実銃

2023/04/09

【実銃】GEISSELE SUPERDUTY GA-15――その細部と実射性能に迫る!!

 

GEISSELE AUTOMATICS

SUPERDUTY
GA-15

 

 

 AR-15のカスタムトリガーやモジュラーレイルシステムで、その信頼性と高度なフィット&フィニッシュで知れ渡っているのが“ガイズリーオートマティックス”社だ。

 そのガイズリーが2018年に自社生産のパーツを使用したAR-15アッパーをリリースし2019年になるとロアフレームも含むコンプリートライフル“SUPERDUTY”を発表する。
 今回はガイズリー社が、あるLE(ローエンフォースメント)エージェンシーのために組み上げた“スーパー デューティGA-15 11.5インチバレル”を紹介する。

 

前編はこちら

 

 

SUPER DUTY 11.5インチ

 

上から、LaRue PredatAR ミッドレングス ​​​16インチバレル、FERFRANS SOAR ミッドレングス14.5インチ ガスピストン、Geissele Super Duty カービンレングス 11.5インチバレル

 

 今回のテストガンは、友人のポリスオフィサーのもとにガイズリー社から送られてきた、ポリスデパートメント(PD)採用を前提としたプロトタイプなので、通常のスーパーデューティモデルとは各部の仕様が少しずつ違うものとなっている。彼はPDのチーフファイヤーアームズインストラクターであり、採用銃を決めるコミッティの一員なので、そのテストを兼ねたエバリエーション(評価、査定)をしてもらうためにプロトとして送られてきたのだ。よって現行のPDにおける採用銃であるコルト社のカービンパーツがそのまま使えるよう、フラッシュハイダーやグリップなどは、交換を前提としてA2モデルがそのまま装着してある。しかしパーツの内容を聞いて驚いたのだが、このモデルではそのほとんどがガイズリー社製で構成されている。2年前には各社とパーツのコラボレーションをしてミリタリーコントラクトを獲得していたパーツ会社が、完全なるライフルマニファクチャーとしてデビューしてしまったのだ。

 

▲赤サークルがラルーPredatARのミッドレングスポートの位置、青サークルがガイズリーのカービンレングスポートの位置。これだけの違いで、その撃ち心地は大きく変わる。また高熱高圧のガスの勢いもあり、バレルやボルトアッセンブリの耐久性にも大きな差が出る


 以下にそれらの自社製パーツを列挙してみたい。

 

 

  • バッファーチューブ:ミルスペック 6ポジション 7075-T6 アルミ
  • バッファーアッセンブリ:スーパー42 バッファースプリング、H3 バッファー
  • ロアレシーバー:スーパーデューティロア ミルスペック
  • アッパーレシーバー:スーパーデューティM4アッパー
  • ボルトキャリアグループ: REBCG(リライアビリティ エンハンスド ボルトキャリア グループ)
  • ボルト:ガイズリーストレスプルーフボルト
  • ボルトキャッチ:マリタイム ボルトキャッチ
  • トリガー: SSA-E(スーパーセミオートマティック エンハンスド)
  • チャージングハンドル:エアボーン チャージングハンドル
  • バレル:ガイズリー11.5インチ コールドハンマーフォージド
  • ガスブロック:スーパーコンパクト ガスブロック
  • レイル: 10インチ スーパーモジュラーレイル Mk4 フェデラル
  • スコープマウント:スーパープレシジョンスコープマウント

 

ガイズリー製スーパーコンパクトガスブロック

 

これがスーパーモジュラーレイル装着のキモとなるバレルナットだ。その工作精度は素晴らしく、タイトでガッチリとレイルを支えてくれる。この2本の溝で前後の遊びを消し、ブラインド加工されたスクリューで回転するのを防いでいる


