実銃

2023/09/09

【実銃】映画『ジョン・ウィック』シリーズで使用された拳銃「SIG SAUER P365」グレイガンズカスタム【Chapter 2】

 

SIG SAUER

P365

ハイキャップマガジンを採用したマイクロコンパクトピストル

 

 

 2017年末に発表されたP365は、9mm×19のCCWに適したサブコンパクトモデルだ。G43と同等のサイズながら、マガジンキャパシティが10+1と大きい。そのため発売と同時に大注目を浴びている。

 今回ご紹介するモデルはノーマルのP365ではなく、映画『ジョン・ウィック:パラベラム』で使用されたグレイガンズカスタムとTTIカスタムだ。

 

※この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2019年6月号に掲載されたものを転載しています。

 

Chapter 1はこちら

 

 


 

 P365 

 

グロックはサブコンパクトのG26を生み出し、シングルスタックのスリムラインとして9mmモデルのG42、G43を充実させた。今年はさらにG19サイズのG48、そのフレームを持つG43Xが紹介されている


 2014年、.380ACPのG42を皮切りにマイクロコンパクトオート競争にグロックが参戦することとなった。

 G42は完全新規設計の新型プラットフォームで、セイフアクションのトリガーにも改良が加えられ、それが後のGen5にも導入された。その時点で9mm×19版が続いて発売されることは想像に難くなく、2015年のNRAショーでG43がデビューした。

 その頃の市場には、S&W M&Pシールド、ワルサー PPS M2、ルガー LC9、スプリングフィールドアーモリー XDSなどのライバルが立ち並んでいたが、グロックの新型スリムラインは多くの人達の注目を集めた。

 

G43(写真下側)はG42(写真上側)より僅かに大きい程度だ


 こうなると従来のP290RSでは競争力不足だとSIGは感じたようだ。単にハンマー方式であったP290を、そのころ主流になりつつあるストライカー方式に変更した程度では、市場に与えるインパクトがもの足りないということもSIGは理解していた。


 金属シャシー側にシリアル番号を与えるFCU(ファイアコントールユニット)を導入しP320で成功していたSIGは、同様の機能を新型マイクロコンパクトオートにも導入すれば、拡張性/発展性は大きく広がる。そして、マイクロコンパクトを選択した場合に妥協を強いられる部分は、マガジン装弾数である事にも目を向けた。

 

P229ステンレスエリートコンパクトとの比較。P229のサブコンパクト版P224(製造中止)も出たが、この分厚さはコンシールドキャリー用として考えた場合、かなりやっかいだ

 

 ファイアパワーを優先すれば、フルサイズモデルを短縮した分厚いサブコンパクトしか選択肢がない。そこでSIGは、その中間を埋める存在として、マイクロコンパクトのサイズでありながら、10連ダブルスタックマガジンを使用するP365を開発した。2発増量のグリップエクステンション付きマガジンを使用すれば、チェンバーの1発と合せて13発ものファイアパワーとなる。

 これはP320サブコンパクトと同じだが、P365はその小型軽量さ、特にその薄さに大きなアドバンテージがあると考えた。

 

市場にあるシングルスタックマガジンのスリムな9mmオートと比較してもP365の小型さが引き立つ。それでいて10/12発の装弾数は魅力的だ


 P290より僅かに大きくはなったが、G43などとほぼ同じくらいのサイズで、10発+1、12発+1の装弾数を実現したP365は、SHOT SHOW 2018で大きな反響を呼んだ。365のモデル名は、1年365日から来ている。つまり1年中キャリーしても苦にはならないというものだ。すなわちEDC(EveryDayCarry)ガンそのものといった意味合いを持っている。

 P365も、P290RSから引き継いだブローニングタイプ改良型ショートリコイルとナイトロン仕上げのステンレス製スライド、ポリマーフレームで構成されている。

 

ブローバック方式で.380ACPのP232SLとの比較

 

