実銃

2022/10/09

【実銃】B&T新製品を実射できるイベント「B&T Police Day」

 

B&T Police Day

 

 コロナ禍で予定が多少変更になったものの、毎年6月にスイスのトゥーン市において、B&Tが主催するポリスデーが開催される。ポリスデーとはB&Tが毎年関係者(政府、軍・法規執行官等)を招待し、新製品を紹介するイベントである。関係者にとっては新製品を実際に手に取って実射できる機会であると同時に、貴重な情報交換の場でもある。今回はその模様をレポートしたい。

 

 

B&Tポリスデー

 

 B&Tポリスデーは、B&Tの本社があるスイス・トゥーン市で行なわれる。誰でも参加できるわけではなく、招待客は政府、軍・法規執行機関等の関係者のみで、飛び入り参加は不可。事前に厳格な審査が行なわれ、パスした者のみが参加できる。もちろん正式な手続きの手順さえ踏めば、日本からでも参加は可能である。今回は紹介された製品のいくつかを紹介する。

 

  • 9mm口径SQDサプレッサー


 HK MP5、B&T APC-9、B&T SPC-9等、銃口にトライラグがある9mm口径のサブマシンガン用サプレッサー。クイック・デタッチメント方式で、片手で瞬時に取り付け・取り外しができる。

 

B&Tの新製品、9mmサブマシンガン用のSQD(Super Quick Disconnect)サプレッサー。特徴としては最速で脱着(片手で)が可能な点と、ガスブローバック(ガスの吹き戻し)を最小に抑えられる点だ。トライラグなので、APC-9シリーズだけでなく、旧式のMP5にも装着可能である。フルサイズとコンパクトの2種類が用意されているので、用途に応じてユーザーが選択すればよい

 

  • APC-9 SD-C/PRO


 HK MP5SDの後継機種ともいえるAPC-9 SDモデルのコンパクトバージョン。常備されているサプレッサーを切り詰め、取り回しを優先した。エンジニアリング中に問題があり、試行錯誤の結果、ようやく完成した。

 

APC-9 SD-C/PRO。CはコンパクトのC。通常サイズのSDモデルと比較して、常備サプレッサーの長さが切り詰められており、取り回しが容易だ

 

  • SPC(Special Purpose Carbine)-9

 

 ARプラットフォームとAPCプラットフォームのハイブリッドデザインのサブマシンガン。B&T製の通常マガジンとグロックのマガジンを使用するGモデルがある。銃身長も数種類あり、部隊は必要に応じた最善のセットアップを選択できる。

 

9mm口径のサブマシンガン、SPC-9(Special Purpose Carbine)。B&TにはAPC-9シリーズ9mm口径のサブマシンガンとして存在するが、SPC-9はAPC-9に取って代わる物ではない。ARプラットフォームに慣れている機関向けにハイブリッドな操作性を提供している。具体的にいうと、チャージングハンドルが2種類付いており、MP5/ARどちらに慣れた射手が手にしても、違和感なく使用できる利点がある

 

SPC-9にはサプレッサーを常備したモデルも存在する。それがこのSPC-9 SDだ。APC-9 SDと同じコンセプトであり、ヘッケラー&コックMP5SDと同じ役割を担う

 

  • KH-9 Covert(隠密作戦用サブマシンガン)

 

 コバートオペレーション用の特殊銃を設計するのはB&Tの十八番だが、その最新モデルがこのKH-9コバートである。もっとも注目すべき機能は、ピストルグリップとマグウェルがどちらも90度の位置に折り畳むことができる点だ。これにより、KH9のロープロファイルで目立たないデザインがさらにコンパクトになり、保管と輸送に場所を取らず、隠密作戦に適している。ピストルグリップとマグウェルは素早く90度回転し、即座に射撃が可能である。弾薬を装填したマガジンが入ったままマグウェルを90度回転させ、チャージングハンドルを操作するだけで初弾がチャンバーに装填される。マガジンはB&T製9mmマガジン(MP9/TP9/APC9/P26/KH9/GHM9の全モデルと共有)を使用できるが、KH9コバート用に25発のマガジンが開発された。30発マガジンだと折りたたんだ状態で長すぎたためである。もちろん他のサイズ(30発/20発/15発)のマガジンも使用可能だ。

 

B&Tの試作品、KH9-C。CはCovert(隠密作戦)のC。グリップとマガジンが折り畳め、狭い場所に収納可能なデザインとなっている。当然、一般販売はされていない

 

グリップはこのように後方に折り畳むことができる

 

 KH9コバートのもう1つの特徴は、その安全性とトリガーシステムにある。セーフティレバーはデコッカーとして機能し、トリガーはDA/SAのセットアップを備えている。ご存じの通り、この機能は通常、拳銃に搭載される機能であり、長物では非常に珍しい。
 KH-9コバートはフォールディング式デザインと独自のトリガーシステムに加えて、光学サイトを取り付けるためのトップマウント・ピカティニーレール、タクティカルライト/レーザー用のボトムマウント・ピカティニーレール、Tri-サプレッサーと一緒に使用するための銃口のトライラグアダプターといったKH-9の通常モデルと同じ機能が そのまま付属してくる。ストックは伸縮式ストックが標準装備だが、その他のストックももちろん使用可能だ。だがコバートモデルの正確性から、他のストックは必要ないと筆者は考える。

 

マグウェルもマガジンを差し込んだまま、前方に折り畳むことができる。この状態からストックを伸ばし、グリップとマガジンを元の位置に戻し、チャージングハンドルを引いて薬室に初弾を装填し、発射するまで、慣れれば4~5秒程度でできるようになる

 

銃身は完全なフリーフロート。そして銃口にはMP5と共通規格のトライラグがある。これにより、MP5やAPC-9に使用されるサプレッサーをそのまま使用できる。この相互運用の利点は大きい。写真のデモモデルには上部レールにライトが装着されているが、これはあくまでデモであり、筆者はこのセットアップはお薦めしない

 

まとめ

 

 筆者が何度も書いていることだが、B&Tは長年にわたりグロック、FNH、H&Kなどにサプレッサーや他のパーツをOEM生産・供給してきた。したがってその品質はトップクオリティの域にある。会社経営を考えればOEM生産だけしていれば経営は安定し、楽である。だが社長のカール・ブルッガー氏はチャレンジ精神が旺盛で独創的な性格なので、今後もアッと驚くような新製品を開発し、ファンを喜ばせてくれそうだ。

 月刊アームズマガジン2022年10月号ではより詳しくB&T Police Dayで登場した新製品について解説している。気になっている方はそちらも参考にしていただければ幸いだ。

 

TEXT:飯柴智亮

PHOTO:飯柴智亮、B&T AG

 

この記事は月刊アームズマガジン2022年10月号 P.210~215をもとに再編集したものです。

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