日本最高峰のミリタリーシミュレーションイベント「MFE03」取材レポート

 

 MFEは、日本のミリタリーシミュレーション(ミリシム:Milsim)の普及活動を行なう団体「MilsimFarEast」が主催する本格的なイベントで、日本全国から参加者が集結した。今回で3回目を迎えた日本最大のミリシムイベント、MFE03の様子をご紹介しよう。

 

 ▼世界観や用語も紹介した以前のMFEレポートはこちら▼

日本最大のミリタリーシミュレーションイベント「MFE01」取材レポート!

 

 

location / Phese i

 

 今回MFE03が行なわれたのは静岡県伊豆市に位置するテーマパーク「修善寺 虹の郷(以下 虹の郷)」で、ミリタリー系のイベントではファスガンやB2iなどにも利用されている。
 「イギリス村」「カナダ村」「伊豆の村」など、多種多様な建築様式を模した街並みに加えて、園内を運行する「修善寺ロムニー鉄道」やローズガーデン、日本庭園など見所も多く風光明媚なテーマパークだ。

 

 

 日中は通常営業を行なっているため、今回は閉園時間である夜間から明け方にかけて作戦行動が行なわれた。一部参加者はPhase iとして私服で営業時間内に園内を散策、今後の作戦展開のために現地調査や作戦立案を行なった。

 

Phase ii 

 

 Phase iiでは実際に軍装を着用して後段作戦が開始される。

 MFEの参加者には今回行なわれる状況における事前説明用の資料が配布された。この資料に沿って作戦地域や状況の背景や作戦進行が行なわれる。

 

参加者に配られる資料のごく一部。部隊ごとに配布資料が違うだけでなく、今回のイベントに直接関係のない部隊展開なども資料には記載されている

 

 今回の作戦はMFEで登場する架空国家「レヴォニア共和国(以下:レヴォニア)」と「ウトロムスク共和国(以下:ウトロムスク)」、その両国が領有権を巡って対立するガンドス地方の北部における軍事衝突という想定で状況が展開された。

 

部隊スタート直前の写真だ。各々装備の最終チェックや休息を取りながらスカウトチームからの情報を待つ

 

 今回、筆者は侵攻部隊であるウトロムスクの部隊である「JSOTF-404(以下:404)」に主に同行して取材した。対する部隊はレヴォニアの「CJSOFT-621(以下:621)」だ。

 まず、侵攻側は偵察部隊が先行して派遣。それらが入手した情報の元に主力ユニットが行動を始める。

 

実際の軍事行動を思わせる光景だ

 

 

 

 Phase iiの1800~0830は装備を着用した作戦時間となっており、404は短い時間の中で任務を完遂する必要がある。

 JTAC/CCTの指示によって、CASを実施。そしてJDAMによる物資集積所の撃破によって勝利となる。JDAMに必要不可欠な航空機を展開させるためにはSAMの撃破を行なう必要があり、彼らはその目的を遂行すべく着実に行動を進める。

 

※JTAC = Joint Terminal Attack Controller:統合末端攻撃管制官

※CCT = Combat Control Team = 戦闘管制チーム

※CAS = Close Air Support :近接航空支援

※JDAM = Joint Direct Attack Munition:統合直接攻撃弾

※SAM = Surface-to-Air Missile:地対空ミサイル

 

イギリス村に侵攻する404

 

 

駅前にて発見された親ウトロムスク派民兵の状況現示班(統裁員)の死体役。状況エリアにてUnknownの死体が発見されると死体検索し、部隊に共有される

 

 404は虹の郷入り口ゲートから侵入を試みるも、イギリス村にて交戦が行なわれていたため一度撤退。状況確認後、再度突入を試みる。

 部隊到着が到着したときにはすでに静かになっており、辺りには敵に倒され地面に転がる兵士の姿が見られるだけだった。イギリス村の安全が確立された後は、同地域を防衛する部隊を残して各ユニットが再び展開される。

 

 

ATAK(Android Team Awareness Kit)を確認する参加者たち。ATAKは自分の位置と味方の位置をリアルタイムにスマートフォンの地図上に表示するソフトだ

 

こちらがATAKの画面だ。こちらは両軍の状況が表示されているが、参加者は自軍のみが表示される

 

 404本隊はSAM撃破のために伊豆の村を通過。そして森の中を抜けて外周を大きく迂回し、前線へと展開することになる。不安定な天候の中、各参加者は自軍勝利のために暗闇を進んでいく。

