実銃

2023/10/09

【実銃】M14のタクティカル進化系「SOCOM16」&「M1A」を実射!!【Part4】

 

Springfield Armory 
M1A
SOCOM16 CQB

 

クラシックなM1Aのデザインから誕生したコンパクトタクティカルライフル

 

 

 1950年代、西側各国が採用した第一世代アサルトライフルの中で、米国のM14は古いライフルのデザインを引きずっていた。しかし、それは同時に“鋭い切れ味”の優れたデザインでもあった。それゆえ、同時代のG3やFALが過去の遺物になってしなった今でも、M14(M1A)は進化を続けている。

 

Part3はこちら

 

 


 

実射

 

ダブルドットサイトになってしまうがSURE HIT T2ソーラーを装着しての実射。対物レンズ径21mmで同じく3MOAドットを採用。11段階の輝度調整機能を持つ。ラスベガスの炎天下でもクリアにドットが見える

 

マガジンの挿入。AKのように前方を先に挿入し次に後方を回転させるようにしてロックさせる

 

 今回はラスベガス郊外の屋外レンジで実射を行なった。とにかく弾の値段が高く、供給が絞られた現状なので、使えるテスト弾も限られるが、フィリピン製M80弾が2箱購入できた。


 操作等はフルサイズM1Aと変わらないが、16.25インチバレルの短縮化と軽量化で取り回しがかなり良くなっている。しかしそこは7.62mmのバトルライフル、同バレル長の5.56mmクラスのカービンと比較すると圧倒的な重量感だ。そしてリコイルも.30口径らしい力強さがあるがマズルブレイクが効果的に働き、想像ほど大きなリコイルでもなかった。


 そして伝統的な狩猟ライフルのストックからアークエンジェルの収縮式ストック、保持しやすいAKタイプのグリップに切り替わった事で、重量はあるが保持しやすくタクティカルユースでの使い勝手が大きく向上している。

 

小型軽量化されて機動性が上がり、さらにヴェノムの装着によりサイティング能力は大幅に改善、短距離での標的補足が容易になったSOCOM16 CQB。従来ピープサイトよりもフォローアップショットも格段に行ないやすくなりタクティカルライフルとしての総合性能を格段に引き上げている。全体にガスを拡散させる従来型フラッシュハイダー(SFAはフラッシュサプレッサーと呼称)よりも、斜め上方向にガスを噴射させるマズルブレイクの効果は高く、銃口の跳ね上がりを抑制し、より直線的なリコイルになっている

 

使用レンジの奥行きの関係で距離は約40m程度しかとれなかったが、サンドバッグに乗せて精度テストを行なってみた。この時はアメリカンタクティカルの150gr弾を使用(初速2,631fps/エネルギー2,305ft-lbs)

 

5発のグループはちょうど2インチにまとまった。高倍率スコープならはるかにタイトなグルーピングになるはずだ。米専門誌のテストなどでは、100ヤードで2MOA前後くらいというデータが出ていた。命中精度を割り切ったタクティカルライフルなので、対人用として充分な精度があると言える


 従来のアイアンサイトは使用不可になるが、3MOAのヴェノムは至近距離から遠距離まで素早いサイティングができる。人体サイズの標的なら300mくらい先までは十分実用域だ。

 マウントベースからヴェノムを外せばアイリリーフの長いスコープが取り付けられるので長距離射撃能力を引き上げられる。個人的には現在製造中止のSOCOMⅡのような長いレイルタイプも加えて欲しいところだ。

 

精度テストの最中に肩付けが甘くなり、一度ジャムが発生したがそれ以外は快調であった

 


 初見の印象だとエジェクションポート上にヴェノムが突き出していてジャムが心配になった。メーカーも充分にテストしているので問題ないはずだが、実際どんな感じなのか興味をそそる点だ。

 

 テスト射撃をスローモーション動画撮影してエジェクションの様子を確認したが、排莢の軌道は極めて安定していて全く問題ない事がわかった。空薬莢は毎回キレイにマウントとの隙間から排莢される。20発程度撃った状態ではマウント付け根に若干こすった痕は見受けられたが問題ない。

 

 

ヴェノム装着時に空薬莢がスムーズに排莢されるのか、ちょっと心配だった。20~40倍のスローモーション動画で確認してみたところ、毎回安定した軌道でレシーバーとマウントの隙間から排莢されているのが解る。メーカーは充分な試験を重ねて製品化したわけだ。ベースに稀に空薬莢が当たることもあるようだが、機能的には問題ない

 

 奥行き40m程度のレンジで精度テストを一度行なってみた。2ステージトリガーはサービスライフル競技向けで、軽くはないが、高い命中精度を追求するモデルでもなく、そこは割り切っている。対してバレル短縮化による初速の低下はさほどではなく7.62mmのパワーの強みも継続している。

 

