2020/02/06
【前編】スチェッキンAPS/櫻井朋成
東西冷戦時代、鉄のカーテンの向こう側にあった旧ソ連で、車輌や航空機搭乗員のPDW(個人防護火器)として開発されたスチェッキンAPS。この銃はフルオート射撃を前提にしたマシンピストルであり、ハンドガンとしては大柄なボディや、ケースを兼ねる着脱式のストックが特徴的だ。
2019年暮れのクリスマス、2020年最初の記事を何にしようかと考え、ここは筆者が所有している銃から選ぶことにした。それが、筆者のコレクションでは唯一の旧ソ連製アイテム、スチェッキンAPSだ。この銃はフルオート射撃が可能なマシンピストルとして知られているが、残念ながら筆者の住むフランスでは一般人のフルオート銃の所持が認められないため、入手できたのはセミオートオンリーに改造された市販モデルである。以前、ハンガリーでこの銃を射つ機会があり、とても気に入り物欲が湧いてきたところ、タイミングよく行きつけの銃砲店に入荷していたのだった。
シンプルブローバックなのでリコイルスプリングはバレルを軸に配置されている。その分マズル周りのデザインはシンプルとなり円形に近い。
スチェッキンAPSは車輌や航空機搭乗員のPDW(個人防護火器)として開発され、第二次大戦後の1951年に登場した。しかし銃自体が大きい上、ストックも大柄なことから狭い車内や機内での取り回しが悪く不評で、早々に保管庫送りとなってしまった。
ところがSMGを欲していたスペツナズ(特殊部隊)がこの銃に注目し、採用されることになる。使用弾である9mm×18マカロフはスチールコア弾頭(鉛が高いからたまたま鉄を使っていただけだけど)を採用し、当時の一般的なボディアーマーであれば貫通できたことから近接戦闘で有効とされたわけだ。
リアサイトは射撃距離に応じて4段階(25 / 50 /100 / 200m)に調整可能。リアサイトに組み込まれているドラムを回転させることで、リアサイトブレードが表示された数字に応じた高さになる。
スライドにセーフティを含むセレクターがあり、レバーを回転させることでセミ/フルおよび安全状態への切り替えやデコッキングができる。その前方のセレーション部分は盛り上がっていてスライドを操作しやすい。
【アームズマガジンウェブ編集部レビュー】
度々映画などにも登場するスチェッキンピストルだが、旧東側のマシンピストルだけあって情報に乏しいのが実情だ。今回取り上げるこのモデルはセミオートのみに改造されてはいるものの、ストックまで装備したスチェッキンである。次回の中編では、内部機構にスポットを当てる。
TEXT & PHOTO:櫻井朋成(Tomonari SAKURAI)
編集部レビュー:アームズマガジンウェブ編集部
この記事は月刊アームズマガジン2020年3月号 P.124-131より抜粋・再編集したものです。