2025年9月号

2025/07/27

【NEW】タナカ コルトディテクティブスペシャル 2” R-model スティールフィニッシュ

 

 

タナカのディテクティブスペシャルは、分類上2nd Issue(セカンドイシュー)と呼ばれるモデルを再現したものだ。

 

 1946年(販売は1947年)から1972年まで製造されたディテクティブスペシャル 2nd Issueだが、1946年から1954年まではColtwood(コルトウッド)と呼ばれるベークライトグリップが装着されていた。1955年からこれがウォルナットグリップになっている。また1966年以降、Dフレームのデザインが変わり、ショートフレームに切り替わるなど、2nd Issueといっても製造された時期でいろいろ違いがある。
 タナカ ディテクティブスペシャルのグリップはウェイトを仕込んだプラスチック製だが、デザイン的にはウォルナットグリップを模している。そしてショートフレームではない。従ってこれは、1955年から1965年までの製品を再現したものだと考えてよいだろう。
 この時代のディテクティブスペシャルは、表面仕上げとして、BluedとNickelがあった。Bluedはいわゆるガンブルー仕上げで、雰囲気は今回タナカが製品化したSteel Finishに限りなく近いものだったと思われる。
 今回はこのガンブルー仕上げが、どのようなものだったのかについて書いてみたい。

 

▲Snub Nose Barrelという言葉を定着させた2インチの短小銃身。テーパーが掛かっているため、さらに短く感じる。


 炭素鋼の表面にFe3O4(マグネタイト)の皮膜をつけたもの、これがガンブルーだ。別名ブラックオキサイド(Black Oxide)で、日本語にすると黒色酸化となる。
 水酸化ナトリウムNaOH(苛性ソーダ)35~40%の水溶液に、酸化剤・反応促進剤等を加えた処理液(ブルーイング液)を140℃前後まで加熱し、炭素鋼のパーツをその処理液に浸けることでFe3O4がその表面に形成される。これがホットブルーと呼ばれる手法だ。炭素鋼の表面に酸化還元反応によって形成された酸化皮膜は、事実上、表面が錆びた状態で、表面をわざと錆びさせて、それ以上、錆(さび)を進行させないようにしている。すなわち酸化被膜が防錆膜となるのだ。この錆はいわゆる黒錆であり、ガンブルー仕上げの黒さはこの錆色ということになる。

 

▲1966年以降は、生産性合理化のため、ショートフレームと呼ばれる短いグリップフレームに切り替わった。ディテクティブはより握りやすいグリップを維持するため、ウォルナットグリップの形状を変更し、フレームが短縮されても、それまでと同じ長さのグリップとした。
タナカの2nd Issueは1965年までのスタンダードフレームを再現している。


 ではなぜ“Gun Blued”“Gun Bluing”と呼ばれるようになったのかといえば、その黒色がかつては少しだけ青みを帯びていたからだ。
 炭素鋼(カーボンスチール)は、Fe(鉄)と不純物であるC(カーボン:炭素)を混ぜた合金だ。その他にもSi(ケイ素)、Mn(マンガン)、P(リン)、S(硫黄)、Ni(ニッケル)、Cr(クロム)などの不純物を含んでいる。それらの不純物の濃度で炭素鋼の性格は変ってくるらしい。
 ブルーイングによるマグネタイト形成で青みを帯びたのは、炭素鋼に含まれる不純物濃度が現在のものと微妙に違っていたからだと思われる。また当時のブルーイング液も水酸化ナトリウムが主成分であることは同じだが、現在のものとは少し違っていた。そして、昔の処理液では、厚い皮膜はできなかったことも青みを帯びた一因だろう。厚い皮膜なら黒味が増す。青っぽく見えるのは薄い被膜であったことも大きい。従って、古い銃を現代のブルーイング液で再処理(Reblue:リブルー)すると厚い被膜ができて、黒く仕上がる。

 

▲フロントサイト後面とフレームトップ部に刻まれた反射防止溝もしっかりと再現している。


 アンティークと呼べるような古い銃は、この薄い被膜がほとんど失われてしまい、グレーっぽくなっているものがほとんどだ。昔はもっとブルーブラックといえるような仕上げだったのだろう。
 ブルーイング全盛だった時代の銃は、パーツの一つ一つが、生産ラインで徹底的にポリッシュされていた。そうすることで、きれいな酸化被膜ができる。これによって銃の付加価値が上がった。だから各メーカーでは、生産ラインの工員たちが手を抜くことなく、パーツをポリッシュした。
 一方、軍用火器などは、そんな見栄えを気にしたりはしない。そのためPhosphating(リン酸塩処理)という手法が多く用いられた。いわゆるパーカーライジングで、これは一種の下地処理だ。その表面は塗装ができる。これだと作業工程は大幅に短縮でき、大量生産向きだ。
 20世紀中期における銃の表面仕上げは、ブルーイングか、ニッケルメッキか、このパーカーライジングか、ほとんどがそのいずれかであっただろう。
 タナカのディテクティブはそんなブルーイングが全盛であった時代(1950年代から60年代)のコルトリボルバーの再現だ。その時代であれば、ある程度まで技術が進み、しっかりとしたマグネタイト被膜ができていたはずで、青みもほとんどない、光沢のある黒を纏っていたことだろう。
 タナカのスティールフィニッシュは、そんな“光沢のある黒”を再現している。 

 

▲ハンマーは側面をポリッシュし、グレースチールフィニッシュに仕上げている。


 ディテクティブ スペシャル“R-model”は、かつてのタナカ製コルトダブルアクションリボルバーが持っていた欠点、シリンダーロックアップ(トリガーとシリンダーの動きにおけるタイミングずれ)現象を、リバウンドレバーを強固なスチールプレスとダイキャストの2ピース構造にするなどの適格な改良により、完全に解決した意欲作だ。  

 ディテクティブ スペシャル“R-model”の発売から2年、ついにスチィールフィニッシュが加わる。これを待っていたファンは少なくないだろう。
 

 

タナカ

コルトディテクティブスペシャル 2インチ “R-model”スチールフィニッシュ

 

全長:175mm
重量:約410g(カートリッジ込)
装弾数:6発
主要材質:ABS樹脂(スチール風メッキ)+亜鉛ダイキャスト
仕様:7mmキャップ火薬使用発火式モデルガン
価格:¥42,680(税込:.38スペシャル発火カートリッジ6発付属)
6月発売
お問い合わせ先:タナカ

 

 

TEXT:GPW Editor

 

Gun Pro Web 2025年9月号

 

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