2021/01/06
カラシニコフ社が手掛ける2020年最新銃器【前編】
偉大なるAK-47の開発者、ミハイル・カラシニコフ氏の名を冠する「カラシニコフ」社。ロシア軍の次世代アサルトライフルと目されるAK-12 を筆頭に、近年は次々と新しいモデルを発表している。例年、カラシニコフはロシア最大の軍事見本市「ARMY」を新作発表の場としているが、コロナ禍のなか今年8月にモスクワで開催された「アルミヤ2020」でも、カラシニコフは巨大な専用ブースを構えて新作の発表やメディア向けの試射イベントを開いた。
在モスクワのミリタリーライター、コンスタンチン・ラザレフ氏がカラシニコフの最新モデルをレポートした!
カラシニコフとは
「カラシニコフ」とは、AK-47 自動小銃(および、その派生型)の通称であり、設計者ミハイル・カラシニコフ氏に由来する。第2次世界大戦後に登場したAK-47 が、世界中に広がり、現代でも第一線にあることは言うまでもないだろう。設計者カラシニコフ氏は、ロシアでは国家的な英雄として尊敬を集めており、2017 年にはモスクワ市内に大きな銅像が建てられている。なお、氏は2013 年に亡くなられた。
次にカラシニコフ社だが、同社はロシアの銃器・兵器産業の再編により複数の兵器メーカーが統合して、2013 年に設立された新しい企業である。再編の中心となったのが「イズマッシュ(イジェフスク機械製造工場)」社である。
イズマッシュは帝政ロシア時代の兵器工廠を出発点として、ソ連時代には国営工場としてAK-47 を始めとするAK シリーズやドラグノフSVD など小火器の生産を担っていた。1991 年にソ連が解体されると、民営化されたが経営難に陥り、前述の通り政府主導による再編でカラシニコフ社へと統合された。
▼詳しいカラシニコフの歴史はこちら▼
RPL-20
- 口径・使用弾薬:5.45mm×39 7N6 / 7N10 / 7N22 / 7N24
- 全長/銃身長:不明
- 重量(弾薬なし):5.2 ~ 5.5kg
- マガジン・装弾数:100 発(ベルトフィード、布製マガジン)
- サイクルレート:最大毎分600 発程度
■ベルトフィード式分隊支援火器
カラシニコフの最新モデルとして特に注目されたのが5.45mm×39口径の軽機関銃「RPL-20」だ。RPL とは、R = Ручно́й(携行火器)、P = Пулемё т(機関銃)、L = Ленточные(ベルトフィード型)の略であり、日本語で言えば「20 年式ベルトフィード型携行機関銃」の意味である。小銃弾口径のベルトフィード式機関銃は、ロシアにこれまで存在しなかったものであり、とても興味深いモデルと言える。
RPL-20 のコンセプトが、分隊支援火器であることは間違いない。分隊レベルの火力を強化し、戦場での優位を作り出すための火器だ。もちろん、PKM やPKP ペチェネグのような7.62mm 口径機関銃ほどのパワーはないが、より小規模な部隊単位の戦闘であれば、敵を抑制するのに充分な“火の壁”を作り出すことができるだろう。
■ロシア版“M249 SAW”なのか?
小銃弾口径の機関銃として、西側の「FN MINIMI /M249 SAW」との比較は避けられないだろう。現時点で、詳細な性能特性について情報が開示されていないため、具体的な比較はできないが、大きさや機能性はほぼ同じ。一つ、大きな違いを挙げるならば、重量がある。RPL-20は約5kg であり、M249 に対して2kgも軽い。これは兵士の機動力を考えるうえで、大きなアドバンテージとなる。
さて、カラシニコフはつい数年前、同様のコンセプトに基づく小銃弾口径機関銃として、マガジンフィード式の「RPK-16」を発表しているが、こちらについてはその後の動静を聞かない。私の予想では、95 発入り円形マガジンが充分な信頼性を発揮できなかったのだと見ている。M249 はベルトフィードとマガジンフィードを兼用しているが、マガジンフィード機能がほとんど使用されていないことは有名だ。作動の信頼性が低いのだ。同様の問題がRPK-16 にも生じたのではないだろうか。RPL-20 に、マガジンフィード機能はない。
AK-12
2020 latest model
ロシア連邦軍次期小銃として開発されたAK-12。いまや同社の看板商品ともなっているモデルだが、今年展示されたものは一部がモダナイズされ、より現代的な外見になったことが確認できる。具体的には新型のテレスコピック・フォールディングストック、グリップ、トリガーガードなどである。
またカラシニコフ社ではAK-12をベースとして、口径を変更したモデルを発表している。どちらも西側(NATO 諸国)の口径を採用したものであり、輸出を強く意識したものであることがわかる。
AK-19
AK-12を5.56mmNATO 弾仕様としたモデルであり、輸出用と思われる。AK-12 のモダナイズにあわせて、AK-19も同様のパーツを使用している。また、マズルデバイスはAK-19独自のものが装着されている。実際に射撃をしてみると、5.45mm 口径のAK-12 よりややリコイルが強いように感じたが、決して不快なわけでなく撃ちやすさは変わらない。
こちらで紹介した銃の他にも「アルミヤ2020」ではさまざまな新作が発表されていた。月刊アームズマガジン2021年1月号の特集ではその新作の詳報はもちろん、カラシニコフのエアガンなども紹介しているのでぜひご覧いただきたい。
また、後編のレポートでは取り回ししやすいカービンモデルやハンドガンの新作もご紹介するのでそちらもご覧いただければ幸いだ。
Photo & Report:Konstantin Lazarev
Translate & Edit:Takayuki Ayabe
この記事は月刊アームズマガジン2021年1月号 P.32~39より抜粋・再編集したものです。