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2022/05/20

リーアム・ニーソンが元海兵隊の凄腕スナイパーに! アメリカ版子連れ狼!? 『マークスマン』から人生を学ぶ!

 

最強の親父、今度はメキシコの麻薬カルテルと揉める

 

 守るべきものに危険が差し迫ったとき、自分の命をかけて戦うことができる人はどれだけいるだろうか。家族や友人、大切な人のためならば戦うことができるという人は多いかもしれない。だがもし、それが不法移民の子供を守るためだったらどうだろうか?

 我が身を投げ出し、漢としてどう生きるか?混迷を極める時代に生きる者たちへ訴えかける映画がある。リーアム・ニーソン主演『マークスマン』、その見どころを今回は紹介しよう。

 

 

 


 

■『マークスマン』あらすじ

 

 元海兵隊の選抜射手であったジム・ハンソン(リーアム・ニーソン)は妻に先立たれ、今はメキシコ国境付近にある町で牧場を営み、愛犬と共に暮らしていた。ジムの妻は生前に大病を患い、その治療費として膨大な借金をジムは抱えていた。ジムの牧場へやってきた銀行員の男は期日までに借金を返せない場合は担保にしている牧場は銀行のものとなると忠告した。ジムは金策に走るも、老いた孤独な男に膨大な借金をどうにかできる方法があるわけもなく、ただ悪戯に時間だけが過ぎていく。ジムは八方塞がりの現実を嘆きながら酒を飲み、泥酔して眠る日々を重ねていった。

 


 借金の返済期日が迫ったある日、ジムは国境パトロール中にメキシコカルテルの制裁(処刑)から逃れようと国境を越えてきた不法移民の母子に出会う。どうか見逃してほしいと大金を見せて懇願する母親に同情をしつつも、ジムは国境警備隊に親子を引き渡すことに決め無線機で応援を呼んだ。その時、メキシコ側の国境沿いにカルテルの殺し屋が乗る黒塗りのSUVが現れた。カルテルは母親と子供をこちらに寄越せと言い、ジムが断ると銃を抜いた。ジムもまた手に持っていたM14ライフルをカルテルの男に向けると国境を隔てるフェンス越しに激しい銃撃戦が始まった。

 

カルテルから必死で逃げてきた2人だが、母親は凶弾に倒れてしまう。11歳のミゲルはひとりぼっちになってしまった


 ジムは熟達した射撃でカルテルの殺し屋を退けた。だが、銃撃戦の最中に流れ弾を受けた母親は重傷を負い、シカゴへ住む親戚へ息子のミゲルを送り届けてくれとジムに託すとそのまま息を引き取った。ジムは母親の持っていた大金を報酬として貰う代わりにミゲルをシカゴまで連れていくことを決意し、2人はジムのトラックで遠く離れたシカゴの街を目指して長い旅を始めた。だが、それを追うためにカルテルの殺し屋たちもまた国境を越えて追跡を始めたのだった。

 



■映画『マークスマン』、題名の意味とは?

 

Photo by DOD
「ライフルによる射撃」を重視する海兵隊では隊員に求められる射撃精度の水準も高く設定されており、マークスマンになるのは比較的難しい

 

 題名でもある『マークスマン』とはアメリカ軍において600m以内の標的に素早く的確に射撃を行える優秀な射手のことを表す言葉である。マークスマンは600m以上の長距離狙撃を行なう狙撃手のような専門的な兵科ではなく、一般の隊員の中から射撃能力に優れた者を選び、特別な射撃訓練を修了した際に与えられる役職のようなものだ。マークスマンは分隊の中に1人配属され、DMRと呼ばれるスコープを装着したセミオートマチックライフルを装備しており、分隊行動の射撃支援を行なう。

 


 

■ジムが持つM14ライフルと海兵隊

 

