2025/05/04
LLAMA Model XIII【今月の,どマイナーWORLD! 9】
今月の,どマイナーWORLD! 9
可愛さ満点!許せるコピーリボルバー
LLAMA Model XIII
Text & Photos by TOSHI
Gun Professionals 2015年1月号に掲載
Llama 32 リボルバー
小型銃、とりわけリボルバー好きの自分にとって、スナブノーズというのはそれだけで可愛い。例えマイナーな製品であっても、惚れる時は一瞬で惚れる。
そこで、一目惚れの衝動買いコレクションがまた1挺増えてしまった。ラーマの小型DAリボルバーだ。
●
ご覧の通り、どう見てもS&Wのコピーである。.32口径という、ほぼ絶滅危惧種の廃れ口径が、どマイナー度を余計にあおる。
仕上げはそこそこだ。手を切りそうなエッジが所々残るが、ブルーの乗りは上々。欧州の銃だけあって、各種のプルーフマークがあちこちに見えて楽しい。ハンマーとトリガーだけがニッケルめっきなのはご愛嬌。せめてものオシャレのつもりが、逆に安っぽさを強調する結果となっている。
各部の動きは、全体的にやや渋い。特にトリガーは、空撃ちしたら部品を痛めそうなくらいに固い。何というか、刺々しいアクションだ。S&Wでも小型リボルバーのトリガープルは固めだが、ココまでひどくはない。コピー銃の本領発揮といったところか。
購入場所は、アウトドア用品量販店のCabela'sだ。箱付きの美品、税金その他を含めて260ドル也は悪くない。以前も書いたが、この店は中古銃の品揃えが充実しており、近くを通るたびに自分は覗いている。
でだ。このラーマ、買った時点ではJフレのコピー、口径からしてモデル30ハンドエジェクター辺りのパクリかと思い込んでいたが、どうも小さい。ということは、そうだ。Jフレの先代のIフレーム(1950年にJフレへ発展)だ。テリアのサイズなのだ…ってことに、リポートを書く段になってやっとこ気付いた(大恥)。
手元のテリアと比べれば、ほぼドンピシャの大きさ。シリンダーのサイズもコンマ数ミリ違うのみ。道理で小柄なはずである。ただし、テリアの口径は.38 S&Wで装弾数は5発だから念のため。コイツの場合は、口径から考えると.32レギュレーションポリスの流れとなるか。ともあれ、益々可愛さが倍増した具合だ。
倍増といえば、コイツはS&Wでいうところの5スクリューモデルだ。サイドプレートの上部と、トリガーガードの前部にもネジが付く。ビンテージ感も倍増なのである(S&Wではコスト削減のため53年に4スクリュー、55年に3スクリューへ落とした)。
そして更に、内部を見て驚いた。
Iフレームのコピーのクセに、メインスプリングが板バネ式なのだ。コイルじゃないのである。板バネはコイルに比べてコストが高く耐久性も劣る。コピーするならコイル式が常套手段のはず。ただ、S&Wでも古いIフレでは板バネの時代はあった。つまり、それほどに昔の個体をコピーしているのだ。そのわりに、ハンマーのシェイプを見る限りではやけにモダンなのはチグハグな感じなのだが…。
いったい、コイツの登場はいつ頃なのだろうか。
手元にある1958年度版の米SHOOTER'S BIBLE誌の紹介によれば、ラーマがS&Wのコピーリボルバーを最初に造ったのは1929年で(すみません。以前リポートしたラーマ・マーシャルの記事では1955年と書いてました。こっそり訂正します)、当初はRUBY REVOLVERの名称で売っていたらしい。.32口径の他に.22LRと.38spl等が存在し、1963年度版の米SHOOTER'S BIBLE誌では名称はラーマに変わっており、.22LRはModel XIV、.38spl口径はModel XII、そして.32口径のコイツはModel XIIIと紹介されている(再びすみません。前述のマーシャルの記事では38spl口径をModel XIII、32口径をModel XIIと書いてました。こちらも訂正です)。お値段は58年の段階で59.60ドル、63年では60ドルだった。
元々のコピー開始が1929年なら、5スクリューも頷ける。ご覧の1挺の製造年は箱のデザイン等から70年代頃と推測するが、基本低価格の商品なのでS&Wのようにコスト削減を考えるまでもなかったというか、改良に費やすコストをペイできるほど生産数が多くなくて結局5スクリューが温存された可能性もありかも。いずれにしても、ビンテージっぽいこの眺めは個人的にはとても好きである。
さてと、S&Wのコピーなら例によって絶対試したいのがグリップの付け替えだが、残念なことにS&Wのグリップは微妙に付かない。グリップピンに合わせると上部がはまらず、上部をはめるとグリップピンが邪魔になるといった具合だ。パックマイヤーのCOMPACとかならゴム製で潰しが利くので装着可能。ラーマのグリップは、S&Wのスクエアバットよりも角張っていて力強さを感じる反面、懐へ入れた時のゴワゴワ感が出てしまっている。コンセプトの違いというか、どこかわかっていない心遣いの無さ、コレがマイナーの真髄である。
それにしても、とりあえずは可愛い銃だ。このサイズは魅力である。同じマイナーでも、小型銃は大型に比べて販路が広いのではなかろうか。護身銃の分野でさばけるからだ。
ただ販路といっても、安価なマイナー系はいかがわしく危険な方向に流れ易い。コイツにしても、コンディションがミント状態だったから良いが、汚かったら絶対サタデーナイトスペシャルまっしぐらだ。
そういった哀しい運命を辿らぬよう、コイツは自分の手元で末永く愛でてやろうと思う。

Text & Photos by TOSHI
Gun Professionals 2015年1月号に掲載
※当サイトで掲示している情報、文章、及び画像等の著作権は、当社及び権利を持つ情報提供者に帰属します。無断転載・複製などは著作権法違反(複製権、公衆送信権の侵害)に当たり、法令により罰せられることがございます。