実銃

2021/10/14

【実銃】グロックをカービン化するIGB製カービンキット

 

アメリカの需要に応えるカスタムパーツメーカー

 

 カスタムバレルメーカー「IGB AUSTRIA」は手軽ながらに高性能なパーツを提供し、アメリカで注目を集めている。その理由としてはアメリカにおける需要を大いに満たしている部分があるからだ。今回はその理由に触れつつ、メーカーが開発した画期的なカービンキットを紹介したレポートを公開しよう。

 

GLOCK17 Gen4 with IGB .22 CONVERSION KITのレポートはこちら

 

CZ P-09 JUNIOR CUSTOMのレポートはこちら

 


 

アメリカの需要にマッチしたロングバレル

 

 これまでIGB製のカスタムバレルを組み込んだグロック、CZ-09を紹介してきたが、何故このカスタムバレルがアメリカで注目を浴びているのか。その理由の1つはアメリカの銃事情にある。

 実はアメリカではピストルにストックやRONI、KIDONといったカービンスタイルへのコンバージョンキットをそのまま装着するには許可が必要ということがある。これはストック付きのピストルは「銃身長が16インチ以下のライフル」とみなされるからで、申請には250ドルの費用がかかるという。しかしそれ以下の値段で手に入るロングバレルを装着すれば「16インチ以上の銃身長を持つ銃」すなわちライフルとみなれ、申請は必要ない。それにストックやコンバージョンキットを装着するなら、ロングバレルの方が見た目のバランスも性能もアップすることもあり需要が急増。現在工場をフル稼働しても生産が追い付かないほどだそうだ。

 

IGBが開発中の.22口径コンバージョンキットが組み込まれたグロック17。ガスピストンの補助により確実に作動する

 

 それではそのロングバレルを組み込んだグロックのカービンキットをご紹介しよう。

 


 

 

KIDON +Glock17 Gen5
ith IGB LONG BARREL

 

 イスラエルのIMIディフェンス製ピストルコンバージョンキットKIDONに、IGB製ロングバレル装備のグロック17 Gen5を組み込んだカービン。ノーマルバレル状態よりも見た目のバランスが取れているだけでなく、射程や命中精度も向上している。フラッシュハイダーもIGB製だ。ロングバレルに追加するとなかなかの重量になるが、サイクル低下や作動不良は起こらない。前述のとおり、アメリカではピストルにストックなどを取り付けるには別に許可証が必要で登録料もかかる。かといってライフルを買うのも予算が掛かり過ぎてしまう。だからこそ、ピストルをロングバレル化してライフル扱いにして予算を抑える方法がアメリカで人気なのだ。登録料よりも安価なこのバレルが選ばれるのも納得だろう。

 

専用のバレルカバーは射撃​​​​​​時にバレルが動くのを妨げることがないように、あるいは単純に熱から保護するためのものだ。さらに見た目もシブくなる

 

バレルのロッキングラグ部の形状を見直したことで、マズルに重量物があっても作動不良は皆無だ

 

IGBのバレルはステンレス材(写真下側)から削り出され、コーティングを施して仕上げる。工程はIGB社内で完結しており、小さいながらCNCマシンも数台稼働していて小さな工場とは思えない生産能力を持つ

 

 それではこのカービンキットを射撃場で実射させていただいた。このロングバレルはアメリカで一番人気とのことで、フラッシュハイダー付きで見た目にもインパクトがある。バレルの重量増による作動不良が懸念されたが、結論から言ってしまうと何の問題もなかった。射撃の度にバレルがぴょこぴょこと動くのも面白い。ラグの形状が変更されているとはいえティルト式であることに変わりはなく、1発撃つごとにバレルが傾く。しかもロングバレルになっているぶん、マズル部分の動きは激しく、それでもしっかり作動するあたり、さすがと言うほかない。

 

IGB製カービンバレルが組み込まれたKIDON+グロック17 Gen5。射撃の度にバレルがぴょこぴょこ跳ねるように動くのは、ティルトバレルが正常に作動している証拠だ

 

まとめ

 

 今回、IGBが手掛けたグロック、CZ-P09、カービンキットとカスタムされた製品を見てきたが、なるほど人気が出るのも頷ける。筆者が住むフランスではピストルをコンバージョンキットでカービン化するのに許可は不要な一方、バレルの交換には登録が必要と前述のアメリカの銃規制とは事情が異なる。IGBの主戦場があくまでもアメリカ市場である、というのも納得できた。今でこそバレルやスライドだけだが、近い将来にIGB独自のカスタムも広まっていくのかも知れない。

 以上のリアルガンレポートは月刊アームズマガジン2021年10月号で詳しく掲載されているので気になった方はそちらもチェックしていただければ幸いだ。

 

Text & Photos:櫻井朋成(Tomonari Sakurai)

Special Thanks to
IGB AUSTRIA : http://www.igbaustria.com
GIS Technologies : http://www.gistactical.com

 

この記事は月刊アームズマガジン2021年10月号 P.150~157より抜粋・再編集したものです。

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