実銃

2023/05/08

【実銃】名短機関銃のクローン「GIDEON SHADOW45」の実射性能をレポート 【後編】

 

OMEGA GIDEON SHADOW 45
H&K UMP45 Clone

 

 

 UMPシリーズは、世界中の法執行機関で採用されているMP5とは別のラインとしてヘッケラー&コッホが20世紀末にデザインしたサブマシンガンだ。レシーバーのほとんどはポリマー製で、バレル、ボルト&マガジンを交換するだけで9mm、.40S&W、.45ACPにコンバートできるフレキシビリティと、ブローバック作動のシンプルなメカニズムが魅力だ。

 その登場から20年、MP5ほどの成功は収めていないが、UMPにもクローンモデルが存在する。

 

中編はこちら

 

実射

 

 今回の実射は、SMGというカテゴリーの性格上、どのくらいの距離でいかにヒットできるかという点にフォーカスを当ててみた。よって使用する弾薬はMAGTECH社製230gr FMJのみを1,000発用意し、比較として昨今USミリタリーに採用されたモデルのベースである9×19mmを使用するB&T APC9を引っ張り出してみた。

 

セミオートは安定の性能を見せる

 

15ヤードというのはこんな感じだ。SMGでは頻繁に使われる射程となる

 

 まずは20ヤードにおける精度テストだ。テーブルにマガジン部分をレストさせ、10発を撃った。1発を除いて約1.75インチ(約44mm)に集弾する結果だった。バレルはH&Kオリジナルの7.8インチポリゴナルが入っていた。これは必要十分以上の性能であろう。MAGTECHブランドはいわゆる廉価版弾薬として有名であり、精度のいいアモを使えばさらなる精度が期待できそうだ。

 

H&K社製.45ACPマガジン。もう少し短くなってくれるともっと良いのだが

 

 マガジンは.45ACPが25連、9mmと.40S&Wは30連で、シングルフィード(マガジンリップ部分に露出しているのは1発のみ)だが、ロードは容易だ。しかしマガジンそのものは長大で分厚く、いくつも持ち歩くのはご免被りたいサイズではある。

 

 トリガープルは、ドイツ製ライフルの常として、平均8ポンド(約3.6kg)ある。はっきり言って重いが、対策パーツがない以上、慣れるしかない。

 フルオート射撃は15ヤードからとした。

 

15ヤードというのはこんな感じだ。SMGでは頻繁に使われる射程となる

 

 エレンは、いわばフルオート射撃に習熟しているので、あまりに良い結果が出てしまい参考にしづらい傾向があるのだが、ここでは客観的に結果を並べていくことにする。


 まずは2点バーストを念頭に1マガジンを撃つ。エレンはマシンガンの常として、ターゲットの下腹部を狙い、どのようにパターンが展開していくかをチェックするようにしている。

 下の写真のターゲットを見てもらうとわかるが、初弾ほとんど同じところにまとまっており、2発目が6-7インチ上にばらばらと集まっている。1発のみ右上に飛んでいるのが3発目の弾痕だ。25発のうち、1回だけ3点バーストになったのだ。発射サイクルが毎分600発とそれほど速くないので、トリガーによる発射弾数のコントロールはしやすい方であろう。

 

2点バースト、1マガジン25発1回目の結果。エレンはフルオートの場合、初弾を下腹部に着弾させるメソッドを使っている。これだと、ほぼ確実に2発がヒットすることになる、安定のグルーピングだ。右上の一発は25発のうち、1回だけ3連射になってしまった3発目だ

 

 但しリコイルがきついので、例えば私が撃つと、2発目まではターゲットにかろうじて入ってくれるが、3発目以降は右上方向に大きく外れていってしまう。.45ACPモデルではよほど訓練しない限り、フルオート射撃は意味を為さないといえる。しかしエレンが撃つと、たとえ25発をフル連射しても15ヤードの距離なら、全弾がターゲット内に入ってしまう。10ヤードからならほぼ5インチ以内にまとめてしまうのだから恐れ入る。

 

珍しいことに、エジェクションポートの中に発射炎が見える


 実際に撃ってみて実感したのは、UMPのフルオート時にはドットサイトは役に立たない、という点だ。これはエレンも同じ意見だ。発射時にサイトをのぞき込んでいると、赤いドットはターゲット内外をあちこち跳ね回っており、ドットサイトゆえの残像もあるので、とてもではないがこれを見ながらUMPを抑え込むことなどできるものではない。ドットサイトはセミオートオンリー、もしくは初弾のみで使うものと割り切るしかなさそうだ。

 

ドットサイトはフルオートでは使い物にならないので、外してしまった

 

エンプティケースは1ヵ所にまとまっている。これは信頼性が高いガンの特徴でもある


 こうなるとセレクターに2連バーストを追加していることも合点がいく。それこそ、セイフーセミオートー2点バーストという3ポジションとして割り切ってしまった方がUMPの運用法としては適しているといえよう。この点ではB&T APC9で大きな差が出た。まあ口径が違うのだから当たり前ともいえるが、APC9の発射サイクルは毎分1,080発と劇的に速いにもかかわらず、ドットをターゲットに載せておくのが比較的簡単にできてしまう。フルオート時のマズルライズ(銃口の跳ね上がり)はそこそこあるが、バーストにするとちゃんとコントロールできる範囲なのだ。

 

これはエレンが10ヤードから25連射したもの。1発を除き、4インチほどにまとまっている

 

初弾がセンター部分に来るようアジャストして撃ってもらった。初弾と2発目のグルーピングがよく解る

 

 二人であーだこーだと言いながら撃ち進んでいると、1,000発などあっという間になくなってしまう。エレンは、なんだかんだと言っても、このUMPクローンはコレクションとしてキープすると宣言する。

 

慣れてくるとグルーピングはどんどんまとまってくる。このターゲットはエレンが10ヤードから25連射したもの


「そうだな、でもやっぱり.45ACPの威力を持ちながら、肩付けできて、精度が良くて、信頼性が高いというのはいい。ただ9mmコンバージョンを手に入れるというのはどっちでもよくなったというのが正直なところだ。それより、このAPC9と同じB&TのMP9を比べてみるってのはどうだい?」
 おお、素晴らしい、さすがはエレン。彼は言い出したら即行のタイプなので、このプロジェクトは近いうちに実現するだろう。たのしみだ。

 

比較用に持ち出した“B&T APC9” 9mm口径。こいつは良くできたSMGだ

 

APC9の発射のサイクルは段違いに速いが、2-3連のバーストならちゃんとドットを見ながら撃つことができる

 

B&T APC9(左)との比較。UMPはひと回り以上デカい

 

Photo&Text:Hiro Soga

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2020年2月号に掲載されたものです。

 

※当サイトで掲示している情報、文章、及び画像等の著作権は、当社及び権利を持つ情報提供者に帰属します。無断転載・複製などは著作権法違反(複製権、公衆送信権の侵害)に当たり、法令により罰せられることがございますので、ご遠慮いただきますようお願い申し上げます。

Twitter

RELATED NEWS 関連記事

×
×