2025/10/23
ガイズリーオートマチックス スーパーデューティGA-15

Photo&Text by Hiro Soga
Gun Professionals 2020年8月号に掲載
AR-15の高品質カスタムパーツメーカーとして知られるガイズリーオートマティックスは、2018年に自社生産のパーツを使用したAR-15アッパーをリリースし、2019年にはロアフレームも含むコンプリートライフル“SUPER DUTY”を発表、ガンメーカーとししても名を馳せるようになった。そんなガイズリーが、あるLEエージェンシーのために組み上げた“スーパー デューティGA-15 11.5インチバレル”をご紹介したい。

| Geissele Automatics Super Duty GA-15 バレル長……………………… 11.5" 口径…………………………… 5.56×45mm ロアレシーバー……………… Super Duty Lower Mil-Spec アッパーレシーバー………… Super Duty M4 Upper ボルトキャリアグループ…… REBCG(Reliability Enhanced Bolt Carrier Group) ボルト………………………… Geissele Stressproof Bolt レイル………………………… 10" SMR MK4 Federal トリガー……………………… SSA-E バレル………………………… 11.5" Barrel, CHF, Chrome Lined, 1-7 Twist ガスシステム………………… Carbine ガスブロック………………… Super Compact Gas Block チャージングハンドル……… Airborne Charging Handle マズルデバイス……………… A2 ロアパーツキット…………… Ultra Duty Lower Parts Kit バッファー…………………… Mil-Spec 6 Position, 7075-T6 バッファーアセンブリー…… Super 42 w/ H3 Buffer |
GEISSELE AUTOMATICS
ガイズリーが創業したのは2004年、メカニカルエンジニアであったBill Geissele(ビル・ガイズリー)氏が、自ら参加するナショナルマッチ ハイパワーライフル競技に使用していたM16のトリガーメカニズムの信頼性の低さに失望し、自分でデザインした2ステージトリガーシステムを作り上げたのが始まりだ。この2ステージトリガーというのは、まずトリガーの引き初めに適度なスプリングテンション(ファーストステージ)が2〜3mmほどあり、ここからさらに引く(セカンドステージ)とハンマーが落ちるという、2段階トリガーのことである。
この“ハイスピード ナショナルマッチ(HSNM)”と名付けられたトリガーセットは、フルアジャスタブルの2ステージトリガーシステムで、ファーストステージ、セカンドステージのそれぞれの重さ、オーバートラベル、シアーエンゲージメントを自分の好みにアジャストすることができる。
この“HSNM”はすぐに評判を呼び、USアーミーのマークスマンチームに採用されるなど、急速にポピュラーになっていく。翌年始まったUSアーミーの“セミオートマティック スナイパーライフル コンペティション(後にM110 SASSとして正式に採用される)ではプロトタイプのトリガーシステムに採用されるなど、“トリガーシステムならガイズリー”という定評が形成されていった。2006年になるとUSSOCOMから、M4とM16用に信頼できるトリガーシステムを作れないか、という依頼が舞い込んでくる。これに応えてガイズリー氏が開発したのが“スーパーセレクトファイア(SSF)”システムだ。このSSFはアジャスタブル機構を持たず、ファーストステージが約3ポンド(1.36kg)、セカンドステージが約1.75ポンド (794g) にセットされており、フルオート時にはシングルステージの6ポンド (2.72kg) になるという画期的かつ信頼性の高いシステムであった。このSSFは翌2007年にスペシャルオペレーションチームで採用され、ガイズリーはUSミリタリーのコントラクター(正式契約会社)としても成長していく。
次にガイズリーがリリースしたのが“SSA(スーパーセミオートマティック)”だ。このトリガーシステムは、ノンアジャスタブル2ステージのセミオートマティック専用で、ファーストステージが4.5ポンド(2kg)、セカンドステージが1.5ポンド (680g) に設定されている。この引き始めの方が重いというは意外かもしれないが、ストレス下のコンバットシチュエーションでは、このタイプのトリガープルの方に4つのアドバンテージがあるとされている。


友人は当初11.5インチという銃身長からエイムポイントのT2を装着するつもりだったが、あまりにも精度が良いので、6倍比のスーパープレシジョンスコープとスーパープレシジョンスコープマウントを送ってもらったのだという。同感だ。
- Safety(セイフティ):シングルステージに比べるとAD(アクシデンタル ディスチャージ:暴発)等に対する安全性が高い。
- Reliability(リライアビリティ):デザイン上に余裕があるため、信頼性が高い。
- Forgiveness(フォギブネス):オペレーターの失敗に対する寛容性が高い。トリガープルにおける細かなミスをしても完全な失敗にならない余裕がある。
- Performance(パフォーマンス):結果として、より高いパフォーマンスが期待できる。
こういった信頼性の高い2ステージトリガーに慣れてしまうと、精密射撃に有利とされるヘアトリガー(極軽いトリガープル)が窮屈に感じてしまうのも事実なのだ。
ガイズリーは、その後も目的に沿った数種類のトリガーシステムを発表したのち、FN SCARやHK416用など、M4、ARプラットフォーム以外のトリガーセットもリリースしていく。そして2012年になると、画期的ともいえる装着方法を備えた優れたデザインを持つハンドガード“Super Modular Rail”(スーパーモジュラーレイル:SMR)登場させる。このSMR MKIは、当時すでに有名インストラクターであったTravis Haley(トラヴィス・ヘイリー)氏がBravo Company(ブラボーカンパニー:BCM)とコラボした“Jack Carbine”(ジャックカービン)に採用されるなど、当初から人気を呼ぶシリーズとなって行く。
その後も新たなミリタリーコントラクトを獲得するなど、順調な業績を残していったガイズリーが、USASOC(USアーミースペシャルオペレーションズコマンド)と新たなコントラクトを交わしたというニュースが飛び交ったのは、2018年のことであった。この“URG-I”(アッパーレシーバーグループ インプルーヴド)というコントラクトは興味深いもので、なんと各社とコラボレーションしたM4プラットフォームのアッパーレシーバーのみの納入だったのだ。バレルは、Daniel Defense(ダニエルディフェンス)製14.5インチ コールドハンマーフォージドのもの、レシーバーとボルトキャリアグループは、コルト製のミルスペック、そしてガイズリー製スーパーモジュラーレイル Mk16 13.5インチにエアボーン チャージングハンドルが装備された合作アッパーだったのだ。特筆すべきはそのガスポートの位置で、それまでM4といえばカービンレングス(チャンバーからポートまでの距離が約7インチ)というのが普通だったが、このアッパーではミッドレングス(約9インチ)を採用していたのだ。昨今では、14.5インチバレルにミッドレングスのガスシステムを採用するのは、リコイルがソフトになるうえ、各パーツの寿命も延びる傾向があることから、14インチ以上の銃身長であればミッドレングスを選ぶことが多くなっているが、ミリタリーがミッドレングスを採用したというので、かなりの話題になったのだ。
そして2019年。それまでにもプロトタイプはちらほらと出ていたが、いよいよガイズリーがほぼすべてのパーツを自社製とした“スーパーデューティ”コンプリートモデルが発表されたのだ。

スコープマウントは無垢材からの削り出し。あえてレバー装着にはせず、大ぶりのナットでがっちりと締め付ける仕様になっている。
シュアファイア ミニスカウトライトプロモデルは、CR123バッテリー1個で500ルーメンが1時間使える。
スーパーモジュラーレイルは、FBIに採用されたモデルのリプロダクション。軽量かつ必要なレイルを備えている。


