2025/07/07
MGC NEW GOVERNMENT【Vintage Model-gun Collection No.13】
Vintage Model-gun Collection -No.13-
MGC
NEW GOVERNMENT
(1976年)
Text & Photos by くろがね ゆう
Gun Professionals 2013年4月号に掲載
わずか1年ほどしか国内販売されなかった幻のモデルガンの1つ。MGC最後の本気で作った金属製ハンドガンとも呼ばれ、仕上げの良さ、リアルなショート・リコイルのメカニズムが特長だった。しかし時代はブローバックとプラスチックに移行しつつあり、発売当時はあまり話題とならなかった。法律で販売が禁じられてから評価の高まった悲劇のモデルガンでもある。



諸元
メーカー:MGC
名称:ニュー・ガバメント
主材質:亜鉛合金
撃発機構:ファイアリング・プレート
発火機構:前撃針
カートリッジ:ソリッド・タイプ
使用火薬:平玉紙火薬2~4粒
全長:216mm
重量:1,000g
口径:.45
装弾数:7発
発売年:1976年(昭和51年)
発売当時価格:¥5,500( カートリッジ別売)
オプション:カートリッジ6発¥450、マッチ・タイプ・グリップ¥700、ローズウッド・グリップ¥1,000、ピストル・スコープ ¥2,200、取り付けマウント¥400、トップリング・レンチ¥150
※smG規格(1977年)以前の模擬銃器(金属製モデルガン)は売買禁止。違反すると1年以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。(2025年現在)
※1971年の第一次モデルガン法規制(改正銃刀法)以降に販売されためっきモデルガンであっても、経年変化等によって金色が大幅に取れたものは銀色と判断されて規制の対象となることがあります。その場合はクリアーイエロー等を吹きつけるなどの処置が必要です。
※全長や重量のデータはメーカー発表によるもので、実測値ではありません。また価格は発売当時のものです。
1971年(昭和46年)、第一次モデルガン法規制によって金属製ハンドガンの黒い色と貫通銃口が禁止された。この時点でMGCは金属製ハンドガンのモデルガンに見切りをつけてしまっていたようだ。
ファンの間ではまだまだ金属製ハンドガンの人気は高かった。MGC以外の会社も金属製ハンドガンを主力商品として作り続けていた。
一方MGCは法規制反対運動の先頭に立って活動を続けながらも、いち早くプラスチック製モデルガンの開発に着手し、1972年にはオートマチックとリボルバーのハンドガン2機種を発売した。金属製モデルガンのメインは長物に移行し、ハンドガンは輸出をメインとしたようで、国内向けは従来品を法規制に合わせて手直しして、作り続けていたに過ぎない。
当時、国際産業を筆頭に、CMCなども金属製ハンドガンは表面に磨きをかけて傷などを無くし、分厚いめっきを掛けて豪華なプレゼンテーション・モデルのような仕上げにしていた。それに対してMGCはやすり跡も残るようなラフな表面に薄くめっきを掛ける仕上げで、お世辞にも美しくなかった。ただ、価格は他社より安かった。
そうこうしているうちに1977年12月1日から第二次モデルガン法規制が施行され、金属製ハンドガンは半減以下となり、長物のプレス製サブマシンガンも消えてしまった。
この1972年から1977年の間、というか1972年以降、MGCが新たに発売した金属製ハンドガンはMJQのP38と、ニュー・ガバメント、そして1年未満で販売を止めてしまった9mmブローバックのガバメントを手動式のスタンダードにしたショート・リコイルしないもの(GMスタンダード)の3種のみ。




MJQのP38にしても、原型を手掛けたのは六人部登さん。量産するために小林さんがかなり手直ししたらしいが、MGCの完全新規設計ではない。かろうじて金属製ハンドガンの新規設計と呼べそうなのはニュー・ガバのみ。
とは言え、ニュー・ガバにしても、ほぼスタイルはプラスチック製のプラ・ガバ(GM2)そのままで、共通パーツも多い。完全新規とは呼べない。そのため興味を示さなかった人も多かったようだ。
これに対してプラスチック製モデルガンの新製品は次々と投入している。つまり金属製ハンドガンのモデルガンには見切りをつけてしまったと、今振り返ってみるとそう思える。当時は気が付かなかった。MGCはエア・ソフト・ガンでは将来性を読み損なったが、プラスチック製モデルガンの将来性は鋭く読んでいたのだろう。
そんなわけで販売されていたときは注目度の低かったMGCのニュー・ガバ。販売が法律で禁じられてから買っておけば良かったと思った人が続出したが、もう後の祭り。売買はファンの間でも違法だ。
販売中はプラと同じデザインが災いした。ブローバック作動するならMGCオリジナルのハンマー連動式ディスコネクターもしようがないと思っていた人たちも、ブローバックしないのならリアルなディスコネクターが良いと、ニュー・ガバを評価しなかった。ボクもその口だ。
ところが、じっくり細部をながめてみると、ショート・リコイルするバレルは高い位置でエジェクション・ポートにはまりこみ、バレル・ブッシングもリコイル・プラグも別部品。フレームには本来ディスコネクターがあるべき部分に非常にリアルな彫刻があり、スライドにはまっているファイアリング・プレートの下面にはディスコネクターが入る凹みまで作られている。実は、プラ・ガバと共通パーツを使いつつも、かなり凝った作りのできの良いガバメントだった。






