターロッドシュラウド内にあったロッドを固定するプランジャーは廃止され、2.75インチバレルモデルではフレーム側に増設された突起にプランジャーが組まれ、この部分がぴったりとヨークの内側に食い込むことによってシリンダーが固定される。これによってシリンダーの固定が堅固でガタが出にくくなっただけでなく、エジェクターロッドがフルレングスになり、より確実な排莢が可能になった。

 4インチバレルの方は構造が違い、ヨーク前側に埋め込まれたボールディテントがシュラウド後部に食い込んで固定するようになった。

 

4.25inの方はこのヨーク前面にボールディテントが埋め込まれたロックシステムを採用

 

エジェクターロッドシュラウドの後端にあるくぼみにボールが落ち着くデザインだ。ボールがちゃんとはまり切っていない気がするのだが?


5.ヨーク基部(ガスリング)にシールドが設けられ、シリンダーギャップから噴出する発射ガスを横方向に誘導できるようになった。


6.“インターナル キイ ロック”は、いまだ健在。これを使用しているオーナーは見たことがないし不評だが、なくなる予定はない様だ。

 

S&W モデル66 1972年製
このころのS&W社は新製品を続々とリリースしていた。手作業の部分が多く、魅力的だ


7.スター部分のデザインが変わり、より頑丈になった。


8.シリンダーの長さは同じだが、フレームのトップストラップ(バレルの付け根からリアサイトの後ろまでの長さが新モデルの方は0.25インチ(約6mm)ほど長い(インターナルロックの影響だといわれている)ので、比べると少々間延びして見える。

 

フロントサイトはロウ付けしてあるので交換はできない、この個体はレッドインサートも入っていない


 今回テストしたディーン所有のモデル66-8は、彼が実際に使用するにあたり(ディーンは現在もリザーブドポリスであり、ファイヤーアームズインストラクターとして定期的に教えている)、いくつかのカスタマイズを施している。

 

嫋(たお)やかなラインが目を楽しませてくれる旧モデル66


カスタム1.リアサイトをアジャスタブルから、“シリンダー&スライド社(C&S)”製のフィクストサイトに交換。

 それに従ってフロントサイトの高さや厚みも、リアサイトに合わせて交換している。「デューティガンにアジャスタブルサイトはそぐわない。落とせば壊れるし、サイトが使えないガンほど不便なツールはない」そうな。

 

リアサイトはC&S(Cylinder & Slide)社製で、それに合わせてフロントサイトも換装されている

 

こちらの2.75”バレルの方はUノッチのリアサイトが選ばれている

 

シュラウド内にあるプランジャーがなくなったので、バレル周りはすっきりした


カスタム2.メインスプリングもC&S社製に交換。ファイアリングメカニズム周りは自分でポリッシュしている。トリガープルはオリジナルよりやや軽くスムーズになっているという。

 

 私の記憶からすると、ストック(ノーマル)のトリガープルは、ダブルアクション時で軽く10ポンド(約4.5kg)を超えていたと思うが、今回の2挺はLymanのゲージ10回平均がそれぞれ8ポンド(約3.6kg)ほどに収まっていた。ただし旧モデルに比べると、スムーズとは言い難い。

 

2.75inモデルのフレームに増設されたプランジャー。この部分がヨーク内側のリセスに食い込むので、より確かなロックアップができる

 

長い.357マグナムカートリッジを排莢するには、明らかに短いエジェクターロッド、クイックリロードでこのエジェクターロッド先端を手のひらで叩くと、手には丸いクレーター傷ができてしまう


カスタム3.グリップはストックの長くて大きいモノから、バックストラップの長さ+アルファの小型のものに交換している。

 

「オリジナルは握りやすくてリコイルを吸収してくれるが、いかんせん長くて大きい。コンシールドキャリーには向かないから短くて小型のものに交換した。2.75インチはパックマイヤー製、4.25インチの方はホーグ社製だが、フィンガーグルーヴを削り落としている」

 

シリンダーとヨークの比較。上が2.5”バレル、下が2.75”バレルのもの。下のヨーク内側部分のリセスに、ロッキングプランジャーが入り込む。かっちりとした抵抗の後、カツンとロックする。シリンダー前面のコーナーはスムーズなホルスター収納のため、面取りしてある


 いろいろイジリ倒してみたが、やはり2.75インチバレルの方がトリガーを引き切った状態で、シリンダーが前後も回転方向も全くガタがない、というのを確認した。旧モデル2挺はエンドシェイク(前後のガタ)は全くないが、シリンダーの回転方向には“カタ・・”くらいの遊びがある。4.25インチの方も、“カタ・・・”くらいの動きがある。これは実射に期待が持てるというものだ。

 

続きはこちら

 

2.5”と2.75”のフレーム内部の違い。2.75”の軽量化されたハンマーなどMIM工法のパーツは、コスト削減、合理化のための選択だ

 

Photo&Text:Hiro Soga

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年7月号に掲載されたものです

 

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