 昨年URG-Iモデルをレポートした時点では、バレルはダニエルディフェンス社製だったし、アッパーやボルトキャリアもコルト社製だった。それが今ではすべて自社製だというのだから、その開発意欲には頭が下がる。それもバレルなど、多くのメーカーがバレルの部分だけを冷間鍛造(コールドハンマーフォージド)し、チャンバー部分は削り出して仕上げているのに対し、ガイズリー社では精度を上げるために一歩進んでチャンバーまでも叩き出している。さらに“REBCG(リライアビリティ エンハンスド ボルトキャリア グループ)”と命名されたボルトキャリアも、ミルスペックの8620鋼から削り出され、延長されたアッパーレイルと相まって、より安定したフィーディング貢献している。また大きなストレスにさらされるボルトは、鍛造後に整形するという手間をかけ、より均一な鋼の結晶組織を構成することによってより強固なボルトを実現している。そしてこれらのパーツはガイズリー社が“NANOWEAPON(ナノウェポン)”と命名したクロームナイトライド系のコーティングを施され、焼損や摩滅からパーツを護っている。ナノウェポンというのはミリタリー用に開発されたDSL(デュラブル ソリッド ルブリカント)コーティングの一種で、的確にコーティングできればその表面硬度は82HRCにも上り、抜群の耐摩耗性を持たせることができるとされる。

 

ガイズリー社のボルトキャリアグループ(手前)とLaRue Tacticalのボルトキャリアグループ。工作精度の高さが見て取れる。ナノウェポンコーティングは、社内テストで14,000発撃った後でも擦り傷さえも付いていなかったという

 

 いろいろと小難しい言葉を羅列してしまったが、ただ一つ言えるのはこの“スーパーデューティ”を実際にハンドルしてみると、その工作精度の高さとファイアコントロールなどの操作感におけるクオリティの高さを如実に感じることができる、という点だ、16インチモデルの価格が1,750ドルとそれほど高いわけでもなく、私のお気に入りであるTTI(タラン タクティカル イノベーションズ)やLaRue(ラルー)のモデルと比べても、全く遜色がないばかりか、その実射パフォーマンスには驚きを禁じえなかったというのが実感だ。

 

上のラルー製ボルトキャリアにはよく見るとツールマークが多数ある。上のチャージングハンドルは、Strike Industries(ストライクインダストリーズ)製。右側のウイングだけを引いてもハンドルはロックされたままで、びくともしない。下のガイズリー社製の方はどの部分を引いても滑らかに後退する。動きがスムーズで必要十分の形状だ。さらに赤サークル部分のリブはサプレッサー使用時に後方に噴出してくる発射ガスを上方に逃がし、顔面に吹き付けるのを防いでくれる

 


 

実射!

 

こうしてレストさせれば、リコイルは無きに等しい。カービンレングスのガスシステムで11.5インチバレル、そしてフラッシュハイダーのみでこのリコイルというのは信じ難いほどだ

 

 今回もオーナーに同行を願い、100ヤード(約90m)のターゲットが撃てるプライベートレンジまで足を延ばして、実射テストを行った。持参したアモは在庫していたトレーニング用WOLF Gold 55gr FMJと、その精度と性能でデューティアモとして採用されているSpeer社のGOLD DOT 55gr GDSPである。

 

Speer社 55gr Gold Dot ソフトポイント(左)とWOLF GOLD 55gr FMJ(右)
WOLFブランドながら台湾製だ。つくりは悪くない

 

Geissele Super Dutyの精度テストでは、このシューティングスタンドを使用した


 まずは精度テストだ。100ヤードから5発を撃ち、内1発はフライヤーとして残り4発のグルーピングを計測した。まずは期待を込めてWOLF Goldをロードする。ウルフといえばロシア製の廉価版スチールケースが有名だが、このゴールドシリーズはブラス(真鍮)ケースでリロード可能なMade in Taiwanなのだ。相性のいいライフルだと1MOAも楽勝で、値段の割には侮れない実力を持っている。

 

矢印の部分に薄っすらとターゲットが見える。6倍スコープがありがたい

 

 ただし今回はそれほど振るわず、万遍なく散って1.75インチ(約45mm)のグルーピングとなった。しかしGOLD DOTの方は期待を裏切らず、4発のベストグルーピングは、なんと7/8インチ(約22mm)に収まってしまった。11.5インチバレルである。

 

WOLF GOLDのグルーピング。万遍なく散って1.75インチ(約45mm)という結果に終わった

 

Speer GOLD DOTは右下の1発を除くと7/8インチ(約22mm)という11.5インチバレルとしては素晴らしい結果を残した。500ヤードでも狙える精度だ

 

