2025/03/06
Hungaian Weapon System GM6 Lynx
Anti-Material Rifle by Hungaian Weapon System
GM6 Lynx
12.7mm Multi Caliber System
50口径ライフルの戦術を変えるかもしれない
Photo & Report:櫻井朋成 Sakurai Tomonai
Gun Professionals 2012年11月号に掲載
この.50BMGのGM6 Lynxはこの時点ではまだ試作段階であったが、その後に完成、2019年9月号で“SERO International GM6 Lynx”として再度取材している。2022年には海上自衛隊が警備用として試験導入したという情報が流れた。その後の海自の情報は聞いていないが、GM6は.50BMGのアンチマテリアルライフルのひとつとして、市場展開を続けている模様だ。
2015年3月 GP Web Editor
GM6との出会いと射撃場の確保
この銃と出会いは2年前のユーロサトリでのことだ。メインの会場からは離れて小さなブースが軒を連ねるこじんまりとしたエリアに、ハンガリーの幾つかのメーカーの製品と共にこの銃があった。ややコンパクトに見えた50BMGのアンチマテリアルライフルは、いかにもお手製のデザート・カモフラージュ塗装でややチャチにも見えた。そのブースにいたアンドレは、バレル全体が後退するシステムのため、リコイルが非常に軽く立ちながらでも連射できると言った。「それだったらそれを試させてよ」そう返すと口径がでかいから軍の施設などが必要で、試射は簡単にはできないよ、と言われた。

ハンガリーという国は日本人にとって、あまり馴染みがないだろうと思っていた。しかし、歴史を紐解くと第二次大戦中あるいはそれ以前から関わりがあった。というのも1945年までハンガリーは王国であり王族がいた。そして、大戦をドイツとともに枢軸軍として戦ったため、当時の大日本帝国にとっても同盟国である。弾薬をハンガリーから日本軍へ納入していたことが資料から知られている。また日本の皇室とハンガリー王室のつながりもあり、関係は深かった。日本とハンガリーは現在でも友好的で、ハンガリーに行ってみると、スズキの車が多いのに気がつく。それはスズキのヨーロッパ工場がハンガリーにあるからだ。日本が経済を支える一端を担っており、2月11日の建国記念日をハンガリーでは“日本の日”として国中で日本の文化に触れる一大イベントを毎年行なっている。


本誌2012年9月号でスナイパーワールドカップを取材しにハンガリーに出かけた時、筆者はアンドレと再会することになった。初めてユーロサトリで出会ったときのアンドレは、未だどことなく若さが目立った感があった。しかし再会した彼はすっかり大人になっていた。それは経験を重ね、それと同時に自信をつけてきた証と感じた。そして再び、GM6の実射をお願いした。
GM6の射撃はそれからしばらく待たなければならなかった。というのも、50BMGという口径は射撃場を選ぶ際、航空機にも十分損傷を与える可能性があるということで射撃時にはその上空2500mまで飛行禁止指示を出さなければならず、それはなかなか容易では無いからだ。その許可が降りたのは7月のこと。夏のバケーション前に何とかしたかったという願いがかなった。


立射で連射できる50口径ライフル
到着した射撃場はブダペスト郊外。この日は上空の飛行禁止指示も出ているので心置きなく射撃ができる。天気予報では終日雨といわれていたが、薄曇りで時折青空も見える。チャンスに恵まれたようだ。用意された射撃場は距離がなく、そのアキュラシーなどのテストは行えなかった。しかしこのライフルの大きな特徴であるリコイルリダクションと立射による射撃を検証できたので、ご了承いただきたい。
車から出されたGM6を、アンドレが手慣れた動作で調整をおこなう。調整といってもスコープを合わせることだ。バレルに刺したメジャーリングスコープを助手が覗き、スコープと同調させていく。前述したようにアキュラシーのテストではない。しかしながら弾の威力が強力なだけに、外した弾が思いがけないところに飛んでいってしまうのは困る。角度によっては数キロにわたって弾はその破壊力を持ったまま飛翔するのだ。そのためスコープの調整を念入りにする。

調整が終わるとアンドレがデモンストレーションを兼ねて5発ゆっくりと射撃をした。射撃を外から見て感じたのは発射ガスによる埃が少ないことに気がつく。通常、50口径などのライフルはリコイルを抑えるのにマズルブレーキを使用する。そのため発射ガスをマズルブレーキで効果的に両サイド、後方に吐き出す。そのガスの威力で埃が舞い上がる。ヘタをすると射撃のあとに咳き込んでしまうほどだ。
また、視界までも遮ることになる。ところがGM6はロングリコイルのためにエネルギーを使用するのでマズルブレーキはさほど大きくない。そのためにマズルブレーキから放出されるガスも少なめになっている。腹の底に響く射撃の振動は、それが50口径であることを認識させる。射撃のたびにガシャコンとバレルが後退し、空のケースが排莢される。2度目の5連射はできるだけ速く行った。この速くというのはトリガーをただ速く引くのではなく、スコープにターゲットを捉えたうえでのことだ。それでもその連射の速さはまるでアサルトライフルをセミオートで射撃している速さと大差ない。リコイルが少ない分銃が動かないのでエイミングもしやすいのだ。
バイポッドを利用したプローンで試射する。プローンのポジションにつき、折りたたまれた銃の大きさに対して、やや小さめのコッキングハンドルを後方いっぱいに引いて放す。このハンドルが小さい上に角張っている。そしてブルパップであるために肩のあたりまで引っ張らなくてはならず、ここは操作しにくい。



