2025/10/25
FERFRANS SCW フルオートでもコントローラブルなファーフランスのサブコンパクトウエポン

Gun Professionals 2018年6月号に掲載
リコイルが軽い5.56×45mm であっても、フルオートで撃つと銃は暴れ、グルーピングは大きくなってしまう。しかし発射サイクルを低く抑えればコントローラブルになる。これを実現したのがFERFRANS だ。今回はその最新型ショートストロークピストンシステムを組み込んだ7.5 インチバレルの“SCW”の性能をチェックする。
Caliber:5.56×45mm
Operation:Short Stroke Piston
Barrel Length:7.5"
Rifling Twist:1:9"
Cyclic Rate:550-680RPM
フルオートM4
セミオートにおける5.56×45mm M4シリーズの撃ち易さたるや、もう語り尽くされているといっても良いだろう。リコイルは軽く、もしダットサイトが搭載されていれば、ほんの少しのトレーニングで100ヤード(約90m)程度までなら、誰もが手の平大に集弾させることが出来る。
しかし、これがフルオートとなると、まるでハナシが違ってくる。例えば、現行のミリタリーサービスライフルであるM4カービン(14.5インチ銃身)で、15ヤード( 約13.5m)からショートバースト(トリガーのコントロールで、3-4発の連射に抑える事)でシルエットターゲットを撃ったとする。それなりの経験者が撃ったとしても、初弾はセンターにヒットするとして、2発目は胸から肩にかけての位置に当たり、そして3発目はそのほとんどがターゲットを右上方に外れてしまう可能性が高い。たった15ヤードでこの調子なので、実戦では“CQC(Close Quarter Combat:近接戦闘)”それもルームクリア(ビルディング内での部屋掃討)などの限られた用途でしか使い物にならないとされている。
少し前のハナシになるが、サンバーナディーノPD(ポリスデパートメント)のSWATチーム訓練を取材させてもらったことがあった。このサンバーナディーノ市というのはその範囲が膨大で、SWATチームは総勢26名、ヘリコプターや機動車を数台も備える大所帯であった。その訓練は厳しく、実弾を使えるキルハウス(訓練用家屋)を所有しており、M4をプライマリーウェポン(主要火器)とした本格的なトレーニングを日々こなしていたのだ。
ここで驚いたのは、メンバーのうち10人ほどがサプレッサー付きのセレクティブファイア(フルオート付)M4を装備していたことである。聞けば、重武装化が進む凶悪犯罪に対抗するため、この10人は月1回の特別な訓練をクリアしてフルオートM4を所持しているのだという。この訓練というのがまた結構大変で、20ヤード(約18m)の距離から、1マガジン28発をショートバーストとはいえ全弾シルエットターゲットに当てなければならない。いくらシュアファイア社のマズルブレーキとサプレッサーを装備しているとはいえ、発射サイクルはオリジナルの毎分800-950発はあるのだから、これは至難の技だ。
私もフルオート射撃には目がないほうなので、機会があると友人のポリスオフィサーにお願いして、彼のM16A2コマンドを撃たせてもらうのだが、15ヤードからのショートバーストで、シルエットターゲットに着弾できるのは70%といったところだ。オーナーのオフィサーでさえ確率は80-90%といったところなので、20ヤード1マガジン全弾命中というのは並大抵のことではない。
SWATインストラクターのサージェント氏によると、「油断すると認定テストに落ちるメンバーもいるよ。数ヵ月に一回は、ヘリコプターからの射撃も決められた結果を残さなければならない。SWAT オフィサーであり続けているのは結構大変なんだ。」
彼らは毎日のトレーニングを欠かさず、週1回チームでの射撃訓練、月1回の認定テストと、通常のパトロールもこなしながら頑張っているのだ。
それにしても、エリートチームであるSWATに限られるとはいえ、ポリスワークにフルオートウェポンが制式採用されているとは恐れ入った。
サプレッサーは旧型だが、フロントのスリットからガスを逃がすシステムのため、閉鎖型サプレッサーに比べ噴射ガスが顔面に噴き戻ってこないという利点がある。
FERFRANS
そうこうしているうちに、ファーフランス社のFerdinand “ファーディ”Sy氏から連絡を貰った。 「ヘイ、ヒロ!新しいピストンシステムのSCW(サブ コンパクトウェポン)が完成した。撃ってみるかい?」
ファーディとは数年前に出会い、彼の会社で製造しているミリタリー/ポリス向けのARプラットフォーム(いわゆるM4スタイル)ライフルをテストさせてもらったことがある。独自のボルトアッセンブリーによって、フルオート時の発射サイクルを毎分550-650発に抑えて、より実用的なフルオートライフルを完成させていた。このあたり、ファーディに説明をしてもらおう。
「皆さんもご存知のように、M4プラットフォームはモジュラー性が高く、用途によって簡単に仕様を換えることが出来る素晴らしいライフルシステムだ。信頼性も高く、精度も申し分ない。しかし、ミリタリー/ポリス用のコンバットライフルとして考えると、フルオート時のコントロールが難しいという欠点があった。オリジナルのM16でさえコントロールが大変なのに、さらに銃身が短いカービンレングスのガスシステム(ガスポートの位置がチェンバーに近いため、よりガス圧が高い傾向がある)のため、フルオート時のリコイルはよりきつくなる傾向がある。元々、5.56mm口径はそれほどリコイルが強いほうではないが、発射サイクルが毎分800-950発と速いために、マズルライズ(銃口の跳ね上がり)が増長されてしまう。そこで私は、この発射サイクルを大幅に抑え、より撃ちやすい=精度の高いシステムを作り上げた。それが“Delayed Sear Activation System:ディレイドシア アクティベーション システム(DSAS)”だ。 これはボルトアッセンブリー内に時間差慣性を持たせることによって、ボルトが前後するスピードを抑える、というもので、非常にシンプルなシステムだ。シンプルがゆえに堅牢で、信頼性が高い。
2005年には、フィリピンの特殊部隊での制式採用が決まった。その後US各地のPDでも採用が決まっている。クレイカウンティ シェリフSWAT、サイプレスPD、ノガレスPDSWAT等、やはりSWATチームが多い。
このシステムは、とにかく撃ってみないとその良さが判らない。今回のSCWは新しいショートストロークピストンシステムを組み合わせたので、さらに軽量で撃ちやすくなっている。とにかく試してみて欲しい!」 早速お言葉に甘えることにするのだが、ファーディが取り出したニューモデルには驚いてしまった。


