2025/09/01
MGC ランダルカスタム【ビンテージモデルガンコレクション19】

Text & Photos by くろがね ゆう
Gun Professionals 2013年10月号に掲載
ランダルカスタムはとにかく話題となったモデルガンだった。1つにはTVドラマの主人公が使ったカスタムとして、もう1つにはウインチェスターM73の半分の価格で買えるレバーアクションとしてだ。TVドラマを知らない人にも多いに受け、大ヒットとなった。


諸元
メーカー:MGC
名称:ランダルカスタム
主材質:亜鉛合金
作動方式:手動操作、レバーアクション
発火方式:前撃針
撃発機構:ブリーチボルト ハンマー、シングルアクション
使用火薬:平玉紙火薬(のちに7mmキャップ)
カートリッジ:ソリッドタイプ
全長:470mm
重量:1.9kg
口径:.44-40
装弾数:6発+1
発売年:1969(昭和44)年
発売当時の価格:¥6,000、カートリッジ別売:12発 ¥400
オプション:ランダルホルスター¥5,000、飾り弾1発 ¥50
※ smG規格(1977年)以前の模擬銃器(金属製モデルガン)は売買禁止。違反すると1年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。(2025年現在)
※ 1971年の第一次モデルガン法規制(改正銃刀法)以降に販売されためっきモデルガンであっても、経年変化等によって金色が大幅に取れたものは銀色と判断されて規制の対象となることがあります。その場合はクリアー・イエローを吹きつけるなどの処置が必要です。
※ 全長や重量のデータはメーカー発表によるもので、実測値ではではありません。また価格は発売当時のものです。
ランダルカスタムというのは、1958〜1961年にかけて放送されたアメリカの30分もののTVウエスタンに出てきた主人公の銃のこと。日本ではフジテレビ系で1959〜1961年にかけて「拳銃無宿」というタイトルで全94話(「アメリカTV映画ハンドブック」では117本)が放送された。その後タイトルを「ガンファイター」に変えて26話が日本テレビ系で1966年に再放送されたらしい。原題は「Wanted: Dead or Alive」だ。
このドラマの主人公が賞金稼ぎのジョッシュ・ランダルで、若き日のスティーヴ・マックィーンが演じている。本作のヒットが映画スターへの道を開いたらしい。
ジョッシュ・ランダルが使っていた銃はウインチェスターを切り詰めた特注品(カスタム)で、日本ではランダル銃とかランダルカスタムと呼ばれていた。アメリカでは、実弾を撃つと反動がきついため“Mare's Leg”(Mare's Laigとも。アポストロフィーがないケースも。雌馬の足の意)と呼ばれていたらしい。
もとはロバート・カルプ主演のTVウエスタン「Trackdown」(1957〜1959)で、ここでスティーヴ・マックィーンが賞金稼ぎのジョッシュ・ランダルとして、2話ゲスト出演しているという。それが好評だったことでスピンオフとして作られることになったらしい。
ただ、残念ながら、当時、新潟にはTBS系の放送局しかなく、放送されなかったのではないかと思う。ボクが見たのはずっと後になってからのことだ。
小林太三さんによると、MGCは1968(昭和43)年にウエスタンカービンM-73を発売し、すぐに手作りカスタムとしてランダル銃を作り始めたそうだ。すでに放送から7〜8年経っていたものの、日テレ系の再放送からは3年ほどしか経っていない。ウエスタン人気も高かった。
TV用のプロップガンではウインチェスターの92がベースとなっているが、時代考証的には73ベースの方が正しいわけで、きっと受け入れられると考えたという。
とはいえ、資料が極端に少ない時代。ネットもないし、まだ家庭用のビデオデッキも発売されていない。入手が困難だった洋書や日本の映画雑誌、そして何より記憶が頼りだった。MGCの社員だったイラストレーターの小林弘隆(イラコバ)さんが資料を集めてくれたそうだ。
イラコバさんは資料を集める名人で、かつ見たものを瞬間的にそのまま記憶できるフォトグラフィックメモリーの持ち主だったので、多いに助けられたという。
そしてTV用のプロップガンには3〜4タイプあることが判明。バレルの長さ、バットストックの形、ループレバーのカーブなど、みなバラバラなんだとか。そこで、どうせバラバラだったら、良いとこ取りで一番カッコいい形にしようということになった。
特にループレバーは、映画「駅馬車」(1939)でジョン・ウェインが92を回転させて以来、ガンファンやウエスタンファンのあこがれだった。だからガンプレイのやりやすい形にしたかったという。
最初はレバーの一部を切り取って付け足す形で作っていたため、激しいガンプレイをすると継ぎ目の部分がガタガタになってしまったそうだ。
やがて人気が出たことから、量産化されることになった。その際、このループレバーをスチールで作り叩いて曲げることによって一番回しやすい形を突き詰めていったという。そのため、どのモデルを参考にしたということはないそうだ。
さらに、ループレバーに付いていた連射用のねじはカッコ悪く、いちいち回さなければならないことから、小林さん考案の折りたたみ式のものに変更した。これは起こせば連射、倒せば単発と、非常に便利で使いやすかった。慣れればマシンガンのように撃てた。変形でもしない限り、勝手に外れて連射になることはなかった。
バレルはオクタゴンが選ばれた。TVのプロップガンでも最後に作られたものはオクタゴンバレルだったという。MGCの場合は、オクタゴンバレルの方が強度を出しやすく、激しいガンプレイで落としても壊れにくいのと、目立つところにパーティングラインが出ないので安く作れるからだったという。
名称はメアーズレッグではなくランダルカスタムとされた。これは著作権に配慮したためらしく、ランダルも本来はRANDALLとつづるが、MGCはRANDALとLが1つ少ない。
パッケージは段ボール紙製のフタ身式で、緑と赤の二色刷りイラスト付き。イラストは何とゴム印でスタンプのように押しているのだそうだ。段ボール紙には微妙な凹凸があるので、普通の印刷だと欠けが生じる。ゴム印なら凹凸にあわせて変形するので、うまく絵が付けられるのだという。
原画はイラコバさんが描いた。両膝を軽く曲げ、サポートハンドの人さし指をピンと伸ばすスティーヴ・マックィーンの特徴をしっかりととらえているが、あえて顔は変えられている。存命中であったことから肖像権に配慮したらしい。
本革製の専用ガンベルトも製作された。これは現在SPEEDとして高い評価を得る小見山さんが、当時MGCにいたので、資材置き場の一部を空けてスペースを作り、製作していたそうだ。社内ではサファリランドならぬタヌキランドと呼ばれていたんだとか。そうと知っていれば手放さなかったのに。
1977年12月1日から第二次モデルガン法規制が施行された。ランダルは一旦は姿を消したが、後にラウンドバレルをレシーバーと一体化させて復活した。小林さんはこの復活モデルを見たことがないという。おそらくMGCを辞めたあとで作られたのではないかということだ。
なぜラウンドバレルだったのか。プロップガンの主流に合わせたのかもしれないが、古いファンにはちょっと寂しい気がしたものだった。しかしそれも今はもうない。貴重モデルとなってしまった。
Text & Photos by くろがね ゆう
協力:タニオ・コバ 小林太三
撮影協力:くま
Gun Professionals 2013年10月号に掲載
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