実銃

2023/02/07

【実銃】カーボンシャーシ+レミントン700の実力と元海兵隊の射撃テクニックに迫る!【後編】

 

XLR Rifle Chassis System
Remington 700 .308 Win

 

 


前編はこちら

 

【実銃】高いポテンシャルを持つカーボンシャーシシステム+

レミントン700の魅力!【前編】


 

実射

 

 今回の実射は、すべてヴィクター任せで、撮影だけさせてもらった。このテストライフルは、まだでき上がったばかりで1発も撃っていない。使用アモは、LAPDのデューティアモであるフェデラルの168grゴールドメダル シエラマッチキングBTHPだ。サイトインはいつも使うレーザーボアサイトキットを持ってきていなかったので、50ヤードで数発を撃ち、大体の着弾を見たうえで100ヤードサイトインを行なった。

 

 スコープはSIG SIERRA 3B DX3.5-10×42mmという新しくBDX(バリスティック データ エクスチェンジ)というシステムを組み込んだもので、SIG社のKILOレンジファインダーと組み合わせて使うと、スマートフォンにダウンロードしたアプリケーションを通して両者が通信して距離の違いによる正しいホールドオーバーを教えてくれるというものだ。

 

 具体的には正しい狙点をスコープ内のドットが点灯して教えてくれる。その点灯したドットにターゲットを合わせれば正確な弾道補正ができるというものだ。スコープ自体はSIG社がテスト用としてヴィクターに送ってくれたものだが、レンジファインダーがまだ届いていないので、機能テスト待ちという状態だ。

 

まだ1発も撃っていない状態だったので、まずは5ヤードに数発撃ち込んで、大体の着弾点を掴んでおく

 

LAPDデューティアモであるフェデラルの168grゴールドメダルシエラマッチキングBTHP(Boat Tail Hollow Point:ボートテイルホローポイント)。今回抜群の精度を見せてくれた

 

50ヤードでのターゲット。1発目が12時方向、残りはやや左に逸れて集弾している


 サイトインそのものは初めてのスコープということで、いつもより数発多い10発ほどで完了した。その経緯は写真をご覧いただきたい。

 

 そしていよいよ100ヤードによるアキュラシーテストだ。3発目を撃った瞬間、スポッティングスコープでポインターを務めていたジムが「おおー」と声をあげた。なんと3発がエッジをタッチした状態で着弾しているというのだ。Center to center(センタートゥセンター)を測ってみると5/8インチ(約16mm)しかないではないか。

 

ライフルはまったく動かさずにボルトを操作するヴィクター。ターゲットとその周りの状況を両目で見たままだ

 

これが各ターゲットの見え具合だ。手前が50ヤード、その奥が100ヤードとなる。このレンジではほぼ毎日LAPDのオフィサーがトレーニングしている

 

フェデラルの168gr ゴールドメダル シエラマッチキングBTHPによる100ヤードアキュラシーテストは、3発のcenter to centerで5/8インチ(約16mm)だった。基本はストック(標準)のレミントン700なので、この結果は素晴らしいといえる

 

「今日はこれまでにしておこう。あとのビアが旨くなる。後日撃ち込んでみて、結果が変わるようなら報せるよ」
 ということになった。同感である。ほぼストックのライフル(ほぼノーマルのライフル)で、5/8インチのアキュラシーなのだから、これは乾杯モノである。

 

 ついでといっては何だが、私も1マガジン撃たせてもらった。アクションはチューンされているだけあってスムーズで、ボルトのリリースも滑らかそのものだ。トリガーはTimney(ティムニー)社のアジャスタブル2ステージが組んであるので、文句なしの軽さと引き心地を持っている。

 

 SIG SIERRA 3BDX 3.5-10×42mm スコープはレンズの明るさやクリア感はまずまずだが、BDXシステムをドットに反映する関係上、レティクルが太いというか、繊細さに欠ける。まあ倍率が倍率だけに大きな問題にはならないが、いわゆるハンティング向け、ということになるだろう。

 

これがボディアーマーを付けない軽装時の装備だ。チェストリグには5連マガジンが3個、ハンドガンマガジ2本、無線、救急キットを装備している

 

これもボディアーマーを使用しなくてもいい場合の装備だ。彼のデューティガンであるSTI2011とスペアマガジン2個、その後ろにはライフル用の5連マグが2個収まっている

 

 リコイルはPrecision Armament(プレシジョンアーマメント)社のM11マズルブレイクを装着してあるのでマイルドかつストレートなもので、ルックスは少々大げさだが、確かにその効能は果たしている。

 

