2025/06/15
コルト グリズリー .357 MAGNUM 1994年限定モデル
Gun Professionals 2015年4月号に掲載
パイソンの魅力は、そのバレルに負うところが大きい。ベンチレーテッドリブとフルラグが作り出す力強さ…、これはパイソンバレルだけでしか味わえないものだ。その魅力をキングコブラにも与えようとしたコルト純正カスタムモデルがグリズリーだ。1994年に1,000挺限定で作られたこのモデルの中古価格は2015年現在、高騰が続いている。
パイソンの末裔
2015年現在、パイソンの高騰が止まらない。
ガンショーでもネットオークションでも、もはや天井知らずのお値段となっている。
最終の小売価格(96年)は、確か900ドル程度だった。その中古が今や、2,000ドルとか3,000ドルとか、物凄いムチャを言ってくる。特別なモデル、例えば建国200年記念のノンフルーテッド・シリンダー付きパイソンとか、パイソンハンターのフルセットとか、超極初期のフルチェッカーグリップ&フラット・リアサイト付き骨董パイソンとか言うなら暴騰も分からないではない。が、新しめの素パイソンの箱無しキズキズ品で1,800ドルとか、完全にふざけている。呆れるどころか、もう胸が悪くなる。
カリフォルニア在住時代、サクラメントのガンショーで、セカンドの頃合いコンディションの4インチを500ドルで買い損ねた過去を自分は持つ。時期は05年頃だった。それが今や、木製グリップのみで300ドル超えの時代となってしまった。
パイソン人気の気持ちは重々分かる。スタイルもバランスも仕上げも抜群。末期のモデルは少々雑だったが、逆に言えば生産にはそれだけのコストが掛かり、もはや実現不可能な証なワケで、どっちにしてもまぼろし化は進む一方なのが苦しい。
個人的には、パイソンだけは60年代くらいの箱入りミント品をいつか必ずゲットとか思っているうちに、完全に手遅れとなった次第だ。途中、辛うじて6インチのステンレス製パイソンは縁あって手に入れたが、一方で上記の4インチ以外にも3インチのカリフォルニア・コンバットパイソン(激レア)の格安品まで見送ってしまうなど、救い難い失態を重ねている。“悔しい”を通り越して、そんな自分が“哀れ”ですらある。
ただその間に、パイソンの周辺をウロウロして、まがい物にイロイロ浮気した。スマイソンやらクーガーやら、いわゆるパイソン繋がりの合体系だ。それらは、実用性以上に、バイソン・バレルのベンチレーテッドリブ&フルラグが醸し出すカリスマ的魅力ゆえに人気を集めたモデルである。
そういった数々の浮気の中の1挺が、今回引っ張り出して来たグリズリーだ。
グリズリー
引っ張り出してきたきっかけは、2015年3月号のディフェンダーに引き続いて或るブログの影響だ。
『偏向的トイガンカタログ』というサイトに、グリズリーのモデルガンを発見したのだ。市販品は無いはずだから、手作りのカスタムである。KSCのキングコブラのフレームにタナカのガスガン・パイソンのバレルを移植した合体品だという。製作は『オラガバニスト』というブログの主だそうで、そっちのサイトも覗いてるうちにグリズリーに対する意気込みというか心意気がビンビン伝わってきて、今一度見直してみたい、振り回してみたい気持ちになったと言う按配だ。
グリズリーは、キングコブラとパイソンを合体させたコルト・カスタムショップの製品だ。
スマイソンやらクーガーは、パイソンのバレルを第三者の手によって他社銃のフレームにねじ込んだ、いわば外様細工のハイブリットガンだった。それに対し、コイツはコルトの純正自家培養種。そして、かなりの限定品だった。
以前、コルトのカスタマーサービスに問い合わせた結果では、
「94年に1,000挺製造。ステンレス製でシリアル・レンジはCGZ001からCGZ999。バレル長は6インチのみ。Western Hoggieというディストリビューター向けの限定品」
という答えだった。同じく自社合体カスタムである85年のBOA 357(MKⅤのフレームにパイソンのバレルをねじ込み、仕上げはブルーのみで計1,200挺製造。ディストリビューターLew Horton社を通して販売。価格は525ドル)のステンレス版と言えなくもない代物だ。
発売価格は資料不足で不明。94年当時、素のキングコブラが430ドルだから、仕様から考えて600~700ドル前後といったところか。