2025/05/13
アドバンスアーマメント サウンドサプレッサーTi-RANT .45
Text & Photos by Turk Takano
Gun Professionals 2014年12月号に掲載
近年、サウンド&フラッシュ・サプレッサーが人気を集めている。かつては民間人が所持できないものというイメージがあったが、米国の場合40前後の州で$200-の税金を納めれば、所持が可能だ。もはやアンダーグラウンドなツールではないといえる。
どの程度、銃声を小さくできるのかについては文字で表現することは難しいし、数値データでは判らないことは多い。しかし、新しい技術で動画と記事を連動できるようになった。アドバンスアーマメントの.45口径用Ti-RANTはどの程度の減音が可能なのか、その実力をお伝えする。
小説や映画などフィクション・ストーリーに登場するサイレンサーは、何となくダークなイメージがある。暗殺者が使うお約束の小道具として、 “プシュッ!”とかいう音と共に、長い間、活躍?しているからだ。サイレンサー(消音器)というのはかなり大袈裟な表現で、実際には減音器(サウンド&フラッシュ・サプレッサー/減音減炎器)なのだ。サイレンサーと呼んでいるメーカーも少なくないが、メーカーとしては世間体からサウンド&フラッシュ・サプレッサーとしたいところだろう。しかし圧倒的多数の消費者にとってサウンド&フラッシュ・サプレッサーでは何のことかわからない可能性が高い。それに対してサイレンサーなら、“プシュッ!”という音と共に誰もがその存在を知っている。
サイレンサーはフィクション・ストーリーの中では“プシュッ!”でなければ具合が悪い事情もある。サイレンサーが隣の部屋で寝ている者を起こしてしまう音を発してはストーリーが成り立たないだろう。
フィクションに登場するサイレンサーに近いものはかなり以前から存在する。ベースガンとして亜音速の.22LRまたはShortを使ったものとの組み合わせだ。これらは第二次大戦中、OSSなどの特殊工作員により使われていた。多くは市販.22ピストルに組み合わせたものだった。戦後の冷戦期である1960年、米空軍のU-2偵察機がソビエト上空で撃墜され、パイロットであったフランシス・ゲーリー・パワーズ少佐が捕まり、個人装備品が公開された。その中にハイスタンダード・ミリタリーをベースとして改造されたサイレンサー付ピストルがあった。スパイ機U-2パイロットの標準装備品にサイレンサー・ピストルが含まれていたとなれば小説並みのストーリーであり、ガンマニアだけでなく一般人の興味をそそったものだ。

サイレンサー/サプレッサーの登場
銃声を消したいという夢は銃器が生まれたときからあったが、マッチロック、フリントロック、パーカッション時代には単なる空想でしかなかった。もっとも、銃声は大きいほうが敵を威嚇するから良いという意見もあった。無音とは言えないが、それに近い強力なウエポンは存在していた。弓そしてクロスボウがこれに当たる。ということからパーカッションライフルまたはピストルの消音化を図る必要性があったとは考えにくい。特殊部隊にとって小型クロスボウはいまだに現役だ。サイレンサーのアイデアが現実味を帯びてきたのはメタリック・カートリッジが発明されて暫く後の1870年代である。特にハイラム・パーシィ・マキシム(マキシム・マシンガンの発明者)の息子のハイラム・スティーヴンス・マキシムはサイレンサーに興味を持ち、かなり突っ込んだ研究をした結果、今あるサイレンサー/サプレッサー・デザインの基礎をつくった。
ハイラム・スティーヴンス・マキシムは1902年、サイレンサー・ファイヤーアームのタイトルで特許を得ている。急激にエキスパンションするガスを抑えるとなると、今日でさえマキシムが考えた以上のアイデアは生まれてこない。ただ現在では工作技術の進歩により、複雑なデザインでも比較的低価格で量産が可能となっている。
ルガー10/22は発売されてまもなく、特殊部隊に注目されたというから同モデルのサイレンサーベースガンとしての歴史は長い。ルガーに限らず.22セミオート、ボルトアクション・ライフルはサプレッサー付としたとき、発射音よりボルトの作動または操作音が大きいくらいだ。セミオートならボルト閉鎖時の音を抑えるため特殊ゴムなどが組み込まれ、言葉でいう本当の意味でのサイレンサーに近いものが実用化された。その結果、ルガーベースの.22LR/サプレッサー組み込みガンは特殊部隊になくてならないツールの一つになった。
空き缶を撃つプリンキングならそれでも良いが、軍用の場合.22LRの威力では限られた目的にしか使えない。そして今、サイレンサー/サプレッサーの世界は大きく変わろうとしている。
