実銃

2018/10/14

無可動実銃は極上の嗜み ~BERETTA M12~【2018年11月号掲載】

 

鋼鉄とグリスの匂いが漂う至高の浪漫

この国では、軍用銃を撃つことはおろか触れることすら難しい。故に軍用銃に対する評価は誰かの言葉の受け売りに偏ってしまう。だがその銃の真の価値を知っているのは、その銃で戦った戦士だけではなかろうか。銃の傷ひとつひとつが戦士の記憶だからこそ、無可動実銃に触れることは、戦士の記憶と自分を重ねられる崇高な儀式ともいえるのだ。

 

BERETTA M12

 

ベレッタ M12 短機関銃

 

モードの国のサブマシンガン

 

 第二次世界大戦の講和条約で大幅な軍備制限を受けたイタリアは、国内外の不安定な状況により、戦中にベレッタ社が開発したM1938Aサブマシンガンより軽量で扱いやすいSMGを必要とした。これに対しベレッタ社は戦前にSMGを設計したトゥリオ・マレンゴーニと後継者のドミニコ・サルツァの2人を中心に、1959年にM12を完成させる。1961年にはイタリア政府が制式採用し、陸海空軍やカラビニエリ(国家憲兵隊)への採用を皮切りに、M1938と交代する形で徐々に配備が進められた。
 先進国ではその後に登場したHK MP5が多く採用されたが、第三世界には高品質で安価なフルオート火器として評価され、特に砂塵環境や高温多湿な環境での高い信頼性から中東やアジア諸国、南米やアフリカ諸国へ多く輸出された。ベルギーやブラジル、インドネシアではライセンス契約が結ばれ、法執行機関の制式SMGとして現在も使用されている。

 

ベレッタ M12 短機関銃

グリースガンやUZIと同様のシンプルなマズルデザインを持つ。レシーバーキャップ先端には回転式のスイベルプレートが装備されている

 

ベレッタ M12 短機関銃

オープンボルトであるため、エジェクションポートからのゴミの進入は避けられない。そこでボルトハウジングに溝を加えることで砂や泥への耐性を高めている

 

ベレッタ M12 短機関銃

生産性を重視しながらも、どことなく優雅な雰囲気が漂うデザインは見る者を虜にする。グリップとトリガーの間にあるレバーはグリップセーフティだ。安全装置がかかっているときは固定されるため、握りこむことができない。安全性は非常に高い

 

ベレッタ M12 短機関銃

まるで中世の鎧を連想させるようなマガジンハウジングのベロには、スポット溶接痕がハッキリと刻まれている

 

ベレッタ M12 短機関銃

オフセットされたストックはレシーバー後端で右水平に回転して折り畳むワイヤータイプ。銃の中心に向けて微妙にカーブがかかり、細長いバットプレートは肩に食い込み非常に安定する

 

イタリアを代表するSMGの誕生

 

 プレス加工と電気溶接による大量生産向けの合理的な設計がなされているが、全体的に野暮ったさはなく、ドイツの合理性とイタリアのデザイン性が融合したような外観を持つ。作動方式は、オープンボルトのシンプルブローバック方式だが、UZIと同様のボルトがバレルの根元を覆うテレスコピック・ボルトを採用している。全長のわりにバレルが長く、毎分550発と低めの連射速度とボルトの内部に銃砲身の一部が収まることで、ボルトの重量が銃の前側になり、発射時のマズルジャンプを相殺するなどコントロール性にも優れている。同世代のSMGとしてはUZIにも影響を受けているようだが、レシーバーの構造などはドイツのMP40やStg44に近く、グリップセーフティの位置やフォアグリップの採用など、両者の中間のような当時としてはかなり洗練された設計であった。

 

 この個体を放出したイタリア国家憲兵隊カラビニエリは、本銃を採用した最初の軍・法執行機関である。対テロおよびHRT用の特殊介入部隊を保持するため、事件が起きるたびに本銃を装備したカラビニエリがメディアに露出した。また、時代の流れと共にカラビニエリでもMP5使われるようになるのだが、近年ベレッタM12の後継として同社のPMXが採用された。そのスタイルはベレッタM12の影響が色濃く残されていることからも同銃の完成度の高さが証明されている。商業的には失敗と言われているが、実際には1959年から2008年までの約50年に渡り製造されてきたイタリアを代表する名銃なのだ。

 

ベレッタ M12 短機関銃

 

DATA

ベレッタ M12 短機関銃
(複数在庫品)

  • 全長:645(418)mm
  • 口径:9mm×19
  • 装弾数:20/32/40発
  • 価格:¥172,800

 

SHOP DATA

シカゴレジメンタルス
http://www.regimentals.jp/

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営業時間 12:00~20:00 年中無休

 

TEXT:IRON SIGHT

 


この記事は2018年11月号 P.74~75より抜粋・再編集したものです。

 

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