2019/12/24
バルカン・クライシス【一番星の中の人による新作映画紹介】
「月刊アームズマガジン」編集部のsakayaがおくる『一番星の中の人による新作映画紹介』。アームズ本誌でもシネマコーナーを担当している編集部イチの映画好きが不定期で気になる新作映画を紹介していく本コーナー。今回はコソボ紛争を描いた骨太なロシア映画(ロシア・セルビア合作)をお送りするぜ!
アームズマガジン本誌のシネマコーナーでも、「のむコレ」や「MDGPモースト・デンジャラス・シネマグランプリ」といった、劇場発信の映画祭を紹介しているが、コイツも「未体験ゾーンの映画たち2020」の上映作品なんだ。
冒頭、シャタロフ以下の特殊部隊は重要人物の確保任務に就いている。味方に重傷者を出しつつも作戦を成功させ、ヘリでの帰還中、NATOの命令に反してシャタロフは目標人物をヘリから放り投げるという暴挙(命令違反)に出る。帰国後、シャタロフと部下たちは軍属を剥奪されてしまい…。
そして、世界最大の火薬庫バルカン半島を舞台に、物語が加速する。
空爆によって産科医院が被害を受け、乳幼児や妊婦が死亡する。武装したアルバニア人がコソボ解放軍を名乗り、セルビア人警官と衝突する。米ロが対立し、NATOも介入していく泥沼の状況で、民族浄化が行なわれていく過程は、これが映画とわかっていても目をそむけたくなるほど。
そして、ロシア軍はシャタロフを除く部隊を再結集し、コソボで唯一の国際空港プリティシュナ空港を制圧した。だがそこは、コソボ解放軍の本拠地でもあった。少数のロシア特殊部隊と、シャタロフと行動をともにしていたセルビア警官たちは、迫りくる100名を超える武装勢力とどう戦うのか?
限定されたエリアを防衛する戦いといえば、『13時間』などが記憶に新しい。あれもCIAの秘密基地を守る戦いで、守勢のDSRは寡兵でテロリスト側が迫撃砲まで用意していた。本作では空港を守る特殊部隊は、コソボ解放軍とどう戦うのか? いかにもハリウッドにありがちなヒーロー展開に拳を握る瞬間もある。
見どころは何といってもM4やM249といった見慣れた銃が一切出てこないところだろう。時代が時代だから、Multicamを着たロシア特殊部隊も存在しない。兵器としてもせいぜいがBTRくらいで、ほぼ歩兵戦闘が中心、しかもスナイパーが大いに活躍する。ロシア軍の将校がアドバイザーを務めたらしく、ロシア軍のよさが前面に押し出されてはいるものの、映画としての完成度は高い。『バルカン・クライシス』は1月10日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田にて公開される。ぜひ劇場へ!
DATA
CAST アントン・パンプーシュニー、ユーリ・クツェンコ、ミレーナ・ラドゥロビッチ、ゴイコ・ミティック、エミール・クストリッツァ ほか
STAFF 監督:アンドレイ・ボールギン/脚本:アンドレイ・アナイキン、イワン・ナウモフ、ナタリア・ナザロワ/2019年ロシア・セルビア合作/配給:「バルカン・クライシス」上映委員会
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[プロフィール]
sakaya(酒屋)
かつてはサバゲ番長、現在はサバゲ野郎一番星のなかのひと。
アームズ編集部でも無類のナイロン好き。
業界で一等輝く一番星になる日を夢見て、西へ東へ。