2025/07/27
【NEW】タナカ SIG P228 M11 Evolution 2 オールHW
タナカのM11は1992年に米軍に採用されたコンパクトコンバットピストルM11を再現した製品ではなく、2012年に民間市場向けに発売となったM11-A1でもない。2011(2010?)年にドイツで再生産され、米軍に納入されたM11をイメージしたモデルガンなのだ。
アメリカ軍が装備するハンドガンでMまたはMkナンバーが与えられているモデルは、複数の候補となった銃が存在し、トライアルを実施した上で選定されたものだと思いがちだ。しかし、必ずしもそういった経緯を経て採用されているとは限らない。1992年に制定され、陸軍CID、空軍OSI、海軍航空犯罪捜査局など、多くの組織で使用されてきたM11も、明確なトライアルをおこなわずして採用されたと思われるハンドガンのひとつだ。
1990年に設立されたSIG ArmsトレーニングアカデミーにいたGeorge Harris(ジョージ・ハリス)が、P228をM11にした立役者だったといえる。
それまでアメリカ軍が小型ハンドガンとして使用してきた38口径リボルバーの後継モデルを国防総省が1990年に選定開始する際、最有力候補はSIG SAUER P225であった。P220を9×19mm専用として小型化したP225は、1976年から1979年までの間に実施された西ドイツ州警察統一ピストル選定の際、高く評価され、もっとも多くの州に採用されたモデルだ。8連のシングルスタックマガジンを装備している。一方、1989年に開発されたP228は、P226のコンパクト仕様で、ダブルスタックの13連マガジンを使用するものだ。厚みは増すもののその全長はP225とほとんど変わらない。
ジョージ・ハリスは、国防総省のコンパクト コンバットピストル プロジェクトの選定会議の席上、P225についてのプレゼンテーションをおこないつつ、P228についてもその利点を紹介した。これが功を奏し、1990年10月にアメリカ軍がXM11の要求仕様を発表した際に、その内容はP228を想定したものとなっていた。
公式なトライアルは1992年1月にアバディーンで実施されたが、この時、P228の他にどのハンドガンがテストされたかはっきりとはわからない。ベレッタもテストされたという説もあるが、92系では大きさ的に要求仕様に合致しないであろうし、8000シリーズ(Cougar)はまだ無かった。S&Wがこれに挑戦したという話は全く聞こえてこない。いずれにしても、このトライアルに合格したP228は同年4月23日に正式に発注され、これがM11となった。

これ以降に納入されたM11は25,000挺であったといわれており、軍内部の犯罪調査部門や空軍パイロットなど、小型のコンバットピストルを必要とする部署に支給されている。
しかし、その調達期間はあまり長くなかったようだ。なぜなら、数年後にP228の製造は終了してしまっている。
SIG SAUERは、1990年に誕生した40S&W弾の人気を受けて、P226や228をこの口径に対応させようとした。しかし、厚いシートメタルをプレス加工してスライドの外装部を製造し、これとは別にスチールブロックから削り出したブリーチ部を組み込んでロールピンで固定するという、当時SIG SAUERが用いていたスライド製造方法では、40S&Wに対する耐久性がじゅうぶんではないという判断に至った。そのためスライドの製造方法を、ステンレスブロックからCNCで削り出すことに変更した新型P229を1992年に開発し、これを発表した。M11が採用されたのと同じ年だ。

P229は40S&W専用であったが、1994年にこれをネックダウンした357SIGが登場し、その後に9×19mmにも拡させている。これを受けて、P228は製造を終了した。したがってM11の製造供給もできなくなったと考えるべきだろう。
M11の採用から約18年が経過した2011年(2010年という説もある)、アメリカ空軍はM11の一部が老朽化したため、追加調達を試みた。しかし、P228はずっと前に製造が終了している。本来であれば、新しいモデルに切り替えるべきタイミングだが、空軍は同じ規格のM11を欲した。理由はいろいろあるだろうが、突き詰めればM11でなんら不満がなかったということだ。
これを受けてM11を再生産したのが、アメリカのSIG SAUER, Inc(2007年にSIG Armsから社名変更)ではなく、当時まだ存在していたドイツのSIG SAUER GmbHだ。1992年とほぼ同じ仕様のM11を製造し、アメリカ軍に納入したのだ。スライドもステンレスの削り出しではなく、わざわざシートメタルのプレス加工によるものとし、すべてをドイツで製造している。かつては最先端の製造方法も、時代が変わって廃れてしまったが、さすがはドイツ、その製造ノウハウは残していたのだ。
この時に製造され、アメリカ軍に納入されたM11は、約40挺が余剰に製造された。アメリカのSIG SAUERはこの余剰分のM11を“M11b”という名称にして民間市場に販売している。
このM11再生産がきっかけになったのかは不明だが、2012年にSIG SAUERはM11-A1を新規発売した。しかし、このM11-A1はM11に似ているものP229-1と呼ばれる2009年頃に登場した新型P229がベースとなっている。新型は、旧P229のアップデートモデルで、ロッキングインサートやエキストラクターがユニバーサルタイプとなり、マガジンもかつてのP228用と比べてやや太くなっているものだ。その結果、装弾数は13発から15発へ増えている。新型P229-1のスライドデザインはP228と近いものとなっていたので、M11-A1の発売には好都合だっただろう。

タナカが製造するM11は、この2011年(2010年かも)にドイツで再生産してアメリカ軍に納入したタイプをイメージしたモデルガンだ。2020年11月にもタナカはM11を製造したが、それはフレームHWだった。今回はスライドもHW材となっている。すなわち、スライド、フレーム、グリップがHW樹脂で、バレルは特殊ABSだ。
セラコート塗装のUIDプレート付きで、操作レバー類をグレーフィニッシュとしている。これにより、雰囲気はかなり、現代的になっている。

2019年にタナカP226がエボリューション2対応となって以来、もう6年近くが経過した。すなわちじゅうぶんなタイムプルーフが成され、外観だけでなく、発火性能、作動性、耐久性、メンテナンス性、そのすべてにおいて満足できる完成度に到達している。
アメリカ軍が約20年という時間を置いても改めて欲したM11、そのモデルガンをぜひ手にしていただきたい。
タナカ
SIG P228 M11 エボリューション2 オールHW
全長:178cm
重量:約660g(カートリッジ未装填状態)
装弾数:13発
主要材質:HW樹脂+亜鉛ダイキャスト
仕様:5mmキャップ使用発火式モデルガン
付属品:9mm快音Evolution 2 発火カートリッジ5発
価格:¥47,080 (税込)
8月中旬発売予定
お問い合わせ先:タナカ
TEXT:GPW Editor
Gun Pro Web 2025年9月号
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