 そして何よりも驚いたのは、その撃ち易さだ。

 まず、AR-15の定番であるバッファースプリングの共鳴音が極小なのだ。これは撃つ度に重量のあるバッファーが高速で、それも耳元のバッファーチューブ内で前後するため、スプリングが共鳴してなんとも耳障りな“ジョワ~ン”というスプリング音が出てしまうのだ、これはいろんなチューン法があり、スペーサーを入れてスプリングのテンションや長さを変えたり、バッファーの長さや重さを変えたりすれば、いくらかの効果がある。

 

この個体のトリガープルは、ファーストステージが3ポンド(約1.36kg)ほど、セカンドステージが1ポンド(約0.45kg)強でハンマーが落ちた。慣れるほどに撃ち易くなってくる

 

 しかしこのスーパーデューティではストックの状態で、この音がほとんど聞こえないのだ。その理由はガイズリー社が“スーパー42”と呼ぶスプリングと、タングステンのウエイトが3個入ったH3バッファーの効果によるものだ。スーパー42というのはスタンダードな一重スプリングと違い、3本の細いばね材をロープ状に束ねたものをスプリングにしている。SIG社のP226や古くはドイツのMG42マシンガン等のリコイルスプリングに見られる形状だ。スーパーデューティではモデルによってこのスプリングやバッファーを組み合わせて作動の確実性を向上させるとともに、あの耳障りな雑音も消してしまったという訳だ。

 

それほどARを撃ち込んでいない私の息子でも、20ヤードまでならスタンディングでシルエットサイズのターゲットなら外さないほどの撃ち易さだ

 

 次に、11.5インチバレルに敬意を表して、近距離における複数ターゲットにおけるドリルも行ってみる。10、15、20ヤードの距離にターゲットを立て、それぞれダブルタップを撃ち込んでみる。驚いたのは、そのコントロールのし易さだ。カービンレングスガスシステムの11.5インチバレル、そしてなんといってもマズルにはA2バードケージのフラッシュハイダーが付いているのみなのだ。こいつに効き目の高いマズルブレーキを装着したらどうなってしまうのだろう。場合によってはコンプが効きすぎる(発射時にマズルが下に抑えられてしまう)可能性もありそうだ。

 

エンプティケースが飛び出た瞬間だから、リコイル的には一番きついはずだが、この程度のブレでしかない

 

 ひとつ気に入ってしまったのは、“エアボーンチャージングハンドル”の操作性の高さだ。大き過ぎないウイングの指に当たる面には微妙なチェッカリングが切られており、1本指での操作も確実にこなすことができる。またサプレッサー使用時に発射ガスの吹き戻しが顔にかかるのを防いでくれる後部リブの存在は、使う前からその効果が期待できる形状をしている。

 

コンパクトなサイズに、明るくクリスプな視野を持つ1- 6倍スコープ。ドットが暗いのが玉にキズだが、セルフプロテクション用としてのポテンシャルは高い

 

友人のPDで採用されている“CRYE PRECISION AIRFRAME ATX”ヘルメットはIIIAバリスティックスペックを持つ。.44マグナムまでならストップしてくれる性能だ。元はタンカラーだったが、ハイドロディップ(水圧転写)でブラックマルチカムに変身した。ハイドロディップによるヘルメットへの転写は大正解だろう。それなりの強度もありそうだ


 結論からいうと、初めてPDのレンジで実物を見せてもらった際に、そのフィット& フィニッシュやカチッとした操作感に好感を持ったが、実際に撃ってみたら本当に気に入ってしまった。叶うことならば、この11.5インチバレルにしたいところだが、私は一般人なので14.5インチバレルにマズルブレーキをピン止めして銃身長16インチにしたものを、切に希望したい。う~ん、やはりアリゾナ州に引っ越しするしかないのであろうか。

 

Photo&Text:Hiro Soga

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2020年8月号に掲載したものです。

 

※当サイトで掲示している情報、文章、及び画像等の著作権は、当社及び権利を持つ情報提供者に帰属します。無断転載・複製などは著作権法違反(複製権、公衆送信権の侵害)に当たり、法令により罰せられることがございますので、ご遠慮いただきますようお願い申し上げます。

Twitter

RELATED NEWS 関連記事

×
×