2025/06/05
【NEW】Time Warp 1989 ヨネザワ コルト ガバメント ゴールドカップ
Time Warp 1989 ヨネザワ コルトガバメント ゴールドカップ
ガスブロでフルオート!その独創的なメカニズム
Text & illustration by 池上ヒロシ あきゅらぼ
協力:サタデーナイトスペシャル
1989年、ガス圧によってスライドが後退する、現代に通ずるガスブローバックが登場し始める年に、ヨネザワは異なるアプローチのブローバックガバメントを製品化している。これはきわめて凝った構造で、フルオート機能まで搭載した意欲作であった。
国産エアソフトガンで初のガスブローバックは、1986年に東京マルイから発売されたM59(2021年7月号で解説)だとされている。通常状態ではスライドはスプリングの力で後退していて、ガスを入れるとガス圧によりスライドが前進。トリガーを引くとシリンダー内に蓄えられたガスを使ってBB弾を発射、ガス圧が下がってスライドがスプリングの力で後退、すぐにガスがシリンダー内に流れ込んでスライドが前進するという仕組みのものだ。
現在主流のガスブローバック(スプリングの力でスライドが前進、ガスの力で後退するもの)とは全く逆となっている。
これはエアコッキングや固定スライドが当たり前だった時代に登場したガスブローバックであり、さぞ「これぞ実銃の動きを再現した超リアルなガスガン!」と大反響だったのではと思いたくなるが、実際のところは「面白いギミックが付いた楽しいおもちゃ」というような受け止め方をする人が多かったようだ。
実銃のオートマチックがどういう仕組みで動いているのかを考えれば、現在主流のガスバック・スプリング前進方式のほうが、より“リアル”なメカニズムだと言える。射手が感じることのできる手応えもリアルなものになるし、なにより内部構造(スプリング類の配置など)も実銃に近くなる。
技術が進歩して迫力あるブローバックが可能になってくると、ほぼ市場にあるガスブローバックはガスバック・スプリング前進方式だけになったのも、そのリアルな感触がユーザーに受け入れられたからだろう。
一方でスプリングバック・ガス前進方式は、ただスライドが前後動するギミックを再現することだけを考えれば、スプリングバック・ガス前進方式にもメリットはあり、合理的なやり方だったのかもしれない。しかし、いろいろとリアルではない部分が多かったこと――例えば実銃であればスライドを前進させるスプリングが入っているべき場所に、逆にスライドを後退させるためのスプリングが入っているなど――が積み重なり、ユーザーの強い支持を得られずに歴史から消えていった。

今回撮影した個体はヨネザワブランドにて発売されたものではなく、1992年に“クリエイト21”というよくわからないブランドから、“コルト ガバメント スーパー80”という名前で発売されたフレームシルバーカスタムだ。32連マガジンが付属するなどのアレンジがあり、ヨネザワブランドの製品と全く同じものではない。
ヨネザワ コルトガバメント ゴールドカップ
全長:231mm
重量:473g
装弾数:11発
発売当時の価格:\6,600(ブラックカスタム\7,800、フレームシルバーカスタム\8,800、セミオートのみ\4,980)
1989年発売
(1992年発売のクリエイト21 コルトガバメントスーパー80の価格は確認できませんでした)

ヨネザワのコルトガバメントゴールドカップは対象年齢10歳以上用、クリエイト21は18歳以上用となっている。パワー設定が違うのかはわからない。またヨネザワはブースターケーブル等が同梱されていたのに対し、クリエイト21にはそれがなく、32連マガジンが付く。クリエイト21の取説にはブースターケーブルについても言及されており、オプション扱いであった。さらに1990年に発売されたグリーンガスを使用するための解説もそこに載っていた。
クリエイト21がどのような業務形態だったのかは不明だが、製品のアフターサービスは啓平社が行なうことが、パッケージに記されている。おそらくヨネザワのガバメントを含めて、実際の製造は兵平社であったことが窺える。
今回ご紹介するヨネザワ ガバメントは、東京マルイのM59、ブローニングハイパワーなどの発展型といえるスプリングバック・ガス前進方式のガスブローバックだ。東京マルイはグリップ内に大きなガスボンベを収納する関係で、BB弾をグリップ部ではなく、スライド後部からチューブマガジン形式で装填するようになっていたのと違い、ヨネザワ ガバメントではちゃんとグリップ内にBB弾を装填したマガジンから給弾する(細い割り箸マガジンではあったが)。
トリガーもDAではなく、あらかじめコッキングされた状態のハンマーのシアを外して撃発するという方式となった(トリガー、シア、ハンマーのレイアウトは実銃とはかなり異なる独創的なものではあるのだが)。
さらに実銃にはないギミックとして、スライド側面にあるレバーを動かすことでフルオート射撃までも可能とするなど、かなり凝っていた。ハンドガンで、ガスブローバックで、さらにフルオートである。スペック的には、当時の一般的な基準を大幅に超えた先進的なものだったことは間違いない。

