2025/09/06
亜米利加ガンショー徒然日記 109 フェイエットビルガンショー編

フェイエットビルのガンショーに行った。クラシックなリボルバーがいくつもある中、何じゃこりゃぁ~!な珍品にも出くわした。湿気でムンムンな中、遠出した価値はあったと思う。特にその中のひとつは博物館級の代物だ。自分はいらないけどね。
湿気のガンショー
不快だ。先月号で書いたノースキャロライナの猛暑がようやく落ち着いたと思ったら、今度はずっと雨続きで湿気が酷い。気温は落ちたのに汗がダラダラ。結局自宅のクーラーは連日フル回転だ。アメリカは日本に比べて電気代が安いので、その点は助かってますけどね(日本の皆さん、すみません)。
ともあれ、どんなに湿気が酷くてもガンショーへは行かねばならね。
額に汗を滲ませつつ出掛けたのは、Fayetteville(フェイエットビル)のガンショーだ。
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ショー会場までは片道120マイル(約193km)、車で軽く2時間半の距離だ。早朝に家を出てのんびり走る。
おもむろにラジオのスイッチを入れると、流れてきたのは映画『ロッキー3』の挿入歌“EYE OF THE TIGER”。サバイバーが82年にリリースした曲だ。う~ん、コレは当然、先ごろ亡くなった伝説のプロレスラー、ハルク・ホーガンへの追悼だな。確かスタローンも声明を出していた。
プロレスといえば、高校の修学旅行で名古屋駅から新幹線に乗った時(行先は失念。確か四国方面)、友人が「グリーン車にプロレスラーが乗ってるぜ」と言うのでこっそりのぞきに行った事を思い出す。ガラガラのグリーン車両の先頭近くの席に、山のように盛り上がった物体…それはどう見ても、間違いなくアンドレ・ザ・ジャイアントの背中だった。普通なら、せいぜい頭半分が覗く程度なのに、彼の場合は完全に肩まで露出。あの光景は一生忘れない。
さらに同じ車両の最後尾にもう一人、体格の良い外国人の姿が・・・おおー、“ウエスタンラリアット”のスタン・ハンセンじゃないかっ!彼らのような有名人は、愛知のど田舎生まれの自分にとっては基本テレビの中だけの存在。それが目の前にいる衝撃。そしてこのお二人の、微妙な席の離れ具合(どちらも当時は新日本プロレス所属)がなかなか愉快じゃんと、にわかプロレスファンの自分は心から感動したもんだった。修学旅行の目的地は全く思い出せないのに、彼らの後ろ姿だけははっきりクッキリ覚えてるんだから世話ないよなあ、みたいなしょーもない思い出に耽っている内に現地へ到着。バカ高い11ドルの入場料を渋々払って、いざ偵察開始。
先ず一発目。何じゃこりゃという珍品を発見。グローブガンだ。Sedgley OSS .38 glove pistol (Sedgley Mk2)というもの。手袋に38SPL弾の発射装置を取り付けた仕込み銃だ。
「第二次大戦中にOSS(アメリカ戦略情報局、後のCIA)が使ったギミックだ。単発式で、前へ突き出た突起がトリガー。こぶしを固めて相手へ押し付けて発射する。ミュージアムアイテム並みの珍品だぜ」と、テーブル主が説明してくれた。
自分はてっきりディスプレイオンリーかと思ったら、なんと売り物。3万ドルだってさ。相手にこぶしを押し付けるっていうのは、個人的に嫌だな。もうちょいトリガーメカを工夫して、離れた場所から撃てるようにして欲しかったね。それとメカ部が目立つから、いっそスパイダーマンの糸みたいに手首側へ仕込み、手首を上へ折ると発射するとか、そんな感じだったら便利だったのにね。
続けてもう一個、何じゃこりゃが出現。映画『スターウォーズ』のハン・ソロのマウザー光線銃をモチーフにした、Battle Arms Development社のSOLO BLASTERだ。
22LR口径のAR15をベースに、ハン・ソロのブラスターへ器用に仕立て上げている。同社はAR15系のライフルを主に展開するネバダのメーカーらしい。ようやるわ。お値段は1,995ドルだとさ。『スターウォーズ』は人気高いけど、そこまで出して買う人いるのかね。
さらにもう一挺、何じゃこりゃのピストルが待っていた。その名もG17“Mario”。グロック17にスーパーマリオブラザーズのカスタムペイントを施したもの。Dakota Bandit Designsという会社の製品。マアようやるわ。少し前に、グロック19の外観をレゴ風に飾った“Block19”というカスタム銃が物議を醸していたけど(ユタ州のCulper Precision社)、コレは大丈夫なのかね。版権とか任天堂が絶対下すわけないしね。100挺作ったうちの25番で、1,399ドル。自分は全然要りません。