 同じくPrecision Armamentのオーバーサイズボルトノブは表面に適度なチェッカーが彫ってあり、その形状と相まってスムーズなボルト操作を約束してくれている。これはもう上等なスナイパーライフルである。トータルで2,000ドル以下(スコープ除く)で、サブMOAのスナイパーライフルが仕上がってしまったのだ。

 

 今回は気を良くしたヴィクターに、スカウトスナイパー仕込みの射撃ポジションを披露してもらったのでここに紹介しておきたい。要はいかに周りの環境を利用してライフルを固定するかというテクニックなのだが、さすがにベテランのインストラクターであるヴィクターは、次から次へと思いもよらないポジションを見せてくれる。

 


 

Bipod

 

靴のくぼんだ部分を使ってバイポッドを固定させる“撃ち降ろし”のシッティングポジション。一見腰が曲がってしんどそうだが、撃ち降ろしなので安定したポジションが取れる

 

撃ち降ろしのポジションがよく解る

 

 今回特にのけぞってしまったのは、横板にバイポッドを挟み、ねじるように固定するニーリングもしくはシッティングポジションだ。

 

 バイポッドは、据え置くだけだとどうしても置いた場所の安定度に左右されてしまう。ところがバイポッドで挟んでひねると、ライフルと板の両方が安定し、的確な1発を自信を持って撃ち込むことができるのだ。これは実際にやってみないと判っていただくのが難しいかもしれないが、この安定感には思わず拍手してしまったほどだった。

 

これがバイポッド挟みシッティングポジションだ。バイポッドを斜めに挟みひねっているために、ライフルはがっちり固定している。安定しているので、長時間このままの姿勢で待機していることができる。見せてもらって初めて納得できる優れたポジションだ

 

これも身近にあるものを利用して、必要な高さにライフルを安定させるテクニック。右ひざも固定要素としてがっちり使っている

 

ギリースーツで擬装した訓練中のヴィクター。本物だ

 

これは膝を使って撃ち上げるポジションだ。バット部分は完全に肩から外してリコイルに備えている。左腕のレストとバイポッドによるホールドが絶妙だ

 

ちょっとした木の窪みに片方のバイポッドを押し付けて動かないようにするとともに、腰も低くして安定を図る。トリガーをバット方向に真っ直ぐ引くために、右手親指はライフルの右側に沿うように固定するのがよい。グリップをがっちり握ってしまうと、トリガーを斜めに引くことになってしまうためライフルが動いてしまうのと、トリガーシステムに負担がかかり、通常と違った切れ方をしてしまう場合があるからだ

 

 他にもバリケードには直接重量をかけて固定させる場合と、自分の身体ができるだけ敵から見えないように、バリケードから距離をとって、露出を最低限にすべき場合など、貴重なテクニックを沢山撮らせてもらったので、是非実際に試してもらえると違いのわかるシューターになってもらえるのではなかろうか。細かくはそれぞれの写真を追っていただきたい。

 

シューティングバッグを携帯できるバギーでのパトロールだと、このようなライフルレストも一瞬でセットして利用する。ポジションに入るまでの動作が計算し尽くされているのだ

 

 

とにかく低く、自分の投影面積が小さくなるよう意識する。その場にあるものは最大限利用すると同時に、ライフルを安定させるためには全身のパーツを有効に使う。この左手の人差し指にはかなりの力が入っている

 

これはライフルを固定させるものがない場合、自分の身体を使ってできる限りの安定ポジションをとるというもの。左腕は膝先を抱き込み右手首を握りしめることによって筋肉を硬化させ、安定したプラットフォームを作っている

 


 

Sling

 

これはスリングを膝に巻いてライフルを固定するテクニック。膝をスリングのアンカーポイントに強く押しつけている

 

 

スリングを使ったライフルの固定テクニック。横の柱にスリングを巻いている。これが驚くほど安定するのだ。ヴィクターはスリングの片側を外してこのポジションを完成するまでに、モノの10秒も掛かっていない。訓練され尽くした動作なのだ

 

 

片方のアタッチポイントだけを使って固定させている。要は結び付けているのだ

 

こちらは4輪バギーでパトロール中に取りやすいポジション。低く構えられるので、自分のポジションが気取られにくいという利点がある

 

柱、もしくは木、壁などに突起がある場合に素早くとれる安定したボジションがこれだ

 

これは緊急時にスリングを使ってライフルを固定させるテクニック

 

スリングを強く握って引き、左手首で固定させている。短時間なら安定のポジションだ

 

Photo&Text:Hiro Soga

 

この記事は月刊ガンプロフェッショナルズ2021年1月号 P.62-75をもとに再編集したものです。

 

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