2013年2月号

2025/08/05

Colt モデル1877 ライトニングリボルバーPart 5  ライトニングリボルバーのバリエーション

 

Text by Masami Tokoi 床井雅美

Photos by Terushi Jimbo 神保照史

 

コルト モデル1877ライトニングリボルバー解説5回目は、38口径のライトニングと41口径のサンダラーについて、1877年の生産開始から1909年の生産終了まで約32年間に製造された、主なバレルバリエーションについて紹介する。

 

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ライトニング出荷開始

 ライトニングリボルバーは、1876年に生産ラインが整えられて、まずサンプル製品が生産され、1876年の万国博覧会(5月から10月までアメリカ フィラデルフィアで開催されたアメリカ合衆国独立100周年記念万国博覧会)で初公開された。また大手の有力代理店にサンプルが提示されて商談が進められ、それと並行して量産が始められた。そして広告が始まったのは1877年1月だ。
 だがすぐに製品が出荷されたわけではない。従来製品と大幅に異なるダブルアクションメカニズムが組み込まれたライトニングリボルバーは、1877年の4~5月になってから大手代理店への出荷が始められた。おそらく発売後に供給が途絶える事態を避けるため、社内で製品備蓄をおこなっていた結果、発売広告から数ヵ月遅れの供給となったものと考えられる。そのためか供給が始まってから出荷が途切れることがなかった。アメリカの代理店だけでなく、重要なマーケットとされたイギリスの大手代理店に対しての供給もスムースに進められた。
 1877年、コルト社から最初に出荷されたのは、38口径のライトニングリボルバーで、この年の末近くなって41口径のサンダラーリボルバーの出荷が始められた。供給が始められた1877年中にコルト社が生産したダブルアクションリボルバーは約35,000挺だったとされている。このうちの約85%以上が38口径のライトニングで占められ、41口径のサンダラーは生産開始が遅かったこともあり残りの10数%に過ぎなかった。
 1909年に製造が停止されるまで、後継機種のダブルアクションリボルバーがコルト社で開発発売されてもライトニングとサンダラーリボルバーの生産は継続された。1877年から1909年までの約32年間に生産された同モデルの総数は166,849挺に達する。

 

▲ライトニングリボルバー  2.5インチバレル仕様

 

▲ライトニングリボルバー  3.5インチバレル仕様

 

ライトニングのバリエーション

 ライトニングリボルバーは、官需装備として警察によって使用されたものの、おもに民間に向けて販売されたこともあり、32年間に多くのバリエーションモデルが製作された。これらのバリエーションモデルの中にはアメリカやイギリスの大手代理店の希望に沿って生産されたものも多く含まれている。

 バリエーションモデルの中で、最もレアとされるのは32コルト弾薬を使用するもので、約200挺が生産されたことが知られている。この口径のライトニングリボルバーは、大手代理店からの特別注文で製作されたと考えられ、少量生産されただけで終わった。この32口径リボルバーにつけられた製品ニックネームはRainmaker(レインメーカー:雨雲)とされているが、この製品ニックネームの出所は確定されていない。
 38口径のライトニングや41口径のサンダラーをベースにして32口径に改造されたフェイクのレインメーカーも存在するが、そうではない正真正銘の32口径レインメーカーは、コレクターの間でかなり高額で取引されているようだ。
 38口径、41口径、32口径とは異なる口径のライトニングリボルバーも生産された可能性はゼロではない。しかし、そのような記録はないし、現在までに確認された現物も存在しない。

 

▲ライトニングリボルバー 4インチバレル仕様、エジェクターなしだが、変則的に小型軸頭のシリンダーセンターピンが組み込まれている。


 バリエーションとして一般に広く知られているのは、バレルの右側面にエジェクターを装備させたものと、エジェクターなしのものだ。
 1877年に最初に供給されたライトニングリボルバーはエジェクターを装備していないものだった。護身用リボルバーとして、弾薬を再装填して使用し続けることはあまり想定されず、よりコンパクトで軽くするためシンプルにしたとされている。通常このモデルには大きな軸頭を備えたシリンダーセンターピンが組み込まれている。発射後シリンダーから空薬莢が取り出しにくい場合、シリンダーセンターピンを抜いてシリンダーを取り出しシリンダーセンターピンを代用エジェクターとして利用しやすくするための配慮だ。

 

▲ライトニングリボルバー  6インチバレル仕様、エジェクターなし、ニッケルメッキ仕上げ


 射撃後シリンダーから空薬莢が容易に取り出やすいほうがよいことはいうまでもない。エジェクターが装備されていないライトニングリボルバーの供給を受けたイギリスの大手コルト代理店のBaron Frederick von Oppen (フレリック・フォン・オッペン男爵)は、エジェクターを装備していないことがライトニングリボルバーの欠点だと指摘した。イギリスでは、ライトニングリボルバーを単なる民間向けの護身用リボルバーではなく、軍の将校用としても想定していたため、エジェクター装備が不可欠だとした。同じような指摘はアメリカでもあった。

 

