2025/03/22
SRM ARMS M1216 16連射できるディレードブローバックショットガン
SRM ARMS 1216
12GA. 16連発のファイヤーパワー
Turk
2012年Gun Professionals Vol.1(4月号掲載)

あっ!と驚くようなアイデアを盛り込んだ新製品はなかなか見掛けないものだ。旧Gun誌2011年11月号で筆者がリポートしたAR系セミオートモデルをフルオートにしてしまう可能とするSSAR-15ストック(Slide Fire)は、その中の一つだった。複雑なメカを予想した読者には、拍子抜けだったかもしれない。あれを読まれて、まだまだ新しいアイデアはあると感じた読者も多かったはずだ。
今回、リポートするSRM Arms 1216タクティカルショットガンは近年、稀に見る優れた製品だといえる。同社(アイダホ州)はショットガンと、それに関係したコンポーネントの専門メーカーで、USMCとの強いコネクションを持つ。内容を見る限り一般の製造メーカーではなくリサーチラボに近いように思える。
いずれにしても、久々に新型ブルパップショットガンの登場だ。そしてまたHKでおなじみになったローラーディレイドブローバックを採用した点も、ショットガンとしては変り種だといえる。さらにLEや軍用としての需要を考慮し、オペレーティングハンドルは左右どちらにもセッティング可能だ。但しインスタントのアンビではない。
最大の特長は、これまで例を見ない4本のチューブを束ねたようなポリマー製一体型マガジンのコンセプトであろう。1チューブの弾を撃ち終わったら、マガジンを回転させ新たなチューブから継続給弾するというメカだ。4本の各チューブに最大4発装填したときトータル16発のファイアパワーとなる。マガジンからマガジンにいたる間の回転切り替えは、手動マニュアル操作だが、慣れてくれば間隙なく16発が連射可能だ。
12連発のストリートスウィーパー(街の掃除機)、サイガ12の20連発など派手なシリンダーマガジン、またはドラムマガジンを装備したハイキャパシティマガジン付きショットガンが既に市場に存在する中で、ここにある16連発の何がユニークなのか、疑問に思う読者もおられるにかもしれない。1216の魅力は16連発であっても、シリンダーマガジンやドラムマガジン仕様とは違い、普通のポンプアクションショットガンの延長ぐらいにしか見えないコンパクトさであることなのだ。
過去に登場したライエットショットガンの歷史について簡単に触れてみよう。最近、言葉の格好良さからだろうが、Riot(ライエット)ではなくTactical(タクティカル;戦術)ショットガンと呼ぶことが多くなった。なんでもタクティカルの時代だ。フラッシュライト(懐中電灯)でさえ、今日じゃタクティカルフラッシュライトなどという。たかが懐中電灯なのだが、なんとなく格好良く、しかも高性能に感じるから不思議だ。このままいくといずれ、タクティカルトイレットシートカバーなんて商品が登場するかもしれない (笑) 。
1980年代半ばにべネリM1が登場したあたりから、タクティカル云々が広範囲に使われるようになったと記憶している。ライエットコントロール(暴動鎮圧)という言葉は、一般人には重いイメージかある。それに比べて、タクティカルという一般には内容が判りにくい呼び方で、世間を煙に巻くという作戦だ。スナイパーライフルではなく、タクティカルライフルというのと同じことだ。法執行機関はスナイパー(狙撃)じゃ世間に与える印象が悪いのでタクティカルライフルと呼ぶ。これと同じだ。
現代ライエットショットガンのルーツは保安官(シェリフ)、または西部を走ったステージコーチ、または歴史ある金融機関であるWells Fargo & Company(ウエルズファーゴ)の護衛官が手にしたハンマー外装の水平二連であろう。ブラックパウダーの時代から既に至近距離におけるショットガンの破壊力には一目置かれていた。保安官にとって、ショットガンは公務執行上無くてはならないタイプの銃でもあったといえる。大口径のマズルをちらつかせるだけで、群衆の暴走を抑制する効果があったからだ。酒場の据え置き銃としても水平二連ショットガンは重宝されていた。それらの中には12GAどころかさらに大きな10GAも使われた。短期間ではあったものの、ライエットショットガンと言えば、それは水平二連だという時代があったのだ。
保安官、ステージコーチ用、またはホームディフェンス用なら、水平二連でも何とかなるだろうが、軍用となると二連発じゃ心許無い。軍用としてこそ省みられなかったが、水平二連はハンティング用、上下二連は競技用として、今日でも重宝されていることは言うまでもないことだ。
西部開拓の後半、1880年代になると、ブラウニングデザインのレバーアクションショットガンか登場した。ライフルでは既にお馴染みのレバーアクションだったが、ショットガン用としては初の試みだった。ブラウニングからパテントと製造権を買ったウィンチェスター社は1888年、12GA、 10GAのモデル1887レバーアクションショットガンを発売した。約5年後、これまたウィンチェスター社からブラウニングデザインのポンプアクションショットガン モデル1893が発売された。12GAのリピーティングショットガンとなると、ポンプアクションは総合性能でレバーアクションに勝るものを持っていた。
レバーアクションショットガンは、ブラウニングデザイン以後、他のメーカーでも似たようなコンセプトモデルが試作されたが、ほとんどどれも、量産の域には達しなかった。この頃、既にポンプアクションの優位性が証明され、レバーアクションショットガンは急速に市場での競争力を失っていた。後々、マスターピースとして後世まで知られるようになったウィンチェスター モデル1897ポンプアクションショットガンのルーツとなったのかこのモデル1893なのだ。
20世紀に入ると新しいブラウニングデザインによるセミオートショットガンが登場してくる。これまでの手動にかわり、作勤方式にロングリコイルを採用した革命的なセミオートショットガンの誕生だった。既にセミオートピストルが市販されており、作動方式に珍しさはなかったものの、ショットガンでのセミオートはほぼ初物だったといえる。
ベルギーのFN社から1903年に発売されたFN/ブラウニングオートマチックが世界最初のセミオート量産ショットガンだ。これはAuto-5と呼ばれた。1905年にはその製造権はレミントン社にも与えられ、これが米国メーカーとして初のセミオートショットガン レミントン モデル11だ。1921年になって短いパレルを備えたポリススペシャル/ライエッ卜ガンが加わった。時代に先駆けたセミオートショットガンはボニー&クライド含めたギャングにも愛用され、これでも有名となった経緯がある。M1918 BARと同様、ギャングが宣伝に一役買ったところが興味深い。