LAに戻ってからMr.Ikedaの所持するM1Aナショナルマッチを屋外レンジで追加テスト。今回の実射モデルをしてくれたのはモトちゃん。.30口径クラスのライフルを撃つのは初めてだ

 

ナショナルマッチでは各部がタイトフィットされており管理用にシリアルナンバーの末尾4桁がストック内側、ボルトアッセンブリーなどに刻まれている。フード付きのアパチャーアイピースによってさらに狙いやすい。実際のところ、M1AをカスタマイズしてもAR系のように100ヤード1MOAを切るのは難しく、マッチアモで大体1.25から1.5MOAくらいが関の山と言われている

 

この銃はカリフォルニア州コンプライアントモデルだ。バヨネットラグを持つ通常のフラッシュハイダーを装着した状態では同州独自のアサルトウェポン法に抵触するため、ラグ無しのマズルブレイクタイプに交換する事でクリアしている。全方向の小孔と前方の左右と上に開いた大型ポートが特徴だ


 LAに戻りタラン・バトラーのレンジでMr.IkedaのM1Aナショナルマッチをテストした。今回はライフルレンジが使えず、ピストルレンジで作動と破壊テストの撮影を中心とした。

 16.25インチの後ではやはり全体的に大きく、重いという印象を受けるが、安定した姿勢で狙うなら従来サイズの木製ストックの方が射撃しやすい。M14ファンにはやはりこの親しまれたサイズが人気で現バリエーションもこちらが中心だ。

 

純正バイポッドを装着。ガスシリンダー部に噛み合わせて固定する

 

ロックを解除して折りたたむ。難点は折りたたむとストックに傷を付けることだ


 SOCOM16 CQBはMK14 EBRのような近代タクティカルライフルの要素をより身近に市販に向いた形で取り入れた興味深いモデルだ。高精度セミオートならAR10系をカスタマイズした方が精度や拡張性において上だが、あえてそこを割り切りAR系よりも全体的にスリムでトラックなど車両に常備するような運用でも邪魔にならない良さがあり、今回のCQBモデルでもその特性は大きく損なわれていない。

 

プレートを開くとバットストックのストレージコンパートメントが確認できる。最初期のM14ではガーランドのバットプレートがそのまま採用されたが、すぐにヒンジ型に改良された

 

クリーニングキットなどが収納できる


 実際にSOCOM16シリーズが軍・警察で運用されているという話は聞かないが、スリムさを活かしコンパクトで高威力なパッケージとして一般市場に魅力的を与えている。

 

 「AR系を持っていても、やはり欲しくなるのがM1A」、「M1Aはいつかは所持したい銃」という会話はよく耳にする。伝統的なスタイル、扱いやすさ、信頼性、ライフル然としたそのデザインは色褪せない魅力があるのだ。いまだ戦場で活躍の場を持つM14系バトルライフルと共に、M1Aシリーズは、これからも米国民の象徴的な7.62mmライフルとして支持されるであろう。

 

バイポッドを使ってM1Aを撃つモトちゃん。かなり重いので両手保持は厳しかったがこれなら楽に撃てる。フード付きピープサイトは日中でも見やすい

 

20倍のスローモーション動画でマズルブレイクの働きを確認。盛大に吹き出す発射ガスとともにバレルが若干しなっているのが確認できる(先ほどの動画で見て頂きたい)。ガスシリンダー下部のガスポートから余剰ガスが吹き出す

 

1ガロンの水の入ったボトルを撃つ。7.62mm(M80使用時、初速2,655fps/エネルギー2,300ft-lbs)では弾のエネルギーでボトルが前方に吹き飛ばされている

 

こちらは5.56mm。TTI TR-1(16インチバレル)から発射した(初速2,922fps/エネルギー1,043ft-lbs)。通常の55grFMJ弾頭ということもあり、さほどの破壊力はない

 

1.5Lのコーラボトル2本を撃ち比べた。5.56mmでも派手に吹き飛ばしているが…

 

5.56mmの約2.2倍のエネルギーを持つ7.62mmではさらに派手に粉砕している。ボトルを確認すると7.62mmでは大きく裂けて先端部が千切れて吹き飛ばされていた

 

 

夏らしく(?)久々にスイカを撃ってみた。さすがは7.62mm! バラバラに弾け飛んだ

 

クラシックな部類のM1AシリーズはAR系には命中精度やカスタマイズの拡張性では及ばずとも、その伝統的なスタイルは魅力的だ。そして5.56mmを遥かに上回る7.62mmのパワーを活かし、細部をアップデートしてタクティカルライフル化させたSOCOM16のコンセプトは興味深いものがある。弾の入手状況が改善されてきたら、マッチアモを使ってナショナルマッチの命中精度も探求してみたい

 

撮影後、気が付くといつの間にかスイカを食べていたモトちゃん(笑)。水分は結構飛んじゃったけど甘くて美味しかったそうだ

 

TEXT&PHOTO:Gun Professionals LA支局 

 

 

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