ただ、同時期にCMCが2代目のコルト・オートマチック.45シリーズを発売したため、かすんでしまった。CMCは、うまく作動しないとしてもブローバック・モデルも用意していた。構造もほぼ実銃どおり。
少ない小遣いから買うのだから、どれかを選ばなければならない。リアル派はCMC製を、飾りたいなら仕上げのきれいな国際産業製を、撃って遊びたいのならMGCのプラ・ガバを選んだ。どうしてもニュー・ガバは優先順が低くなってしまった。
MGCの小林太三さんにお話を伺ったところ、ニュー・ガバは輸出用として作ったものだそうだ。
もともとMGCには金属製の手動式ガバメント(GM1)があった。しかしブローバック化するためショート・リコイル機構は取り払われ、フレームの横に後付けのディスコネクターが追加され、マガジンも9mm用に凹みのつけられたものになっていた。しかも金型は1966年からずっと使い続けられていたためボロボロになっていたという。昔は10年でボロボロになるくらい大量に作っていたのだ。
そこへ、世界へのモデルガン輸出を担当していたアメリカのRMI(現コレクターズ・アーモリー)から、金属製のショート・リコイルするガバメントが欲しいという要望が寄せられたのだそうだ。
国内的には第二次モデルガン法規制があるのではないかとささやかれてはいたが、輸出だけで採算が取れるとの判断で、プラ・ガバの基本設計を使いプラ・ガバのパーツも流用することで金属製のショート・リコイル・ガバを作ることになったという。もちろん新たに金型が起こされた。これを担当したのは現在のKSCだそうだ。
ただ、アメリカは玩具の銃に厳しく、リアル・ガンにトイ・ガンのマガジンが入ってはいけないため、プラ・ガバのマガジンがそのまま使われることになった。
プラ・ガバはRMIの「マガジンは1/4インチ短くして欲しい」という要請によって、端数を切り捨て6mm短いマガジンを採用していた。




フレームもこのマガジンに合わせてプラ・ガバと同じサイズのフレームにされた。当然これでメイン・スプリング・ハウジングなどもプラ・ガバと共用できることになる。
輸出用ガバが完成したころ、国内ではまだ金属ガバBLKベースのGMスタンダードも売られていたが、CMCガバの影響もあり、国内でもショート・リコイル・ガバが欲しいという声が多くなり、輸出用ガバを国内仕様にして発売することになった。輸出用はもともと銃腔が貫通していないので、発火用の前撃針を足して、めっきするだけで良かった。金型が新しかったので、ことさら仕上げを良くしたわけではなくても、MGCの金属モデルとしては異例の美しさになったらしい。
広告やお店ではGMスタンダードも在庫がある限り併売する形だったので、名称は、混乱を避けるためニュー・ガバメントと呼ばれた。一方、工場というか、設計部ではプラ・ガバに続く3機種目ということで、GM3と呼ばれていたようだ。ボクら仲間内では短縮してニュー・ガバと呼んでいた。確かGM1の流れをくむGMスタンダードが5,000円で、このニュー・ガバは5,500円と500円だけ高く設定されていたと思う。
1977年12月1日、第二次モデルガン法規制が施行されることになったが、その時にはGMスタンダードはすでになくなっていたと思う。ニュー・ガバも消えることになり、直前に在庫がなくなるくらい売れた。ボクも買っておくべきだったが、プラ・ガバとCMCの2代目ガバを持っていたのと、お金がなかったのとで、結局買わなかった。今思えば浅はかな判断だった。
販売期間が短かく、広告にあまり載らなかったこともあって、意外と知られていないようだ。当時は多くの人がニュー・ガバと呼んでいたと思うが、現在ではプラのショート・リコイル・ガバメントを小林さんが公にGM5と呼んで以来、マニアの間ではこのナンバーで呼ぶのがはやり、プラ・ガバはGM2、このニュー・ガバはGM3と呼ばれることが多いらしい。
輸出メインで作られ、国内でも販売されていたときはちょっと気になるくらいの存在だったが、無くなったらぽっかりと大きな穴の開いたような気がするモデルガン、それがニュー・ガバだった。







Gun Professionals 2013年4月号に掲載
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