2025/08/02
コルト モデル1877 ライトニングリボルバー Part 4 ライトニングリボルバーの刻印
Text by Masami Tokoi 床井雅美
Photos by Terushi Jimbo 神保照史
2023年2月号掲載 再編集
コルト モデル1877ライトニングリボルバー解説の4回目は、この銃の刻印について解説させて頂く。刻印はそこから様々なことが読み取れる重要な手掛かりなのだ。
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ライトニングリボルバーとサンダラーリボルバーに打刻された刻印は口径表示を除いて基本的に同一だ。バレル上面に製造メーカー名とアドレスが2ラインで刻印されている。

これに加え、植民地などに赴任する軍人や役人、そして民間人の護身用としての需要に対応すべくイギリスに輸出されたものは、コルト社の販売代理店だったPaul Mall(英国英語でペルメル、米国英語ではポールモール)社が取り扱ったものには、Paul Mall社の刻印が打刻されたものがある。
Paul Mallは、日本人にとってタバコの名前としてよく知られている。だが、この会社はタバコ会社ではない。イギリス軍の兵士は武器や軍服、装備品を政府から支給される。しかし、イギリス軍将校は、軍服や装備品、そしてピストルやサーベルなどの武器も自費で購入して揃えなくてはならなかった。イギリスのロンドンに本拠を置くPaul Mall社は、このイギリス軍将校向けの装備品のすべてを扱う商社で、アメリカコルト社製品の代理店でもあった。同社は軍人向けの装備品や武器を販売すると同時に、民間の男性向けの商品も販売した。その一環としてPaul Mallブランドのタバコや葉巻、喫煙具なども販売していた。また民間人に向けてコルト社のリボルバーも販売した。
イギリス向けのライトニングリボルバーは、最初バレル上面にコルト社の社名とアドレスを2ラインで打刻したアメリカ向けと同一のものが供給された。1878年になるとイギリス Paul Mall社が取り扱うライトニングリボルバーにはアメリカ向けの刻印に加えて“DEPOT 14 PALL MALL LONDON”の刻印が追加され、3ラインとなった。このPaul Mallの刻印はコルト社のアドレス刻印と活字が微妙に異なるところからイギリスで打刻された可能性がある。

ライトニングリボルバーやサンダラーリボルバーの口径表示は、通常バレル左側面に刻印された。この口径表示はモデル名もかねており、ライトニングリボルバーは、”38D.A."(D.A.はダブルアクションを意味しており、発売当時このリボルバーがコルト社が供給する唯一のダブルアクションリボルバーだった)と刻印され、サンダラーリボルバーは“41D.A. ”と刻印された。

初期に生産されたライトニングリボルバーの口径表示は腐食刻印で、楕円形の梨地ベースに口径表示が浮き上がるようになっていた。腐食刻印は浅く、使用していると薄れて判読しにくくなるためか、後にポンチ刻印をハンマーで打ち込む一般的な刻印に改められた。


初期に製作されたライトニングリボルバーは、トリガーガード左側面の後端に小さく口径表示が打刻されていた。このトリガーガード左側面後端部に口径を打刻する表示は、コルト社が歴代のパーカッションリボルバーで伝統的に用いてきた方法でもある。

メインフレームの左側面には、3つのアメリカパテント取得日表示が3ラインで並べて刻印されている。このアメリカパテント取得日表示刻印は、上からPAT.SEP.19.1871.(1871年9月19日)、2段目は” ” 15.”74.とあり、これはPAT.SEP.15.1874.(1874年9月15日)を意味する。3段目は” JAN.19.”75.”でPAT.JAN.19.1875.(1875年1月19日)となっている。

1871年9月19日のパテントは、Charles Brinckerhoff Richards (チャールス・B・リチャーズ)が取得したU.S.パテント119,048で、ハウスリボルバー(クローバーリーフ)とそのシリンダーハンドに関するものだ。
1874年9月15日のパテントは、ウィリアム・メイソンが取得したU.S.パテント155,095で、ニューラインリボルバーとそのシリンダー後面を利用するシリンダーストップに関するものを指す。
1875年1月19日のパテントは、同じくメイソンが取得したU.S.パテント158,957で、コルトSAAリボルバーとそのエジェクターや弾薬のローディングゲート(弾薬装填孔)に関するものとなっている。
これらのパテント刻印は、コルト社で製造されるリボルバーが他社でコピーされないようにするために打刻された。
しかし不思議なことに、ライトニングリボルバーやサンダラーリボルバーにはこれらのリボルバーの最大の特徴であるダブルアクションメカニズムに関するパテントの表示がない。
なんとライトニングの発売までに、コルト社、あるいはメイソンが、リボルバーに組み込まれたダブルアクションメカニズムに関してパテントを取得した形跡が無いのだ。
メイソンが類似のダブルアクションメカニズムに関するU.S.パテントを取得するのは、コルト モデル1878フロンティア ダブルアクションリボルバーが発売された後の1881年になってからだった。1981年9月20日にウィリアム・メイソンの取得したU.S.パテント247,374は、メイソンが考案したダブルアクションリボルバーとそのローディングゲートに関してのものだ。
しかし、このパテントに記載されているダブルアクションメカニズムは、ライトニングリボルバーに組み込まれていたものと異なっており、ハンマー下方に設定されたシアの形状、そして何よりパテントに描かれたリボルバーの外形から明らかにコルト モデル1878フロンティア ダブルアクションリボルバーのダブルアクションメカニズムに関してのものだった。
結局、ライトニングリボルバーのダブルアクションメカニズムに関するU.S.パテントは取得されなかったようだ。
ライトニングリボルバーのシリアルナンバーは、トリガーガードやメインフレーム下面の先端部に並べて刻印されている。また、グリップのバックストラップ下面の先端部分にもシリアルナンバーが刻印された。

Part 5 ライトニングリボルバーのバリエーションに続く
Text by Masami Tokoi 床井雅美
Photos by Terushi Jimbo 神保照史
Gun Pro Web 2023年2月号
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