2025/08/31
【NEW】この銃に会いたかった 83 ベレッタ84BB
『この銃に会いたかった』は、日本全国のガン愛好家の方々に銃への憧れとか思い入れを声高々に語って頂くコーナーです。
今月は、東京都にお住まいのP.N.そらごろうのパンダ絵日記さんがご登場。お目当ての銃は、どこまでもニヒルでイケてる多弾数中型DAオート、ベレッタのM84です。
それではハリキッテどうぞ!
人生で出会う友人知人の中には、随分と昔から知っているような気がする人がいるものです。この感覚は不思議なものですね。ベレッタ84はまさしくそんな存在です。
日本のマニアはマルシンのモデルガンで知った人が多いと思います。その発売はGun誌81年11年号に新製品紹介の記事で見つけました。今回それをあらためて見て、「あれ?もっと前じゃなかったっけ?」と驚きました。それだけ身近な存在になっていたのだと思います。


当時マニアになりたての感覚としてまず目を引いたのは、ザックリと上面が開いたスライド形状でしょう。ガバメントのような形を見慣れた目にはインパクトが大きかったです。現在では92系のおかげで新鮮さがやや薄れましたが「どこまでがエジェクションポートなの?」というカットの大きさに戸惑ったものです。
次に目を引くのは図太いグリップ周りでした。一応、中型オートに分類されるのですがそれにしては丸太のような握り具合…さすが13発装填のダブルカアラムマガジンを収める太さであります。過去の実銃レポートを読むと380ACPの反動をマイルドにして手に伝えてくれるようです。
しかしグリップパネルについてはオリジナルのプラスチックやスムースの木製だと滑りやすいようですね。82年のGun誌でJackさんもそう書いています。トイガンでは大丈夫ですが実銃射撃では気になりそうです。パックマイヤーのラバーが効果的との事で見た目にもカッコいいですね!
機能面も充実していて、当時としてはアンビセフティはカスタムのものと思っていたのに84には当然のように付いています。今では珍しくないこの機構も当時の少年からすると「左手でもセイフティが動く~!」と感動したものです。またマガジンキャッチも左右どちらにも入れ替えできる優れもので、アイデアが詰まった銃だと表現される箇所です。
トリガーはけっこうワイドでここもカスタムっぽいパーツです。ただそのストロークは長いという話はちらほら…他のダブルアクションオートに比べても可動距離は同じくらいなのに?
これはグリップに対しての感覚なのかもしれません。またマガジンボトムが厚くてフレームから6ミリほど突き出ているのがカスタムマガジンのバンパーみたいだなぁ、と思いました。そう考えるとお買い得感満載のスーパーガンに思えてきますね!








トイガンのM84は固定ガスガンやガスブローバックもありますが、やっぱりマルシンのモデルガンを買った人が多いのではないかと推察します。グリップを外してフレームの隙間から 内部を見た人も、組立キットを買った人も、印象に残っているのはメカニズムの複雑さではないでしょうか。マルシンは実銃を忠実に再現してあります。不思議なのがマガジンセイフティスプリングです。まるで浮いているように見えるのにきちんと役目を果たしています。マガジンを入れるとその窪みにスプリング先端が巧くはまって解除されるという際どい仕掛けです。不安定に見えるのによく毎回正しく位置が合うなぁ、と思ってしまいます。
そしてモデルガンを持ってる人みんなが体験したのが、トリガーバーの破損だったと思います。私も一度折りました!亜鉛合金で力のかかる箇所ですから仕方ないことでしたが、近年折れにくい強化版が発売されてファンの悩みも解消して良かったです。
またフレームが複雑な形状をしているのに実銃グリップが無加工で装着できるのは高評価な点です。パックマイヤーやベレッタ純正など輸入されてますので着せ替えて楽しんでいる人も多いでしょう。発売から40年以上、その間センターファイアに改良、エキストラクターのライブ化、刻印の変更、カートリッジの発火方式の改良、ヘビーウエイト材の採用などいろいろありましたが息の長いモデルガンになりました。多くの人に愛される良い製品ですので、後世に残していきたいものですね。