▲ライトニングリボルバー 4.5インチバレル仕様、エジェクター装備


 これらを受けて、1878年5月にコルト社は、SAAリボルバーのものと同型のエジェクターをライトニングリボルバーにも装備させる決断をする。エジェクター導入後はシリンダーセンターピンを代用エジェクターとして利用することがなくなったことから、大きかった軸頭が小さな短いものに変更されて軽量化された。
 このとき導入された形式のエジェクターは、その構造から4.5インチ以下の長さのバレルには対応できない。エジェクターの導入後も短いバレルを装備するライトニングリボルバーはエジェクターを装備しない状態で供給が続けられた。コルト社は短いバレルにも組み込めるエジェクターをいくつか試作したが、結局製品化されなかった。

 

▲ライトニングリボルバー、6インチバレル仕様、エジェクター装備

 

 外見上で最も目立ち、バリエーション機種が多いのがバレルの長さだ。メーカーとしてももっとも特別注文に応じやすいこともあり、1.5インチの短いものから最長10インチの長いものまで様々な長さのバレルが知られている。エジェクターを装備していないライトニングリボルバーのスタンダードバレルは2.5インチと3.5インチだ。もともと警察の武装や民間人の護身用をコンセプトとして設計されたライトニングリボルバーはこれらの長さのバレルを基本としていた。判明している1877年中に生産されたライトニングおよびサンダラーリボルバーの総数約35,000挺の中で3.5インチバレル装備のものが73%を占めていた。

 

▲サンダラーリボルバー、2.5インチバレル仕様


 他方エジェクターを装備させたライトニングリボルバーでは4.5インチから6インチまでのものが一般的なバレルとなっている。バレルに装備されたフロントサイトにもいくつかのバリエーションがある。その素材のバリエーションとしてジャーマンシルバー(洋銀)を素材とした銀色のものと、スチールを使用したブルーのものが知られている。とくに初期の1877年中に生産されたライトニングリボルバーでは75%以上がジャーマンシルバー(洋銀)を素材とした銀色のフロントサイトを装備していた。

 

▲サンダラーリボルバー、4.5インチバレル仕様、エジェクター装備

 

 バレルの長さと同様に外見上目立つバリエーションは表面の仕上げだ。スタンダードモデルはメインフレームをケースハードゥンフィニッシュとし、これにブルーイングしたバレル、シリンダー、トリガーガード、グリップバックストラップを組み合わせてある。生産初年度の1877年中に生産されたスタンダードモデルは意外に少なく、わずか29%ほどだった。また、後にはメインフレームもブルーイングしたライトニングリボルバーも供給された。
 民間向けのため、表面全体をニッケルメッキ仕上げした製品も多数供給された。表面をニッケルメッキ仕上げしたリボルバーはさびにくく、高級感があるところから当時人気があり、発売初年度の1877年中に生産された約35,000挺の中の62%がニッケルメッキ仕上げのものだった。表面仕上げは、これらのほかにさらに高級感のある銀メッキや金メッキしたものも供給された。加えて、表面にコルト社専属のエングレーバー(金属彫刻師)が彫刻を施したファクトリーエングレーブモデルと呼ばれるデラックス仕様も製作された。
 部分的なバリエーションとしてグリップがある。初期のライトニングリボルバーにはブラジルから輸入したローズウッドを素材として表面全体にチェッカーを入れたワンピースグリップが装着された。しかし、手加工で削り、表面にチェッカーを彫りこむこのローズウッドグリップは単価が高い。そこでコルト社は、より単価が安く、大量生産に向いたハードラバーグリップに変更することにした。ハードラバーは硬化ゴムとも呼ばれる素材で、生ゴムに硫黄を加えて硬化させ、モールドで成型する。このハードラバーで成型されたグリップは、最初ローズウッドグリップをコピーしたワンピースのグリップが製作された。続いてグリップの左右側面上部にコルト社トレードマークのランパートコルトを入れたワンピースのハードラバーグリップが製作された。その後、左右のグリップパネルに分離させネジでフレームと固定させるツーピースグリップに変更された。
 ハードラバーグリップがスタンダードとなった後もローズウッドグリップは特別注文で供給された。またデラックスモデルには象牙を素材とするアイボリーグリップや白蝶貝を素材とするパールグリップも供給された。
 通常ライトニングリボルバーは、ボール紙で作られた箱に1挺ずつ収められて出荷された。デラックスモデルの多くやニッケルメッキモデル、スタンダードモデルの一部はオーク材で製作された専用収納ボックスに収めて供給された。これらの収納ボックスに収められた製品は、ボックスドモデルと呼ばれている。

 

▲サンダラーリボルバー、6インチバレル仕様、エジェクター装備


 ヨーロッパの有産階級の間では、もともとボックスドモデルが一般的だった。そのためもあり、イギリス向けには多数のボックスドモデルのライトニングリボルバーが輸出された。コルト社が供給したオーク材の収納ボックスは、アメリカで製作されたものと本場のイギリスから輸入されたものがある。イギリスの代理店を経由してイギリスで販売されたライトニングリボルバーの中には、イギリス本国で収納ボックスを手配してこれに収めて販売されたものもあった。そのため多くの種類の収納ボックスに収められたライトニングリボルバーが存在する。
 生産初年度の1877年中にコルト社で生産された約35,000挺のライトニングリボルバーの約4%がボックスドピストルとして出荷された。

 

“Part 6  コルト初期型ダブルアクションの系譜”に続く

 

Text by Masami Tokoi    床井雅美  
Photos by Terushi Jimbo  神保照史

 

Gun Pro Web 2023年2月号掲載 再構成

 

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