2025/08/30
【NEW】SIG SAUER SIG 1911-22【動画あり】
SIGブランドで発売されていた1911スタイルの.22口径拳銃
Text by Terry Yano, Photos by Terry Yano and Yoshi Yano
Special thanks to Nelson Vaughter and Firearm Pharmacy
22口径の拳銃には標的射撃向けやプリンキング向け、そしてデューティサイドアームを小口径化したような製品など、その形態は多種多様だ。銃口先端部にネジが加工されたものは、サイレンサーを装着することで発射音を大幅に低減できる。ここで採り上げるのは、かつてSIGブランドから発売されていた1911スタイルの.22口径拳銃だ。
.22口径銃器の人気
米国でもっともポピュラーな弾薬は22LRで、それらを使用する様々な銃器が発売されている。高品質な競技用銃器もあれば、初心者の指導やプリンキング、害獣駆除などを念頭においた実用銃も数多い。競技用弾には高価なものもあるが、概して22LRは安価であることも広く普及している理由のひとつだ。リコイルが小さく撃ちやすい反面、威力は小さいために護身用/ホームプロテクション用としては頼りない。
しかし、あまり銃器に馴染みのない人でもある程度の練習をすれば、それなりに使いこなせるようになるのが.22口径の利点といえる。どんなに威力の大きな銃弾でも、対象に命中させられなければ意味がない。パワフルな銃を手にしていても持て余すようでは虚勢でしかなく、使いこなせるのであれば豆鉄砲と馬鹿にされようが22LRの方がマシと考えるのは私だけではなかろう。
センターファイアのデューティハンドガンを製造する大手銃器メーカーの多くが、そのラインナップに.22口径拳銃を加えていることからも、それらには一定の需要があることは明らかだ。


SIG米国法人の.22口径拳銃
SIG SAUER(スィグサウワー)はハンドガンやライフルはもちろん、サイレンサーや光学機器、そして各種弾薬などを製造販売する総合メーカーだ。現在、P320系製品の安全性に関して苦しい立場にあるが、詳しくはGun Pro Web 2025年7月号の該当記事を参照していただければと思う。
SIG米国法人は2000年頃にスイスの競技銃器メーカーであるヘンメリー(Hammerli Arms、米国での発音はハマリ)で製造されたトレイルサイド(Trailside)シリーズを発売、これが自社ブランド初の.22口径拳銃となった。集弾性に定評があり、米国での販売がSIGからワルサーに変更されてからは“X-esse”として発売されている。
2003年頃には、GSG(German Sport Guns)で製造されたモスキート(Mosquito)がSIGの製品群に加えられた。これはP226を90%サイズにした興味深い.22口径拳銃であったが、一部の顧客を悩ませていた作動不良を改善するため販売の中断が伝えられたものの、結局は2013年頃にラインナップから姿を消している。モスキートはその後、ATI(American Tactical Inc.)のブランドからGSGファイアフライ(FireFly)として登場し、現在も発売が続けられていることから、モスキート時代の不具合は改善されたのかもしれないが、詳細は不明だ。

本リポートの主役であるSIG1911-22も前述のモスキートと同じくドイツのGSGで作られた製品で、2011年頃にSIGブランドの.22口径拳銃として発売された。モスキートがP226のスケールダウンモデルであったことに対し、SIG1911-22の大きさはガバメントサイズの1911に準じている。2012年でのMSRP(メーカー希望小売価格)は419ドルと手頃で、快調な作動に満足するユーザーも多かった一方、不具合に悩まされた購入者もあり、結局SIGブランドでの発売は中止された。その後、ATI(American Tactical Inc.)からGSG1911として現在も発売されているという経緯は、前述のモスキートを同じようで興味深い。



このほか、SIGからクラシックPシリーズ用やP238用の22LRコンバージョンキット、それらを用いた完成銃が販売された期間もあった。それらの作動方式はいずれもシンプルブローバックで、競技色の強いものからフルサイズ拳銃の形状を模したものまで様々であったが、現時点でSIGのラインナップにある.22口径拳銃は、2022年度の新製品として発売されたP322とそのバリエーションのみとなっている。
Gun Professionals誌2024年5月号で採り上げたP322は内装式ハンマー撃発方式を備え、オプティクスレディのアルミ合金製スライドにポリマーフレームを組み合わせた現代的な製品で、合成樹脂製ダブルスタックマガジンの装弾数は他社製品に大きく差をつける20発を誇った。後に延長25連マガジンも別売され、私もサバイバル用としてのポテンシャルを期待したのだが、ポリマー製マガジンはフル装填したまま放置すると膨らみ、まともに作動しなかったことは苦い思い出だ。当時のSIGの担当者に報告し、膨張しない金属製の多弾数マガジンを提案したのだが、同様の報告はなかったのであろうか、P322用の金属製マガジンはまだ発売されていない。