ミリタリー

2022/11/13

【取材レポート】RIMPAC2022にて目撃した米軍注目兵器

 

 太平洋に面した国々が集まって行なわれる軍事演習「リムパック(RIMPAC)」。今回はそのリムパックの中で目を引いた兵器を紹介しよう。

 


 

無人偵察攻撃機

MQ-9リーパー

 

機体の特徴は、後部にプロペラを配置した独特の推進方式(プッシャー式)を採用したことで、機首部分をセンサーに使えるようになった。翼の下にミサイルや爆弾を搭載して戦う

 

 米空軍が運用する無人偵察攻撃機MQ-9リーパー。偵察任務だけでなく攻撃も行なえる多目的機であり、その汎用性の高さからすでに幾多の実戦に投入されてきた。そして、「リムパック」への参加は今回が初めてとなる。
 ニックネームの「リーパー」を直訳すると「刈り取り機」となる。だが、真意はこれではなく、巨大な鎌状の武器を持ち、頭から全身を黒いローブで覆った骸骨である「グリム・リーパー」に因んでいる。ハロウィン仮装の定番であり、日本では「死神」と言えば、この姿を連想される方も多いのではないだろうか。
 MQ-1「プレデター」の後継として、1990年代末より開発計画がスタートし、当初は「プレデターB」と呼ばれていた。2007年より米空軍へと配備が開始され、早速アフガニスタンやイラクで活躍している。
 全長約11m、滞空時間は32時間。時速約400kmで移動し、1万5千メートル上空から偵察を行なう。必要とあれば、翼の下にある6カ所のハードポイントに対地攻撃ミサイル「ヘルファイア」などを搭載し、地上攻撃を行なう。そこで、すでに、米空軍ではF-16戦闘機を運用していた部隊をMQ-9部隊へと改編するなど、有人機から無人機への流れができつつある。
 任務においては、操縦手とセンサー員の2名が基地から遠隔操縦する。距離は関係なく、太平洋横断なども何度も成し遂げている。今回リーパーは、実弾射撃を伴う対艦攻撃訓練に偵察機として投入。海上自衛隊のP-1哨戒機とともに目標捜索を行なった。標的艦となったのは、退役したドック型揚陸艦「デンバー」だ。MQ-9の情報をもとに米海軍艦艇等が射撃を行ない、見事撃沈した。

 

大きなふくらみ部分には、衛星通信用のパラボラアンテナが収納されている

 

飛行中のMQ-9リーパーの姿。音はほとんど聞こえない。今回は米海兵隊カネオヘ基地に展開し、主として対艦攻撃任務の一翼を担っていた

 

ミサイル駆逐艦

ズムウォルト級

 

DDG-1001マイケル・モンスーアは2016年6月21日に進水し、2019年1月26日に就役。これほど巨大な艦ではあるが、わずか140名の乗員で運用する。各機器のオート化、AI化により省人力化に成功した結果だ。AGS(62口径155mm砲)を2基、30mm機関砲を2基、80セルのMk57VLSにESSMやTLAM等のミサイルを搭載。さらに対潜ヘリを2機搭載できる

 

 トータル46隻の艦艇が参加した中で、とにかく異彩を放っていたのが、米海軍のミサイル駆逐艦「ズムウォルト」級だ。同級による「リムパック」参加は初めて。全部で3隻あり、今回は2番艦のDDG-1001マイケル・モンスーアが参加した。
ネームシップの「ズムウォルト」は、2016年10月15日に就役した。この艦の特徴は、なんといっても究極のステルス化を成し遂げた点にあろう。さらに満載排水量が約15,000トンと超巨大。本来ならば巡洋艦といってもよいサイズである。統合運用化したマルチドメインタスクフォースの中核として、対艦・対空の打撃力の強化、巡航ミサイルや弾道ミサイルなどの洋上発射基地たる能力、水陸両用戦における対地攻撃力など、とにかくあらゆるものを詰め込みすぎて巨大化してしまったとも言える。
 当初は30隻近い建造計画があったが、コスト高や戦術の見直しも相まって、24隻に削減。しかし、それでも議会や軍内部内に反発する勢力が多く、最終的に3隻で打ち止めとなってしまった。ただし、決して性能が劣っていたわけではなく、今回も敵の離島地域への着上陸侵攻阻止などいくつものミッションをこなした。
 その「マイケル・モンスーア」であるが、SEALsの隊員であったマイケル・モンスーア2等兵曹に因んで命名された。彼は2001年に米海軍に入隊し、その後SEALsへ。チーム3に所属し、主としてイラクでの任務に当たっていた。2006年9月26日、武装勢力との戦いの中で、敵が放った手りゅう弾から仲間を守るため、そのまま覆いかぶさった。結果彼は戦死してしまうが、その勇敢な行動を称えて名誉勲章を授与。さらに敬意を表して、ズムウォルト級2番艦の名前となっている。

 

艦橋となる上部構造物。ステルス性が考慮された船体形状のため、AN/SPY-3をはじめとするレーダーのアンテナやセンサーからマストまでもがのっぺりとした船体に埋め込まれている不思議な造形だ

 

艦橋内。モニターを多用した近代的な操舵席周り。なお、艦橋に隣接する形でCICがある。秘匿性が高く、艦内はほとんど撮影が許可されなかった

 

艦内には、モンスーア2等兵曹を称えるブースが置かれ、彼が生前被っていた帽子などが展示されている

 

Text & Photos : 菊池雅之

 

この記事は月刊アームズマガジン2022年11月号 P.154~157をもとに再編集したものです。

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