P232SLは全長168mm、バレル長91mm(3.6インチ)、全高119mm、全幅30mm、重量635g、マガジン装弾数7発。P365より大型で重く、弾のパワーでも装弾数でも負けてしまい、今となってはかなり色褪せて見える

 

スライドサイズは.380ACPのP232SLとほぼ同サイズ


 サイトは3ドットのトリチウムを使用したX-RAY3 Day/Nightサイトを標準装備。購入時に10連マガジンが2本付属し、1本は小指の乗るエクステンション付きでメーカー希望小売価格は599ドルだ。

 

XRAY3 Day/Nightサイトを標準装備する

 

 P365のスペックをP290RSと比較すると下の表のようになる。

 

P320 Subcompactは9mm×19モデル


 これでみてもお判りのように、P365はP290RSから僅かに大きくなった程度でしかない。さらにP320サブコンパクトモデルと比較するとさらにその違いに驚かされる。同じ9mmでありながら、これは大幅にコンパクトなのだ。

 

最初ネジ付きバレルかと思いきや純正バレルにネジを切って延長したものだった。映画ではサプレッサーは使用してないという

 

SIGはP220以降、スライド内のファイアリングピンブロックセイフティを搭載して安全性を高め、多くのモデルでサムセイフティを省略、P365もシンプルな操作で扱える


 トリガーは完全なSAなので不発が起これば再度コックしなくてはならずP290RSのようにそのままトリガーを引いて二度目の発射に可能性をかける事はできない。しかし、トリガープルは、P290RSよりも軽く引きやすくなっている。そしてFCUの導入でP250/P320のような拡張性を持たせているのだが、現在のところは異なるサイズや仕様は発表されておらず、コンバージョンキットも提供されていない。

 

実弾仕様ではエジェクションポートがロッキングリセスがわりだが、撮影使用モデルは圧力の弱い空砲用にロック機構を削り落としてブローバック化してある

 

全体の小型化を優先しアクセサリーレイルは専用設計となり、汎用性はないが専用のレーザーサイト等が用意されている


 勝手に想像すると将来的にもう少し大型で、P320コンパクトより少し小型のH&K P2000くらいのサイズのバリエーションが登場するのではないかと期待する。そして専用設計のアクセサリーレイルに装着するアクセサリーとしてFOXTROT365フラッシュライト、LIMA365レッドトリガーガードレーザーなどが供給され、P365の実用性向上が図られるようになった。

 

撮影用モデルは空砲で作動させるためにバレル内にブランクアダプターをねじ込んである

 

スライドを比較する。左からP236、G43、G26。G26の太さが際立つ

 

グリップの太さもこれだけ違う


 SIGからは、そのLIMA/FOXTROT装着状態に対応したブラックポイントタクティカル製IWBカイデックスホルスターやミッチローゼン製レザーホルスターなどが販売されている。

 

グリップ両側面にはグレイガンズのレーザーによるスティップル加工が行なわれている

 

バックストラップには緩やかなカーブと本来のシボ加工がある

 

薄っすらフィンガーグルーブのあるフロントストラップ

 

続きはこちら

 

Photo&Text:Gun Professionals  LA支局

Special thanks:Taran Butler(Taran Tactical Innovations)/Gary Tuers(Xtreme Props And Weapons Rentals)/ Michael Grasso(Grayguns)

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2019年6月号に掲載されたものです。

 


 

『ジョン・ウィック』シリーズ最新作を観る方にオススメ!!

月刊ガンプロフェッショナルズ 2023年10月号

 

 

 キアヌ・リーブス演じる伝説の殺し屋ジョン・ウィックの最終決戦が描かれる第4作目『ジョン・ウィック:コンセクエンス』が、いよいよ9月22日に日本でも公開される。この映画でジョンは様々な銃を使いながら戦いを進めていくが、今月号のガンプロフェッショナルズではメインとなる3機種について、デザインを手がけたタラン・バトラーのインタビューを交えながら詳しくご紹介している。登場銃について知ることができるので、上映前にぜひご一読いただきたい。

 

 


 

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