使い込んで傷だらけのエアガンを、よみがえらせたい。どうせなら、実銃のようなリアルさも出せたらいいな…。というわけで、アームズ編集部で使い込まれてヤレていた備品、東京マルイのガスブローバックガン「M92Fミリタリーモデル」を再生してみることにした。今回のポイントは各パーツの処理と塗装。できるだけ簡単にするため完全分解はせず、塗装も缶スプレー塗料を用いて仕上げてみよう。
WARNING!!
※トイガンの分解や塗装など、カスタム行為はすべて自己責任の上で行なってください。
※トイガンの分解を行なうとメーカーやショップの保証は受けられなくなりますのでご注意ください。
BEFORE

使い込まれてヤレた感じのアームズ編集部備品、東京マルイM92Fミリタリーモデル(再生前)。ベテランながら現役のロングセラーアイテムで、性能も申し分なし。愛用されている方も多いのではないだろうか? レバー類のエッジが擦れていい感じにも思えるが、そのせいで金属パーツと樹脂パーツの差がはっきり出てしまった(実銃はグリップ以外ほぼ金属)。また、リアルさを出すため、スライドやフレームに残るパーティングライン(樹脂や亜鉛ダイキャストパーツの成型時にできる分割線)もできれば消したい。これは実銃の削り出し金属部品などには存在しないためだ(ちなみに、最近のトイガン製品ではパーティングラインが処理されていることが多い)。
AFTER

こちらが今回の作業で再生されたM92Fミリタリーモデル。各部がリフレッシュされただけでなく、各部を塗り分けたことで、最近のトイガン製品と同等、あるいはそれ以上にリアルな雰囲気を出すことができた。
BERETTA M9 REAL GUN
Photo:SHIN
Photo:SHIN
こちらは塗装の参考にしたベレッタM9の実銃写真。フレームはアルミ製で、スライドとバレルはスチール製。さらに表面処理が異なるため、同じ黒でもフレームとスライド、バレル、各レバー類と微妙に色合いが異なるのがお分かりいただけるだろうか。今回はリアル感を出すため、塗料を使い分けてこの色合いの違いを再現してみた。
再生作業のポイント
今回はなるべく手軽に作業を実施することを目標としている。そこで、今回の作業のポイントを書き出してみた。
- 作業しやすいようにある程度分解する
- 各部のパーティングラインをヤスリがけして消す
- 下地塗装してから異なる2種類のブラックをスプレー塗装
- 細部を塗り分けて仕上げる
M92Fミリタリーの分解手順
トイガンの場合は極力分解してしっかり洗浄し、パーツごとに塗装するのが理想的だが、手間と技術が必要だ。今回は部分的にマスキング(塗料をかけたくない部分をカバーしておく方法)を用いるので、分解は必要なところまで。なるべく簡単にやりたい。
フレーム右側のディスアッセンブリーボタンを押しながら、左側のディスアッセンブリーレバーを下げる
スライドを前方に押し出してフレームから外す
スライドからリコイルスプリングガイド&リコイルスプリングを外す
バレルガイドを外す。前方に小さな樹脂製のパーツが収まっているので、紛失に注意
バレルアッセンブリーを外す。今回はスライドの分解はここまで
続いてフレームを分解していく。まずは左右のグリップスクリューを外し、グリップパネルを外していく
両側のグリップパネルを外した状態。フレーム右側にトリガーバーがあり、トリガーバースプリングがかかっている
トリガーバースプリングは飛ばして紛失しやすいので、マスキングテープなどで止めておくといい
フレーム右側からスライドストップ&スライドストップスプリング(※これも紛失注意)を外す
スライドストップスプリングは写真のように付いている
戻す際は細い棒で突起を軽く押し込んでやるとスムーズにいく
ディスアッセンブリーボタンを押しながらディスアッセンブリーレバーを回して固定を解除する
ボタン・レバーともにフレームから抜き出す
マガジンキャッチボタンを取り外す
もっと分解することもできるがこれ以上は組み立てや調整が大変になるので、今回塗装のための分解はここまでとした
ヤスリを用意する
これからパーティングラインを消していくためにいくつかのヤスリを用意した。
スティックヤスリは板にサンドペーパーが貼り付けられた便利アイテム(#400と#600を使用)
棒ヤスリは模型用の平ヤスリや目立てヤスリなどを使用
スポンジヤスリは柔軟性があり曲面の処理に便利(#240と#400と#800を使用)
パーティングラインの処理
先に指摘したパーティングラインを、ヤスリがけして消していこう。パーツの形状や大きさに応じて適宜ヤスリを使い分けて作業していく。
まずはスライド中央のパーティングラインを#600のスティックヤスリで消していく。平らな面はヤスリを往復させないで一方向から押すようにしよう
細かな部分のパーティングラインは通常のヤスリでは処理しきれないので、
カッターナイフでカンナをかけるように削ったり
先端の細いスティックヤスリを使うなどして臨機応変に仕上げよう
マズル周りはヒケがあると目立つので、大きな平ヤスリ(スティックヤスリならハード)で平面を出そう
まず粗目の番手で面を出してから徐々に目を細かくしてヤスリ傷を消すようにするとよい
エッジ部分の面取りは幅がだいたい一定になるように注意してゆっくり仕上げる。側面にカエリが出たらこれも削り落とす
アウターバレルのパーティングラインは最初に平ヤスリで削り落とす
この時削ったところが平面になってしまうので曲面を再生するように柔軟性のあるスポンジヤスリで整える
ここでも粗目→細目の順に、最後は巻きつけるようにして仕上げる
マズルクラウン周りにも成型の都合で不自然なエッジがあったので、スポンジヤスリで処理した
フレームのパーティングラインもアウターバレルと同様に最初に粗目の平ヤスリで削り落としてから、スポンジヤスリで曲面を再生した
トリガーガード前部の滑り止めセレーションにもパーティングラインがあるので、溝に沿って目立てヤスリなどで削り落とそう
溝の幅はできるだけ一定になるように注意。スジ彫り用のタガネなどを使ってもいいかもしれない
グリップ底部のマガジンウェルやランヤードリングのパーティングラインをヤスリスティックや棒ヤスリで削る
リングの内側は丸棒ヤスリが便利(今回は用意していなかった)
グリップ周りのようにR(曲面)のきつい部分のパーティングラインは半丸や丸棒ヤスリが便利だが、最初からスポンジヤスリで削ってもいいだろう
スライドにモールドされたエキストラクター部分を別パーツのように見せたいので開口部のところにカッターでスジ彫りを追加した。変な方向に彫らないようにだけ注意したい
リコイルスプリングガイドは金属製だが鋳物なのでパーティングラインがある。金属用の平ヤスリで、平らにならないよう注意しながら処理しよう
黒染めは一部だけ残しても仕方ないので全部削り落とした
これで気になるパーティングラインはすべて処理できた。細かいところではあるが、こういった部分までこだわると完成時にぐんとリアリティが増すのでお試しあれ。
さて、次回はいよいよ本命の塗装に入っていく。缶スプレーを用いたお手軽塗装でどこまでベレッタが再生できるのか? お見逃しなく。

塗装編はこちら
この記事は月刊アームズマガジン2022年1月号 P.62~69より加筆・再編集したものです。