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2020/04/02

自衛隊が使用するダミー教材「64R-TRG」に迫る

 

タクティカルラバーガン化された64式小銃

 

 発砲したり操作習熟目的以外の訓練において実銃を使うことは、高価な実銃を破損してしまうリスクを伴う。その解決策のひとつとして生み出された訓練教材が、世界の軍・法執行機関から注目されつつあるハイスペックラバーガン・TRG(Tactical Rubber Guns)シリーズだ。

 月刊アームズマガジン5月号では、TRGシリーズの開発者・神崎氏が自ら64R-TRGについて解説している。その一部を抜粋してお送りしよう。

 

訓練で役立つ訓練教材ラバーガン

 

【解説】自衛隊が使用するダミー教材 64R-TRG

 

 陸上自衛隊でこの種の訓練用ダミーが使用され始めたのは2000年代初頭、西部方面普通科連隊(後の水陸機動団)だ。当初は「実銃を使用しないのでは訓練の意味がないのでは…」という意見もあったが、差し迫る海外派遣や近接戦闘訓練が頻繁に行なわれるようになり、ラバーガンTRGの需要も増えていった。現在では普通科部隊で一般的になったような訓練の基礎が築かれた時期でもある。

 

64R-TRGの誕生と改良

 

 キャロットTRGシリーズの中で64R-TR(64式小銃型)のラインアップは2008年に遡る。当時はまだ陸上自衛隊の普通科部隊にも僅かに64式小銃が残っており、訓練用教材としての需要があった。

 

 徐々にその需要が減っていたのとは逆に、海上・航空自衛隊からの需要は増え始め、2018年に現在の仕様となる改良型が発売された。

 

頑丈で柔軟性を持つTRG

 

 TRGはほとんど可動部品を持たないダミーガンでありながら、安全性を重視したモノ造りがなされている。外皮となる部分にラバー材質(合成ゴムやエラストマー)を採用。内部に封入した芯材は鉄製で、実銃の重量バランスを再現しつつ頑丈な骨格としているのが特徴だ。

 

【解説】自衛隊が使用するダミー教材 64R-TRG

弾倉部(マガジン)には大きく「訓練用」と表示してあり、第三者からの識別用としている。弾倉内部には鉄製芯材が内封され、保持してもびくともしない

 

欠かせない機能を再現

 

 実際に64式小銃を使う現場おいて欠かせないのが照星(フロントサイト)照門(リアサイト)の操作で、可倒式の照準器をもつ銃器の必然となる。64R-TRGでは角を丸めて手を痛める事なく、繰り返しの操作にも耐える構造となっている。

 

【解説】自衛隊が使用するダミー教材 64R-TRG

倒れた状態と起こした状態の照門(リアサイト)の比較。両側は分厚いゴム材で保護され、収納時には邪魔にならない。照星(フロントサイト)も同様の可倒式だ

 

 また銃本体の前後に配置されている負紐環(スリングスイベル)は、ステンレス材の頑丈な金具(2019年版以降)が採用され、激しい訓練で負荷がかかっても破損の恐れがない。

 

【解説】自衛隊が使用するダミー教材 64R-TRG

ステンレス製の負紐環(スリングスイベル)はリベットで固定されている。エッジ部は研磨されており、スリングの滑りも良好で使用者の手を傷つけにくい配慮がされている

 

TRGは官用の訓練教材

 

 通常、TRGは一般競争入札を経て自衛隊など官公庁へ納入される商品であり、トイガンショップで扱われることはあまりないが、機会があれば一度手に取ってみていただきたい。その重さとタフな造りから、きっと自衛官の苦労が偲ばれるはずだ。

 

【解説】自衛隊が使用するダミー教材 64R-TRG

 

64R-TRG 諸元

  • 全長:990mm
  • 重量:4,100g
  • 材質:エラストマー(PU)
  • 照準器:前後共に可倒式
  • 負紐環:ステンレス
  • 価格:¥45,600

 

製品のお問い合わせ先

 

TEXT:神崎 大/アームズマガジンウェブ編集部

 


この記事は月刊アームズマガジン2020年5月号 P.44~45より抜粋・再編集したものです。

 

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