 敵部隊はSAMを防衛することが目的だが「我々は空が見たい」と言いながら、敵に近い丘まで勝手に展開することもあったという。防衛側も一筋縄ではいかないようだ。

 

NOD(Night Observation Device)にて警戒を行なう参加者。各陣営は予め決められた数量のNVG(暗視ゴーグル)やサーマル、赤外線センサーといったNODを持ち込むことができる

 

NVG越しの視界。肉眼では辛うじて見える程度​​​​​、そして普通のカメラでは捉えられないような環境でもこのように見ることができる

 

 小さな衝突や不審な動きなど両陣営に報が届くが、作戦展開して時間が経っておらず、偵察部隊による情報収集が行なわれていることに加え、夜間ということも相まって日付が変わるまでは大きく状況が動くことはない。じりじりとした時間が続く。

 

 

 

 

 大雨が降りしきる深夜4時、状況は大きく動き始めた。前方に展開していた部隊が2度の攻撃の末、SAMの撃破に成功したのだ。これにより、集積所防衛のために621は大きく戦線を後退させることになった。

 

 404のミッションが順調だったわけではなく、途中のJTACの戦線離脱によってレーザー誘導爆弾を用いたSAMの撃破は困難になったため、プランB「航空部隊のみによるHARMを用いたSEAD」を実行し、SAMの撃破を遂行したのだ。

 ちなみにこの近接航空支援の通信要領に関しては、すべて米国防総省策定のマニュアルに基づいて英語で行なわれていた。

 

※HARM = High-Speed Anti Radiation Missile:高速対レーダーミサイル

※SEAD = Suppression of Enemy Air Defence:敵防空網制圧

 

 

 

 少し空が明るくなり始めた頃、筆者が本部エリアに戻っていくと621が警戒していた道には404が展開し、大きく状況が変わったことを感じさせた。蓄積した疲労が出てきたのか、一部参加者は休息を取りつつ交代で監視を進めていた。

 

 

 

実は任務遂行中であったのだが、カメラを向けるとノリノリでポーズを決めてくれた海兵隊チーム

 

 

 しかしそんな状況下でもC2(Command and Control)からのサポートもあり、敵部隊は消耗し、状況終了を迎えることができた。

 対する621も、404の激しい攻勢を受けて損害を出しつつも最後まで戦い抜き、無事に状況終了したという。

 

 

状況終了

 

 状況終了後、両陣営はカナダ村に集結した。

 作戦や参加人数を悟られないために、参加の是非をSNSですら明言してこなかった参加者も多い。そんな彼らがここで初めて相手陣営に仲間がいたことを知る、ということも少なくなかった。

 

軍装の参加者が一堂に会する様は圧巻である

 

参加者の装備は今回の状況を想定して組まれている

 

実際の想定に準じた装備だけにリアリティが感じられる。まるで実際の軍隊のような光景だった

 

 気温が低いだけではなく、MFE初の雨に見舞われたことで多くの参加者に疲労が見られた。そんな過酷な環境下でのイベントでも、終わりには和やかな雰囲気が見られた。そして主催から閉会の挨拶が行なわれ、ここで常に部隊を見ていた運営から両陣営のMVPが発表された。

 

621部隊のMVP選出者

 

404のMVP選出者。それぞれに景品としてMFE03 MVPパッチが贈呈された

 

 

621・404全参加部隊の集合写真

 

CJSOTF-621

 

JSOTF-404

 


 

 このMFE、もといミリシムは普通のサバイバルゲームとは違い、チームでユニットごとに別々の役割を与えられ、行動することになる。そして、任務も今回であれば「CASを行ない集積所を撃破、そのためにSAMの撃破も行なう。作戦行動中には入った無線に応じて、情報提供者の脱出も支援する」といったシミュレーションの名に恥じない状況が展開される。当然、それだけの想定になればイベントを行なうフィールドの広さや作戦時間も桁違いだ。

 

夜間かつ雨天の元で行なわれたこともあって、写真に撃ち合いはほとんど収められていない。こういった状況下でも撮影を行なえる機材を準備することもMFEに同行する撮影者としての礼儀だと感じた

 

 そのため、撃ち合いは時間内でほとんど行われない。移動、警戒、待機が多くの時間を占めており、撃ち合いは1割にも満たない。そんなニッチなイベントでも多くの参加者に恵まれるのは、このMFEが日本で最もリアルなミリタリーシミュレーションが行なわれ、数々のドラマが生まれるからだろう。

 

TEXT&PHOTO:出雲

取材協力:MilsimFarEast

SpecialThanks:参加者及び運営の方々

 


 

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