2021/05/22
ドイツ軍、日本軍、イギリス軍の塹壕(小銃掩体)に迫る!【リエナクトメントのススメ vol.20】
月刊アームズマガジンにて連載の「リエナクトメントのススメ」。そこでは「リエナクトメント」を歴史的な事象の再現と定義し、テーマを第2次世界大戦としている。現在、世界中で第2次世界大戦をテーマとしたさまざまな「リエナクトメント」が行なわれているが、比較的参加しやすい国内のイベントを中心に紹介するとともに「リエナクトメント」の楽しさを伝えたいと考えている。
WEB版第20回では、前回に引き続き、2018年5月25日から27日に行なわれた、サムズミリタリ屋主催のイベント「MVG2018-ASAMA(WW2 Military Veagle & Game Event)」から、戦史研究クラブ「赤侍」とReenactmentGroup「BCo/100Bn」による共同企画「WW2各国歩兵小銃掩体~ざんごーExpo'18展示」をレポートする。
MVG2018 イベントレポート「WW2各国歩兵小銃掩体」~その3~
今回は、2018年5月25日から27日に行なわれた、サムズミリタリ屋主催のイベント「MVG2018-ASAMA(WW2 Military Veagle & Game Event)」において、戦史研究クラブ「赤侍」とReenactmentGroup「BCo/100Bn」が共同企画で開催した、「WW2各国歩兵小銃掩体~ざんごーExpo'18展示」に参加した、「ドイツ軍」「日本軍」「イギリス軍」の小銃掩体の各展示と、ドイツ軍のメンバーが行なった他の活動についても少し紹介しておく。
ドイツ軍の行軍演習
まずは、行軍演習を行なうドイツ軍の様子を紹介する。
行軍装備は小銃や弾薬盒、エンピと銃剣、雑嚢と水筒、ガスマスクに加えて、野営用の天幕(ツェルトバーン)、必要最低限の衣類と編上靴、飯盒、行軍食、日用品などを収納した背嚢、毛布などで構成されており、総重量は30kgにおよぶ。スチールヘルメットに巻かれている赤いバンドは、演習時の敵味方識別用で、表裏で色が異なり、この色で敵味方を区別する。
REIBERT:操典副読本より
掩体については、ドイツ軍の教範類にも細かく記されている。これは「REIBERT」という新兵用の操典の副読本に掲載されている図で、立ち撃ち用の掩体の断面を示している。この図には、“掩体は敵の砲弾の破片や天候からも身を守ることができること”、また構築に際しては“地面の窪みや道の脇の溝などが適している”と記されている。
ドイツ軍の2人用小銃掩体
上の写真は、掘った2人用小銃掩体に入るドイツ兵メンバーである。写真では掩体の縁から胸墻までの距離が少し長くとってあるように見えるが、射撃の際にはこの部分に腕を乗せ、肘から先を胸墻に当てて小銃を安定させる。胸墻の巾も、もう少し広くしないと敵の銃弾が貫通してしまう。深さもまだ浅めなので、この掩体はまだ未完成なのかもしれない。
電話線敷設再現
これは電話線の敷設作業を再現しているところである。樹木や電柱に登る際に使用する補助具を使用して、実際に木に登っている。電話線はこのように架空に敷設する場合と、地中に埋設する場合がある。架空敷設は比較的作業や点検が容易な反面、見つかりやすく砲爆撃に弱い。埋設は丈夫な反面、修理点検などには手間が掛かる特徴がある。
日本軍の掩体
今回の企画に参加した大日本帝国陸軍兵士は3名であった。この掩体も立ち撃ち用であるが、壕に入る階段が設置されている。
余談ではあるが、「塹壕線」を構築する際には、このように個人掩体を各々が構築した後に、その壕をつなぐ交通壕を掘ることで、いわゆる塹壕線が完成する。この交通壕は手前から階段状に掘り進めることで、当初は浅くとも各掩体をつなぐことができる。
イギリス軍の掩体
最後に、イギリス陸軍の小銃掩体を紹介する。イギリス陸軍の参加者は1名だったので、2人用小銃掩体を構築するのは結構な重労働だったであろう。この掩体も攻撃時だけではなく防御時に対する考慮がなされており、写真では分りにくいが、壕の中央部は一段深く掘られている。写真左側が壕の正面となるが、射撃時には胸墻がえぐれている両脇に立ち、防御時には中央の一段深く掘られた所に退避するのである。
PHOTO:赤侍 & Kaspar Lueder
TEXT:STEINER