(GP Web Editor :これは明らかに任天堂の著作権侵害ですので、キャラクターにはモザイクを掛けています。Webサイトを確認したら、さすがにマズかったのか、もうありませんでした。)
何じゃこりゃ3連発の後は、お口直しにまともなレトロ銃の3連発を。S&Wのハンドエジェクターとモデル13の4インチと、COLTのポリスポジティブの4インチ。同じテーブルに一気に置いてあった。
ハンドエジェクターは、エジェクターロッドの頭がデカいし、グリップがハーフカットだから、かなりの骨董。口径は32ロング。しまった、シリアル番号のチェックを忘れた。50年代くらいかな。ほどほどにやれた外観がドラマを感じさせる。485ドル。多分400ドルには落ちそうな雰囲気。でも、4インチは長過ぎるなあ。
お次のモデル13はとにかくカッコイイ。フィックスドサイトの357マグナム。渋過ぎる。コレもシリアルのチェックを忘れた。ピン付きバレルだから少なくとも1982年以前の製品。箱は付くけど状態がイマイチでさ。全体に薄っすら錆びっぽく、シリンダーには目立つ擦り傷。お値段650ドル。きっと100くらいは負けてくれそう。惜しいなあ。コレが3インチのラウンドバットだったら、少々の傷でも絶対買ったと思う。
そしてポリスポジティブ。正確にはポリスポジティブスペシャル。モデルガンで見慣れた形。そこにあったのは32口径で1952年製だ。コレも全体に薄っすら錆びっぽい。今の湿気だと、ガレージの金庫に放置したらひと夏で錆び錆びだよ。お値段625ドルで交渉可。う~ん…パスだな。そのテーブルには他にも1967年製のコルトのオフィサーズモデルマッチなどもあって、650ドルと悪くないお値段。でも、同じく錆びっぽいんだよ。つくづく残念。
さて、その日はマガジンを一個探していた。S&WのCS9のマガジンだ。そうです。今号で記事にしたのでバレバレですが、先月のGreenvilleのショーで見付けたCS9は結局ちゃんと買ったのだ。けど、マガジンが一個だけで寂しく、ずっと探してるんだけど割とないのよね。ebayでは皆50ドル以上で妙に高い。ちょうどマガジンを大量に集めたテーブルがあり、チェックしたら首尾よく発見。でも、使い古した感じが気に食わず、それでいてお値段45ドル。まあ20ドルとかなら我慢するけど、コレはちょっと嫌だな。ということで泣く泣く流し、代わりに同じテーブルにあったグリップを2個ゲットした。RUGERのGP100用と、SIGのP220コンパクト用だ。どちらも15ドル。SIGは実銃を持ってないからあくまでもコレクション。
そういえば、前回このショーで買ったP226の純正プラグリップは(6月号ご参照)、ebayでうまく売れたよ。15ドルで買ったものが81ドルまで上がった。儲かった。今回の2個もさっそく出しちゃうかも。幾らになるか、愉しみ愉しみ。
鉄砲へ戻って、再び何じゃこりゃなゲテ銃が出現。ギトギトに彫金を入れたサテンニッケルめっきのコピーベレッタだ。トーラスではなくて、トルコのDERYAというメーカーらしい。彫金はすべて手彫りで、操作レバー類は金メッキ。お値段895ドル。DERYAはグロックもどきのDY9とかこのベレッタもどきのMelikとか、長物ではAR15もどきとかイサカショットガンもどきとかウインチェスターM92もどきとかを作っている模様。こーゆーギトギト系は、自分は苦手です。
さらにあと2挺、何じゃこりゃじゃない真っ当な銃も。
1挺めはちょい古のRUGER SP101だ。バレル長は3インチで、口径が32H&Rマグナム。リアサイトがフィックスドではなく、ブレードをフレームに埋め込んだアジャスタブルってところがニクイ。今では見掛けなくなったタイプだ。お値段は800ドルとチョイ高め。
そしてもう1挺はコルトのキングコブラだ。91年製の6インチで、なんと2,250ドル。一応ハイポリッシュモデルではあるけど、ふざけたお値段。元値はせいぜい400ドルちょいの代物だからね(ベースモデルの場合)。何度も書くけど、キングコブラはJackさんが引退する時に譲ってもらう約束してたのに、彼が忘れて他の人に売っちゃったんだよね。痛恨の買い逃し。また思い出しちゃった。つらいです。
以上、ざっとこんなところだ。色々激しくて、遠出した分はしっかり愉しめたと思います。
今月の買い逃し
モデル13がね。シリンダーの擦り傷と薄錆びがなければ絶対に買いだった。ノースキャロライナの湿気が恨めしい。
Text & Photos by Toshi
Gun Pro Web 2025年10月号
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