秀逸なマルシン製M84は、もちろんプロップとしても大活躍しています。私が印象深いのはまず東映Vシネマ『野獣駆けろ』です。主人公の高松圭介(神田正輝さん)を襲うヒットマン(御木裕さん)が持って出てきました。パックマイヤーグリップにマルシン純正サイレンサーが付いてます。それを神田さんが奪い取ってサイレンサーを外すのですが、差し込んであるだけなのに根元のネジを回す演技がとてもリアルに感じました。そして護衛している作家(南原宏治さん)の机上にスライドをガチャっと引いてから「引き金ひくだけでいい」と言って置くのです。作家は原稿を書き続けますが、机上にポツンと映るM84が何かを語っているようでした。
次に印象深かったのは、放送終了間際の『太陽にほえろ!』。新係長の山岡英介(舘ひろしさん)ですね!銃撃戦が始まってパッと出した銃がM84でした。彼はガバメントを使うイメージが定着していたので驚いた人も多かったでしょう。ラバーグリップ好きな舘さんらしくこれもパックマイヤー付きでした。
他にも意外なところでM84は活躍しています。『西部警察スペシャル2003』にて敵側ラスボス新美旭(神田正輝さん)が使ったワルサーP99とグロック17の中身です!なんと発砲用プロップはM84にP99やグロックの外側を被せたものでした。その大きさと作動性能の良さから、マルシンのM84はプロップ銃の“中身”として最適だったようです。劇中では見事なブローバックを見せてくれましたし、握ってしまえば映らないのでグリップがM84のままの物も使われました。プロップを作った仲代光希さんのアイディアは凄いものがありました。M84は近年でもサスペンスドラマなどで時々見かける活躍ぶりですね。結局、私は8挺も買ってしまいました。機会があればまだ増えそうです。M84は懐かしい旧友のような気がする存在なのです。
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最後に、私にとって銃とは、“気の置けない友人”です。ネガティブな時や苦しい時、一緒にいると心を和ませてくれる、そんな友人だと思います。


あとがき
ベレッタの84は、1976年にあの92とのセットで世に出ました。今でこそ92シリーズは同社のドル箱ですが、登場当時はマグボタンを左グリップの底へ設置するなど全体に煮え切らないデザインが目立ち、その後米軍のトライアルへ向けた改良の繰り返しによってようやくまともな姿に辿り着きました。それに比べると、84は登場時点で既にパーフェクトでした。見るからに艶やかで使い勝手も良く、おまけに弾もたんまり入る。ベレッタは元々、ミンクスやらM1935といった小型、中型のオートで鳴らしたメーカーです。それらを製造する過程で培った技術の粋を集めた、文字通りの集大成が84だったわけですね。だから自分には、超有名な92系よりも、この84こそがベレッタ中のベレッタであると思えてなりません。
ともあれ、そらごろうのパンダ絵日記さん、思い入れタップリの原稿、本当にありがとうございました。
さてさてこのコーナーでは、出稿希望の読者の方を募集中です。銃が大好きな皆様、それぞれの熱い“想い”を誌面に語ってみませんか? 出稿御希望の方は、 anojyu555@gmail.comまで、 住所、氏名、お電話番号をお知らせください。打ち合わせの上、ご担当頂く銃を決定させていただきます。たくさんのご応募、お待ちしております。
GP Web Editor補足:
日本では“ベレッタM84”と呼ばれる場合が多いですが、この銃が登場した1970年代、ベレッタはモデル番号に“M”を付けなくなりました。この銃の場合は、“Beretta 84”という表記となります。但し、“Model 84”、あるいはその省略形で“Mod.84”と表記する場合もあり、必ずしも一定ではありません。しかし、ベレッタが“M84”と表記することはありません。これは“92”なども同様です。
但し、モデルガンの場合は“ベレッタM84”が正式な商品名となっているため、ここでは実銃に関して“84”、モデルガンは“M84”と表記しました。
Photos by Toshi
Gun Pro Web 2025年10月号
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