右:おそらくMGCのモデルガンGM4 ゴールドカップナショナルマッチを参考にしたのだろう。イライアソンサイトが再現されている。上下方向は固定(スライドと一体のモールド)で、動かせるのは左右だけだ。

右:トリガーの上にある棒状のスライドレバーは、セミフルのセレクターだ。前方にスライドさせた状態(写真の状態)でセミ、後にスライドさせるとフルオートになる。
発売から少し経ってから旧Gun誌に詳細な記事が掲載されている。けっこう強引に分解して内部メカニズムを撮影している意欲的な記事だ。どういった仕組みで動いているのかを中身の写真と文章で説明しているのだが、残念ながらこれが非常にわかりにくい。
パーツが動いているわけでもないのに、同じ内部写真のアングルを替えただけのものが複数掲載されていたりする。メカニズムを理解するために、キャプションと写真を見比べ、どのパーツがどう動いたのかを必死になって探すのだが、これを理解することはかなり難しい。それほどまでにこの製品は複雑なメカニズムで作動するのだ。
どんなメカニズムなのか? 一言でいえば精密機械だ。いくつもの小さいパーツが連動して動く。それも単に「パーツAがパーツBを動かす」というだけで終わらず、「パーツAがパーツBを動かし、そのパーツBがパーツCを動かし、その結果パーツAとパーツCが接触して特定の動きをする」という具合に、高度なドミノ倒しというかピタゴラ装置めいたメカニズムである。
そしてそれらのパーツは、すべて左右モナカ合わせになっているプラスチック製のフレーム内部のレールに沿って動くのだ。内部パーツもほぼすべてがプラスチック製で、ハンマーやネジ、スプリングなど、それとインナーバレルを除けば金属部品はほぼ使われていない。フレーム内部の、複雑に入り組んだリブ(レール)とその上を動く数多くの小さいパーツ類を見ていると、これはもういっそ(今のガスブローバックのように)フレーム内部に金属シャーシを埋め込むやり方にしたほうが安上がりになるのではないかと思えるほどだ。
想像するに、玩具銃には金属パーツはできるだけ使いたくないというような考え方を、当時のエアソフトガンメーカーの一部は持っていたのではないか。おもちゃの銃はおもちゃらしく、金属パーツを多用したり威力を上げたりするのではなく、撃って、面白くて、楽しい安全なものであるべきだ――というような考え方だ。決して間違った考えというわけではないと思う。スプリングバック式のブローバックというのも、この玩具銃らしい面白さを実現するという点では優れたシステムと言える。
ただ、そういうメーカーにとって想定外だったと思われることは、1980年代後半から始まるサバイバルゲームの大ブームによって、エアソフトガンに求められるものが劇的に変化したことだ。屋外に持ち出して原っぱや野山を駆けずり回りながら(当時は専用のサバイバルゲームフィールドなどはまだ無かった)、一度に何百発も、1日に何千発も撃ちまくるなんていう、およそ玩具に求められる水準を遥かに超えた扱い方をされるようになっただけでなく、そのエアソフトガンから発射されるBB弾がどれだけ遠くまで飛ぶか、どれだけ正確に狙ったところに当たるかによって、ゲームの勝敗が大きく左右されるようになった。
そういったニーズに対応したすごく高性能で、高価なエアソフトガンが次々に発売されるようになり、そうなってくると、おもちゃの銃はおもちゃらしく――なんてのんびりしたことは言ってられなくなる。
射撃時にスライドがカチャカチャと動き、さらにはフルオートで撃つことまでできる。おもちゃの銃として見れば、ヨネザワ ガバメントは間違いなくとんでもないハイスペックで、最高峰に分類されるものだ。しかし、当時主流になりはじめていた(サバイバルゲームに使う)エアソフトガンとして見たときには、それはどうしても中途半端なものに見えてしまったのだろう。
その結果、ほとんど話題にもならず、ほぼ同時期に登場してきたガスバック・スプリング前進方式のガスブローバックの影に隠れてしまった。
約3年後にクリエイト21のブランドで、コルトガバメントスーパー80として再登場したが、こちらに至ってはその存在を記憶している人すらほとんどいない。

右:スライドが後退した、いわゆるホールドオープン状態……といってもエジェクションポートは閉じたままで中は見えない。そのストロークもかなり短い。このエアソフトガンはこれが通常で、ガスを入れてトリガーを引くとシリンダーに流れ込んだガス圧によってスライドが前進する。
