2025年6月号

2025/04/27

【NEW】タナカ ベレッタ92FS Evolution 2 HW

 

92 SB-Fハリウッドバージョン、M9、92FS INOXと続いてきたタナカの92モデルガンシリーズに、もっともスタンダードな92FSが加わる。92系に関しては、ここ数ヵ月の間に何度も解説してきたので、今回は異なる側面から92を語ってみたい。

 

92FS, M9のダブルアクショントリガー

 現在のセミオートマチックハンドガンの撃発方式は、プレコック、またはシングルアクションのストライカーファイアードが主流で、シングル/ダブルアクションを組み合わせたトラディショナルダブルアクションを圧倒している。トリガーが毎回均一な圧力とトラベルで引けて、且つ軽いというストライカーファイアードは、多くの人達に受け入れられた。
 1970年代後半から広く普及し始めたトラディショナルダブルアクションは、ハンマーをデコッキングすることにより、銃の中にプライマーを叩くstored energy(ストアードエナジー:力の備蓄)がないという安全性を確保しつつ、ダブルアクションでトリガーを引くだけで撃てるという即応性の高さが評価されてきた。
 しかし、80年代半ばに登場したグロックのセイフアクションは、新しい流れを作り出すことに成功する。そのトリガーシステムが持つシンプルさとトリガートラベルの短さを経験することで、多くの人達がストライカーファイアードを選ぶようになり、当初は懐疑的だった各メーカーもその流れに追従し始めた。そしてこの状態は20年近く続いている。

 

▲優美さと力強さを併せ持つ92FSのデザイン。スライド、フレームだけでなく、バレルもHW樹脂で作られている。


 ベレッタ92シリーズは、トラディショナルダブルアクションのセミオートハンドガンの代表的機種で、92FSやM9はそのベーシックモデルだ。プレコックやシングルアクションばかりを撃ってきた人が92FSやM9を手にすると、そのダブルアクショントリガーの重さに驚く。そしてこんなに重く、長いトリガートラベルでは正確な射撃はまず望めないと思うらしい。
 確かにかつてのアメリカ軍のサービスピストルであったM9のトリガーは重い。しかし、それには訳がある。アメリカ軍は、同盟国が採用するすべての9×19mm弾を確実に撃てるよう、強い打撃力をM9のハンマーに求めた。国によっては硬いプライマーの弾薬を採用している。それであってもM9は問題なく撃てなければならない。有事の際には、同盟国が用意した弾薬を使用する可能性があるからだ。

 その結果、M9のハンマースプリングは20ポンドという規格になった。これにより、M9のダブルアクショントリガーは、最大で16.5ポンド(約7.5kg)にもなってしまった(実際はもう少し軽い場合が多いようだが)。ここまで重くなれば、正確な射撃が難しいと感じるのも無理もない。
 しかし、アメリカ軍はそんなM9を30年以上もサービスピストルとして使い続けてきた。特殊部隊などでは、M9ではなく1911、P226、グロックなどを装備したりする場合が少なくないが、M9を装備した特殊部隊も多く、彼らは驚くほどの正確さで射撃する。したがってダブルアクショントリガーが重すぎて正確な射撃ができない、という声はやや誇張されたものだといえるだろう。
 M9の市販型、およびそのコマーシャルモデルである92FSも、基本的には軍用M9に準じた規格で製造販売されてきたので、そのダブルアクショントリガーは重い。
 しかし、92FSを実用的に使いこなす上で、トリガープルに関してはごく簡単に改善することができる。ハンマースプリングを軽いものに替えれば良いのだ。

 

▲スライド左面下部にはラージハンマーピン用のスロットが加工されている。グリップにはウエイトが追加されてバランスが向上した。またグリップスクリューの位置が修正されたことで、実銃用のグリップの多くが装着できるようになっている(特殊な形状のグリップを除く)。


 昔から言われてきたのが、1911のハンマースプリングに交換するというお手軽改造で、それだけでもかなりトリガープルが軽くなる。それでも、通常手に入るファクトリーアモや市販のプライマーなら、まず不発になることもない。但し、1911のハンマースプリングはやや短く、長期的に使っていると問題が生じる可能性がある。
 そこで言われ始めたのが、92のDAO(ダブルアクションオンリー)モデルである92Dのハンマースプリングを92FSに装着するというものだ。毎回ダブルアクションで射撃する92Dのハンマースプリングは圧倒的に軟らかい。ファクトリーアモなら、これで確実に撃発できる。もちろんリロード弾もOKだ。市販のプライマーに硬すぎるものはない。しかし、DAOの時代はとっくに過ぎ去ってしまい、92Dはカタログから消えて久しい。それでも適合する軟らかいハンマースプリングは手に入る。
 現在、Langdon Tactical(ラングドンタクティカル)から、92用クロームシリコンハンマースプリングが販売されており、12ポンド、13ポンド、14ポンドの3種類があるのだ。お値段は1本8ドル。これに交換するだけで、92FSのDAのプルは1.4kgから1.8kg軽くなり、大幅な改善が図れる。
 ほかにもパフォーマンストリガーバーやショートリーチスチールトリガー、マッチハンマーといったラングドンタクティカルのカスタムパーツを加えていけば、トリガーフィーリングが変わる。とにかくハンマースプリングを変えるだけでも、92FSはかなり使いやすくなるのだ。92FS用軽量ハンマースプリングはWolffなども発売している。
 このように少しだけ手を加えることで、トラディショナルダブルアクションの92FSもそのパフォーマンスは大幅に向上する。92は決して過去のものではないのだ。ベレッタは92Xパフォーマンスや92GTSなどを次々と製品化させ、まだまだ92シリーズを発展させていく方針だ。9FSもその基本となるモデルとして作り続けられるだろう。

 

▲Evolution 2のリアサイトは金属の別パーツだ。M9とは異なり、92FSのサイトは、ホワイトの3ダットサイトとなっている。


 タナカの92FSは、ラージハンマーピンを採用した頃のアメリカ製モデルを再現したものだ。今回のEvolution 2アップグレードで、衝撃吸収バッファーパーツの追加や、プレス部品に対する防錆・潤滑処理など20カ所以上に及ぶ改良を施している。その結果、安心して発火を楽しめる高い性能のモデルガンに進化した。
 樹脂製のモデルガンは、破損防止の観点から使われているスプリングは実銃より弱めになっている場合が多い。ハンマースプリングは特にその傾向が強いパーツだろう。試しにタナカ92FSのダブルアクションプルを測定してみたところ4.21kgと出た。この重さは実銃に概ね13ポンド前後のハンマースプリングを組み込んだ場合に近いかもしれない。

▲タナカ92FSダブルアクショントリガーをLymanトリガープルゲージで測定したところ、4.21kg前後となった。実銃よりだいぶ軽い。但し、トリガープルの感触は数値だけで決まるものではない。

 

 

タナカ
ベレッタ 92FSエボリューション2 HW


全長:216mm
重量:約850g(カートなし)
装弾数:15発
主要材質:HW樹脂+亜鉛ダイキャスト
仕様:5mmキャップ火薬使用発火式モデルガン
9mm快音Evolution 2発火カートリッジ 5発付属
価格:¥50,380(税込)
付属品 9mm快音Evolution.2発火カートリッジ 5発付
5月中旬発売予定
お問い合わせ先:タナカ

 

TEXT:GPW Editor

 

Gun Pro Web 2025年6月号

 

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