2025/02/19
Sniper World Cup -Hungary Budapest 1-5 June 2012-
SPOLICE & MILITARY
Sniper World Cup
Hungary Budapest 1-5 June 2012
Photo & Report Tomonari Sakurai 櫻井朋成
Gun Professionals 2012年9月号に掲載
雑誌掲載時、Jean-Francois Dupontのペンネームを使用しました
東欧の小国ハンガリー
ヨーロッパには幾つもの国が形成されている。日本でも有名なイギリスや我がフランス、ドイツなど大国の他に、たくさんの小さな国が存在する。それらの国々は占領や征服そして崩壊、独立を重ねて、現在に至っている。過去に存在し、歴史の中だけの存在となった国も、時には再建される場合もあり、地図はめまぐるしく描き変わるのだ。国によってはひとつの国で何か国語が公用語になっている国さえある。
東欧にあるハンガリー、この国はトルコとオーストリアに挟まれ、征服と併合の歴史を繰り返しながらも独自の文化を育んできた。近代ではハンガリー王国として独立の後、第二次大戦では枢軸軍としてドイツと共に戦い、戦後は東側に組み込まれ、暗黒の共産党一党支配下に置かれる。そしてソ連のペレストロイカにより民主化が進み、ハンガリー共和国が成立して現代に至るのだ。この人口1千万に満たない小国ハンガリーでスナイパーワールドカップが開かれている。今年で11回目を迎えるイベントだ。
なぜハンガリーでそれが行われるのか?それを理解するには、ほんの少しハンガリーという国を知る必要がある。ハンガリーは軽騎兵ユサールの原点であることも有名である。甲冑を身にまとった重装備の騎兵が一般的だった西ヨーロッパで、軽装備で主に弓を使用し、重装備の敵を殲滅したことでその名を馳せた。重装備の騎兵の前にわざと自らの姿を晒し、追いかけさせる。重装備の兵士を載せた馬が疲れ、動きが鈍くなると矢を放つという戦法だ。現在でもそれが伝統となり、乗馬しながら矢を連射する姿は、ネットでも簡単に探すことができる。軽騎兵は、フランスでもルイ14世によって正式な部隊として組織された。その原点がハンガリーの軽騎兵なのだ。ちなみに軍の制服に縄を編んだ飾りがついている場合があるが、これもハンガリーが原点である。

話を銃に戻そう。20世紀に入るとFrommer Rudolf(フロンメル・ルドルフ)により独創的な銃が開発される。リコイルリダクションシステムを持つFrommer STOP は軍に採用され、またドイツのルフトバッフェ(空軍)にも採用された。また、1920~30年代にヨーロッパでポケットピストルが流行するとルドルフによるポケットピストルも人気を博した。そのルドルフが考案したマガジンバンパーにフィンガーレストを兼ねたデザインは特許が取得され、ワルサーやベレッタはルドルフの特許を購入してそのデザインを使用していた。これらの銃についてはまた別の機会にじっくりとレポートするが、ハンガリーには優秀な銃器設計者がいたわけだ。また、今をにぎわすロンドン・オリンピック。ハンガリーはオリンピックの射撃競技で、これまでに多くのメダルを獲得している射撃大国でもある。そういった土壌があるために、ここハンガリーでスナイパーワールドカップが開かれるようになったのだ。実はこのイベントはオーストリアで発案され、オーストリアで行われる予定だった。しかし、景気の低迷でスポンサーなどが集まらず、資金面で開催が難しくなった。また、オーストリア国内では300m以上が撃てる設備の整ったライフル射撃場が見つからないという問題も重なり、ハンガリーがこのイベントの開催を引き受けた。
スナイパーワールドカップ。その名の通りスナイパーを対象にしたシューティングマッチである。軍あるいは警察に所属している、または所属していた経験がなければ参加できない。参加の際にはそれぞれのユニフォームで出ることが必要で、基本的に各部隊で使用しているサービスライフルの使用が義務付けれれている。一人で射撃可能な銃であればその口径に制限はない。国によって使用弾薬が違うので当然であろう。世界のスナイパーが対決するこのワールドカップを取材すべく、筆者はパリからブダペストに向かった。


