2023/09/16
【実銃】映画『ジョン・ウィック』シリーズの銃器を手掛けるタラン・バトラーとその作品【Chapter 2】
JOHNWICK
PARABELLUM
の
銃器
『ジョン・ウィック』シリーズは独特な世界観を持つ娯楽作品だ。派手なガンアクションが全編を貫いており、登場する銃器はどれも入念な検討の上に選ばれ、強い個性を発散、出演者と共に物語を盛り立てる存在となっている。
シリーズ3作目『ジョン・ウィック:パラベラム』で使用された銃について、その主なものをここに集めてみた。それぞれの銃の来歴を知っておけば、映画をもっと楽しめるだろう。
※この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2019年11月号に掲載されたものです。
「タラン・バトラーにインタビュー」
Q:JW3の射撃訓練を始めたのはいつ頃ですか?
A:2018年の3月頃です。銃器も前作に引き続きXtreme PropsのGary Tuesが担当し、NY側のプロップ会社も協力しています。キアヌにとって今回は前作(『ジョン・ウィック:チャプター2(John Wick: Chapter 2)』)以上に訓練期間がハードでした。
午前中にチャド監督の経営するスタント会社87Eleven Action Designで柔術の訓練後、40ポンド(約18kg)のバックパックを背負って自身のバイク会社が組んだアーチモーターサイクルのバイクにまたがり、片道1時間半かけて乗馬スタントのレッスンを受けに行き、そこからTTIにやって来て射撃訓練に挑んでいたからです。
ですから常に疲れ切った状態で、毎回残り60%くらいの体力でした。訓練時よりも劇中の方が断然動きがエネルギッシュなのはそのためです。ただ満身創痍の状態で撃ち続けるという状況は映画の中のジョン・ウィックそのものでしたね。
Q:銃の選択についてはどのように?
A:登場する銃や射撃スキルのアイデアは、私がチャド監督にいろいろ提案し、参考にしてもらってます。ライフルに関しては当初は1発で敵を葬れる.30口径のAR10系ライフルを使用させる予定で、TTIで組み上げたカスタムガンをキアヌに撃ってもらっていたのですが、途中でチャド監督の考えが変わり、9mm×19のSIG MPXを選択しました。
監督個人も所持し撃ち込んでいる優れたカービンですが、防弾装備相手の敵に対してあえてピストル弾で立ち向かわせる事で、ジョン・ウィックでも容易に勝ち進めない状況を作り出したかった訳です。
例えば防弾ヘルメットまでかぶられたら首の隙間を直接狙うなど接近戦を駆使しなければ容易には倒せません。そうやって苦戦を強いる方がより盛り上がると考えたのですね。
MPXのカスタマイズはTTIがオファーしている仕様に準じておりますが、キアヌも個人的にすごく気に入ってくれました。まあMPXを嫌いな人はいないでしょうけどね。
Q:ハル・ベリーはG19コンバットマスターを使用しますが、これについてお聞かせ下さい。
A:ソフィアの役柄を考慮してG19をベースにしたコンバットマスターを監督に勧め、今回はシルバーのイオンボンド仕上げのスライドがソフィアのキャラに似合うと考えました。
Gen4を指定したのはマガジンキャッチが大きくハル・ベリーがリロードしやすいと思ったからです。犬の装備に色んな銃を備え付けるとか、マガジンをくわえて持ってこさせるとか…色々と提案をしましたが、その辺はJW4でやってくれるかなと期待してます(笑)。
Q:コンチネンタルホテルの武器庫で9mmメジャー弾が登場しますが、これについて教えて下さい。
A:劇中シャロンがこの弾について解説するシーンのセリフは私が書きました。一般的には9mm×19はそれほどパワフルではないイメージがありますが、仮に.45ACPにしてしまうと、やたら頻繁にリロードさせる事になり、長回しも多いジョン・ウィックのアクションが盛り上がりません。よって9mm以外の選択肢は考えませんでした。
そこで監督に提案したのがホットな9mmメジャー弾です。現実的な威力を検証するため2,000ドル近くする精巧な人体模型を用意し、監督を交えてTTIレンジでテストしました。
まず147gr SXT弾頭では人体に2インチ程度の穴を開けながら貫通し、背後にあった5枚のカードボード(段ボール)を貫きました。次に124gr+P+を撃ち込んだところ、貫通はしないものの中々の破壊力を見せました。115gr +P+も貫通せずに人体に大きなダメージを与えましたが、まだ我々が理想とする破壊力には達しておりませんでした。
そこで私がつくったのが初速1,425fps、銃口エネルギーが564ft.lbsにも達する125gr弾頭の9mmメジャー弾です。+P+P+くらいの圧力で、パワーファクターで言えば178です。人体模型の頭を豪快に吹き飛ばし弾頭は頭蓋骨に残りました。人体中央に撃ち込むと.223で撃ったかのような大きな穴を開けて殆ど貫通しそうでした。骨の部分に撃つと粉々に砕けました。監督にも各種標的で撃ち比べてもらいましたが、その違いに満足しておりました。
ボディアーマーを着せて撃ったわけではないですし、現実的に相手を確実に倒すには顎や隙間を狙うしかありませんが、これで撃たれればボディアーマー越しでもタダでは済みません。撮影用にダミー弾を作りニューヨークに送りましたが、弾頭の長い9mmメジャー弾を見てキアヌも驚いてましたね(笑)。
TEXT&PHOTO:Gun Professionals LA支局
Special thanks to Taran Butler, Gary Tuers, Chad
Stahelski, and Keanu Reeves.
この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2019年11月号に掲載されたものです。
『ジョン・ウィック』シリーズ最新作を観る方にオススメ!
月刊ガンプロフェッショナルズ 2023年10月号
キアヌ・リーブス演じる伝説の殺し屋ジョン・ウィックの最終決戦が描かれる第4作目『ジョン・ウィック:コンセクエンス』が、いよいよ9月22日に日本でも公開される。この映画でジョンは様々な銃を使いながら戦いを進めていくが、今月号のガンプロフェッショナルズではメインとなる3機種について、デザインを手がけたタラン・バトラーのインタビューを交えながら詳しくご紹介している。登場銃について知ることができるので、上映前にぜひご一読いただきたい。
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