M14セミオートマチックライフル 。ジムが愛用する大口径のライフルだ。1960年代にアメリカ軍で採用された軍用銃であり、現代でも改良モデルが少数使用されている


 主人公のジムは海兵隊に所属していた元軍人だ。物語中盤でジムが銃砲店にて買い物をする場面があり、慣れた手つきでライフルの動作をチェックするジムを見て店主が「元軍人か?」と聞く。ジムは「海兵隊でベトナムには2度行った」と答えることから彼がベトナム戦争(1955年~1975年)に従軍していたことがわかる。1960年代の海兵隊ではM14ライフルを制式採用小銃として使用しており、ジムがベトナムでもM14ライフルを手に戦っていたのは間違いないだろう。ジムは退役後もM14ライフルを自衛・狩猟用として使い続けており、物語序盤においてもスリングを使用した立射狙撃により牧場牛を襲ったコヨーテを1発で仕留めている。

 



■マークスマンとしてのこだわり

 

酒を飲みすぎるジムを娘のサラは心配している


 ジムは昔気質な人物だ。スマートフォンはおろか携帯電話すら持っておらず、車にはカーナビも付けていない。ホットスナックや冷凍食品は食べず、酒はウィスキーを愛飲する。娘のサラや不法移民の子供であるミゲルに最新の電子機器やレトルト食品を奨められても断っており、頑なに自分の価値観を貫いている。悪く言えば頑固な老人だ。

 そんなジムは自衛のために家からM14ライフルとM1911A1ハンドガンを持ち出しているのだが、シカゴへの向かう道中で2挺とも失ってしまう。代わりの銃を調達するためにジムは銃砲店で品定めをするのだが、最新のポリマーオートピストルやM-LOKハンドガードを備えたAR-15系ライフルが並ぶ中でジムが選んだのは中古のベレッタM92Fピストルとルガー ミニ14ライフルだった。現代の基準で考えるとやや時代遅れ感を否めない一昔前の銃を購入したジムだが、このチョイスにも彼自身の価値観がしっかりと反映されているのが面白い。

 

ベレッタM92Fオートマチックピストル。9mmパラベラム弾を使用するハンドガンであり、米軍が1985年から2017年まで制式採用拳銃として使用していた

 

 ベレッタM92Fは2017年まで米軍が制式採用していたハンドガンであり、軍用として30年以上使用され続けた実績と信頼性を持っている。ルガー ミニ14ライフルはジムが愛用していたM14ライフルの機関部設計を基に、使用弾薬を5.56mm×45弾に変更したM14ライフルの兄弟モデルともいえる銃だ。性能が高い最新モデルより、自分が慣れ親しみ、長い年月の中で信頼性を獲得した古い物を使うというジムの価値観がさりげなく表現された場面だ。

 

ジムはルガー ミニ14にショートスコープを装着している中古品を購入した

 



■ロバート・ロレンツ監督が描くハードな人間ドラマ

 

 メキシコカルテルから逃げるジムとミゲル。組織の命令により2人を消すために追うカルテルの殺し屋たち。この物語は単純な勧善懲悪の話ではない。クリント・イーストウッド主演作品などに長年携わったロバート・ロレンツが監督を務めた『マークスマン』ではさりげなく表現された登場人物の人間性も魅力のひとつだ。ジムやミゲルだけでなく、悪人であるカルテルの殺し屋たちにも人生があり、彼らの儚い夢や人間性も物語の中で描かれている。泥のように濁った眼をした殺し屋が、ふと見せる過去への後悔、持たざる者ゆえの羨望、この人間ドラマは見る者の心を揺さぶることだろう。

 

ジムとミゲルは過酷な旅を続ける。ミゲルの親戚が待つシカゴはまだ遠い……

 

TEXT:Tugaru Tarou

 

 

『マークスマン』商品情報

 

Blu-rayジャケット

 

DVDジャケット

 

DATA

  • 発売元:キノフィルムズ/木下グループ
  • 販売元:ハピネット・メディアマーケティング
  • 発売日:5月20日(金)
  • 価格:Blu-ray 5,280円、DVD 4,290円(ともに本体価格+税10%)
  • Blu-ray特典:映像特典 (約22分)

・メイキング

・インタビュー:リーアム・ニーソン
・劇場予告編(DVDにも収録)

※商品の仕様は変更となる可能性がございます。
※レンタル同日リリース

 


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