第11回スナイパー・ワールド・カップ
Sniper World Cup(SWC)はハンガリーの内務省と国防省が主催者の一躍を担っており、在ハンガリーの大使館を通して世界中にアナウンスしているイベントである。もちろん日本大使館にも届いているはずだ。今年の参加国は17カ国。参加チームが多いのはもちろんハンガリーだが、ついでベラルーシ、ウクライナ、ロシア、中国にスロヴァキアと東欧など、共産主義時代のつながりがある国からの参加が多い。西側からもアメリカはもちろん、ドイツ、イギリス、スイスなどが参加している。それらの国が、それぞれ配備されている現用スナイパーライフルを持込み、腕を競い合う。そのため会場はスナイパーライフルのオンパレードとなった。それらのライフルはじっくり写真を見ながら紹介していくとして、このSWCの競技について少し説明していこう。クラス分けはポリスとミリタリーで、個人戦と二人一組でのチーム戦、そして総合での個人優勝を競い合う。140人を超えるコンペティターを3つのグループに分け、3日間で26ステージをこなすのだ。初日にはナイトシューティングも含まれる。ステージを幾つかご紹介しよう。

約100人のシューターが最初にぶつかる難関。130m先の308のケースを狙うステージ。最初の射撃だけに過去のデーターや気象情報を読みスコープ調整する。放つのは1発のみ。射撃の合図から20秒間に一斉射撃が始まる。ざわついた準備の時間は刻々と終わりに近づき「ロードアンドメイクレディー」の号令で装弾しチャンバーに初弾が送り込まれるメカニカルノイズに包まれ静寂が訪れる。そしてビープ音。しばらくすると最初の射撃音が聞こえると続けて射撃が始まる。射撃終了のビープ音がなるとそれぞれが射撃結果を確認しに静かに歩き出した。大半がケースにキレイに穴を開けたが中には大きく外すものもいた。今大会初めての射撃そしてプレッシャー。自分との戦いが今始まったのだ。
初日の開会式を終えると、早速のステージは”Cartridge Case”。130mの距離で.308のケースを一発で狙う。スタートの合図から20秒以内に撃たなければならない。
ステージ”CQC”では15m先のターゲットに向けて、ライフルをほぼ腰だめで狙う。銃を脇より上にあげてはいけない。そしてスコープを含む照準器を見てはいけない。テーブルにライフルを置き、ライフルの10m後方からスタート、銃を手にして自分の前の2枚のターゲットに1発ずつ撃ちこむのだ。
トレーラーの荷台に乗り込んで時速15km/hで移動しながら、70m~80m先のターゲットを撃つステージもある。
またチーム競技では最初にハシゴを駆け上がり、200m先の固定されたクレーを3枚撃つ。スタート地点に戻ると、チームの別のシューターが正面に停めてある車のボンネットを利用して同様に3枚のクレーを仕留める。一定時間内なので最初のシューターがもたつくと、二人目が撃つ時間が無くなるというものだ。
ナイトシューティングは真っ暗になったレンジで行われた。200m先のターゲットに等間隔にグリーンライトが左から右へゆっくりと移動する。一つのターゲットを照らすのは約2秒。それを仕留める。それ以外の明かりは一切許されない。プロのスナイパーだけが参加するので、ターゲットも人質をとったテロリストというのが多く、人質を撃つと大きく減点される。普段からの経験と鍛錬の積み重ねが試されるステージ構成になっている。



マガジンを抜いた状態で銃を持ち、スタート同時に目の前の丘を駆け上がりてっぺんでポジションに就き、装填して、左右に配置されたターゲットをスタートから40秒の間に仕留める。予め土嚢(どのう)が用意されている。バイポッドの使用は禁止。

100m先のホステージレスキューだ。子供を人質にとった犯人を狙え! 100mだがターゲットサイズは1/4。狙うのはヘッドショット。腕などは得点外。もちろん人質を撃つとマイナス。スタートは銃を手に立っているところから。ビープ音でプローンポジションを取り射撃開始。時間は30秒しか無い!

