2022/08/21
【実銃】プライベートレンジで実射した「B&T SPR300」の実力
近距離特化のスナイパーライフル
B&T SPR300は法執行機関のスナイパー向けに、限りなく静かな発射音と高い携帯性を実現すべく開発された。今回はそのライフルの実射レポートを公開し、その魅力をお伝えしよう。
実射でその高い能力の一端を知る
.300AAC Blackoutには一般的な小銃弾であるスーパーソニック弾(超音速:弾頭スピードが音速を超える)に加えサブソニック弾(亜音速:弾頭重量を上げ弾頭スピードが音速を超えず、サプレッサーの消音効果を高め貫通力も向上)があるのも特徴で、根強い人気の要因のひとつになっている。弾頭は音速を超える際に衝撃波とそれに伴う大音響を発生させるが、亜音速ならば衝撃波は発生せずサプレッサーの消音効果をより高めることができるというわけだ。今回の実射では通常の精度テストに加えこの2種類の弾薬を用意し、それぞれの違いを探ってみることにした。
ただし、読者の皆様には申し訳ないのだが、米カリフォルニア州で施行された新レギュレーションによる弾薬購入時の手続きがらみで、種類によってはガンショップで入手できるアモが限られ、用意できたのはスーパーソニック弾がFIOCCHIの150グレインFMJ BT(1,925ftps)、サブソニック弾がSPR300のオーナーであるエレンのロードによる220グレイン TMJ(950ftps)の2種類のみ。また、使用するプライベートレンジが小ぶりなため少々短めの75ヤード(最長距離)でのテストとなっている。
今回のSPR300はまったくの新品なので、まずはサイトインからスタートする。スコープはVORTEXのVIPER PST 5-25×50mmである。また、サプレッサー装着時の音量計測には、参考までにスマートフォンのアプリである“Decibel X”を使用した。正確さを求めるなら複数のサウンドメーターを多方向からセットアップし、反射音を除いた音源を綿密に精査するべきだろうが、まあ目安だと思っていただければ幸いである。
相性の良い弾頭との組み合わせで実力を発揮
今回のテストでは、各アモについて「75ヤードから5発の集弾性能」「サプレッサー装着時と脱着時の着弾点の変化」「サプレッサー装着時と脱着時の音量の変化」について計測してみた。
SPR300の撃ち心地はスウィートだ。リコイルは5.56mmよりややきつい程度でしかない。特にサブソニック弾では220グレインという重量級弾頭ながら、サプレッサーを装着しているとマズルライズはほとんど感じられない。
だが、テストをしているとどうしても精度的に理解不可能な結果が出てしまう。1インチ以下の集弾を見せたFIOCCHI 150グレインFMJ BTが、突如2インチ以上に散らばってしまうのだ。オーナーのエレン・ダンストによると「両方のアモで似たような症状が起きるから、スコープの不良かもしれないね。今度は精度に定評のあるシエラの弾頭を使って、いくつかのリロードを作ってテストしてみよう」ということで、精度テストは後日やり直し、ということになった。
今回のB&T SPR300は、カリフォルニアに住むシビリアン(一般人)である私には合法的に所有できないという理由で、やや遠い存在だ。精度的な結論は今後のテストに委ねられるが、相性のいい弾頭を見つけられれば、300ヤードほどまでは問題ない精度が得られるのではと予感している。
各部の作り込みにも好感が持てるが、リテールプライスが5,500ドルというのは、考えさせられてしまう額ではある。個人的にはこの.300AAC BlackoutのAR15スタイルセミオートライフルの方に大いなる興味があり、もし州外に移住することができたならこれとSPR300の両方とも手に入れたい! と夢想する今日この頃であった。
Text & Photos:Hiro Soga
この記事は月刊アームズマガジン2022年8月号 P.130~137をもとに再編集したものです。