戦後生まれた銃器の中でもっともユニークなモデルと評価されているあのCalico・・・倒産整理の憂き目をみたCalicoだったが不死鳥のごとく蘇った。Calico所持者の筆者にといって喜ばしい限りだ。

1900年初頭、先端を行くセミオー卜は当然のことながら軍の注目を浴びた。ポンプアクションと変わらないマガジンキャパ4+1発でもオートというだけで速射による近接戦闘用として利用価値を感じたからであろう。当時のセミオートはブラウニング系ロングリコイルの一人勝ちであり、ガスオペレーションはまだ試作はされていても製品化には至っていなかった。
手動ショットガンなら既にポンプアクションという構図が出来上がりつつある時代でもあった。新参のセミオートモデルはプルーフされたこれらポンプアクションと比較テストされた。
しかし、ギャング抗争ならロングリコイルでもいいだろうが、白兵戦が想定内となる軍用としては欠陥と見做される作動方式だった。近接戦闘ならお互いバレルを掴める距離となる。当時、米西戦争(米国 vs. スペイン)、メキシコとの国境紛争など、ショットガンを必要とした局地戦が存在した。、また、5連発では軍用として少ないという意見もあった。マガジンはいずれもチューブタイプで、バレルと並行するためマガジンキャパはバレルの長さにも関係してくる。実際にはレミントン モデル11が軍用としても使われたが、その数は少ない。

着脱のボックスマガジンタイプならどうか? これもショットシェルの太さが影響し、5発、6発を装填するとかなり下方に突き出す。太さの関係、そしてリムドということもあり、ダブルスタックにするにはマガジンのデザインが難しくなる。
当然のことながら12Gaドラムマガジンも考案され、試作された。リムドでしかも太いショットシェルということもあり、信頼性のあるマガジンに仕上げるのにはまだ無理があった。比較的、簡単に作れたのは、シリンダーによる回転式マガジンだ。メカデザインはリボルバーの拡大で対応することができ、アルミアーロイ製のシリンダーなら軽量化が計れる。しかしこれとて、その登場は第二次大戦後だった。12-20発にすればシリンダー径が大きくなり、使いにくく実用性に乏しい。またマガジン自体も大きく、携帯性にも問題があった。ハイキャパシティ化のメリットはあっても、総合的に見た場合、追加ローディングが容易な従来型のライエットショットガン(ポンプなど)に勝るものがなかった。この時点でも、軍用としての道は閉ざされたままだった。
第二次大戦でトンプソンSMGは米軍SMGの主力として使われた。ギヤング抗争時代から50/100発ドラムマガジンがあったが、第一線米軍兵士はこれらドラムマガジンを使っていない。信頼性、携帯性などの理由から軍用として敬遠されたのだろう。
映画『戦争の犬たち』(The Dog of War:1980)では回転式が登場、映画の中でこそ可能な凄い破壊力を発揮した。12GAもどきのサイズであの破壊力、ちょっとやりすぎじゃないかと思わされたものだ。
(2025年3月Web Editor補足:あの映画で使われたのはManville 25mm Launcherで、XM-18という架空の名前が付けられました。当時、これが12GAの24連ショットガンだという説も流れたようです。実際、撮影に使われたプロップは12GA仕様だったので、まったくの誤解でもなかったわけですが、思い切り派手な爆破効果は映画ならではのことです)
結論を言えば、ハイキャパのショットガンとなるとドラムか回転式シリンダーとならざるを得ない。この種のモデルは映画用には迫力もあり格好がいい。リポートの当初でも触れたが、1216の採用した4本のチューブマガジンを束ね、一体型ユニットとしたアイデアは極めてユニークだ。マガジン(シリンダー)を回転させ継続射撃するアイデアは1800年代初めに登場したペッパーボックスピストルに通ずるものがある。写真を見ても判るように正面からも側面からも、通常のポンプショットガンに毛が生えた程度の違いでしかない。
2008年のSHOT SHOWでSRMアームズ社が試作品を公開したというのだか、筆者は見逃した。量産モデルが出回ってきたのはつい最近(2011年頃)のことで、試作から量産品完成まで3年以上を要したというわけだ。
テストモデルは、例によって友人からの条件付きの借り物だ。その条件とは、何発撃ってもかまわないが、ライフルドスラッグでベンチからのグルーピングテストをやってもらいたいというのだ。距離は75ヤード以上なら0Kという。お安い御用と言いたいところだが立射、膝射ならともかく、ベンチからとなると12GAのライフルドスラッグのキックは凄まじい。結果については実射の項で述べたい。
Field Stripping





下 ハイ・スタンダードM1