2025/05/25
The World of Cartridges 1:5.45mm×18(旧ソビエト・モデルPSM弾薬7N7)
Text by 床井雅美 Masami Tokoi
Photos by 神保照史 Terushi Jimbo
2012年 Gun Professionals Vol.1(2012年4月号)掲載

イラストはソビエト軍のマニュアルに掲載された弾薬断面図と外見図
5.45mm×18ピストル弾薬 (7N7)
5.45mm×18は、冷戦期の1970年代にソビエトで開発された小口径センターファイアピストル弾薬だ。きわめて小型であるにもかかわらず、高初速で、スチールコアブレットを用いるとケプラー繊維のボディアーマーを貫通する能力を持っている。
5.45mm×18弾薬は、旧ソビエトが開発した、軽量で薄型のPSMセミオートマチックピストル用に設計された極めて小型の弾薬だ。
PSM(Pistolet Samozaryadny Malogabaritny:ピストレット・サモザラヤドニー・マロガバリテニー:ミニチュア・セミ・オートマチック・ピストル)の開発理由は、今もってあまり明らかにされていない。高級将校用の軽量小型ピストルとして開発されたという説と、潜入エージェント用の、小型で見つかりにくいピストルとして開発されたとする二つの説がある。
現実に旧社会主義時代、このピストルの彫刻入りのデラックスバージョンがソビエト友好国の元首などに贈られていた。他方、KGBなどの特殊部隊がPSMを広く使用していたことも確認されている。
PSMは、ドイツのワルサーが製造していた小型ピストルTPH(TaschenPistole, Hahn:この名称の意味はポケットピストル、ハンマーとなる)に大きな影響を受けて設計された。
PSMの開発は、1969年から1974年にかけて、ティコン I.ラシネフをリーダーとし、アナトリー A.シマリンとレブ L.クリコフが協力して進められた。
PSMは、ハンマー露出式で、ダブルアクショントリガーを組み込んだブローバックタイプの小型ピストルだ。
ピストルを小型化すると、当然使用する弾薬も小型にならざるをえない。同クラスのワルサーTPHは、6.35mm×16SR(.25ACP)や.22LR弾薬を使用した。
これらの弾薬では、実用上の実行威力に欠けると旧ソビエト軍部は判断し、モデルPSM専用の高い威力を持つ専用弾薬の開発を決定した。こうして開発された弾薬が、5.45mm×18弾薬だ。
5.45mm×18弾薬は、ピストルとは別個にアレキサンドル I.ボチンによって開発され、1979年に制定された。
5.45mm×18弾薬は、薬莢の口をすぼめた、いわゆるボトルネック型で、小口径の弾丸を高い初速で射出できるように設計されている。
加えて、弾丸の内部が二段のタンデム構造になっており、先端部にスチールコアが入れられ、後部に鉛が装填されている。そのため、命中しても弾丸が変形しにくく、高い貫通能力を示す特徴をもつ。これにより、当時の西側で使用されていたケプラー繊維のボディアーマーを貫通する能力を持っていた。
弾頭重量は41grで、アメリカのテストによれば、その初速は1,033fps、マズルエナジーは98ft.lbsであった。当時の一般的な西側ポケットピストルは.25ACPでそのパワーは45gr弾頭で初速815fps、マズルエナジー66ft.lbsであり、数値的に見れば5.45mm×18弾は.25ACPの1.5倍の威力を持つものであった。それでも決してすごくパワフルな弾薬ではない。それでもスチールコアの入った弾頭構造が、高い貫通力につながっていると思われる。


Text by 床井雅美 Masami Tokoi
Photos by 神保照史 Terushi Jimbo
2012年 Gun Professionals Vol.1(2012年4月号)掲載
※当サイトで掲示している情報、文章、及び画像等の著作権は、当社及び権利を持つ情報提供者に帰属します。無断転載・複製などは著作権法違反(複製権、公衆送信権の侵害)に当たり、法令により罰せられることがございます。