2025/03/31
Time Warp 1994 コクサイ S&W M629 7 SHOT
池上ヒロシ あきゅらぼ
協力:サタデーナイトスペシャル
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リボルバーは6連発という常識がガンスミスの手で覆された90年代、コクサイはS&Wより先に7連発リボルバーを製品化した。それがM629 7ショット “リボルバーのコクサイ”が見せた意地だ。629なのに.357マグナムではあったけれど…

全長:236mm
重量:758g(カートリッジ込)
装弾数:7発
1994年当時の価格:¥15,700(6インチは¥15,900)+税
発売:1994年
トイガン業界に、かつて国際産業というメーカーがあった。そのブランド名である“コクサイ”のほうが良く知られているかもしれない。
モデルガン時代からリボルバーをメインに数多くの名銃を製品化し、エアソフトガン時代に入ってからもガバメントに代表されるエアコッキング、M16に代表されるガスセミオートライフルなど、ヒット作と呼ぶにふさわしい傑作をいくつも世に送り出した。
発火式モデルガンのブローバック作動をパワーソースとしてBB弾を発射する“スーパーウェポンM16”シリーズは、後にも先にも似た形式の製品が存在しない、掛け値なしの唯一無二な存在と言えるだろう。もっともこの製品、使いこなすにはモデルガンとエアガンの両方の技術と知識が必要で、かなり面倒くさくもあり、エアガンとしての実用性となると疑問符がつく製品ではあったのだが……
コクサイは、毎月かならずカラー広告を旧Gun誌に掲載していた。表紙をめくってすぐの“一等地”に、さらに2つ折りの展開ページが続くという豪華仕様の広告だった。旧Gun誌のその場所がコクサイの定位置だったことを、懐かしく思い出される読者もたくさんいらっしゃるだろう。
旧Gun誌を発行していた国際出版と国際産業(コクサイ)が、同じ会社ではないものの社長(経営者)同士が血縁関係だったこともあって可能になった贅沢な広告出稿だった。限られた経費で確保した少ないページ数に全力で情報を詰め込もうとする他メーカーとはまるで異なる、スペースに余裕があるからこそ可能になった、イメージカットを多用したり、時にはコミック風イラストをいれたコクサイの広告ページは、ほぼ専門用語ばかりで構成される素人お断りの実銃解説記事を読み始めようと気合を入れる前の、ちょっとしたウォーミングアップにピッタリだった。

この製品に関しては、S&W 44 MAGNUM M29 &M629 7 SHOTと製品名を掲げておきながら、商品仕様は.357マグナムという悩ましさがあった。

しかし、どれだけ贅沢な広告の使い方ができようとも、それだけで生き残れるほど日本のトイガン業界は甘くない。特に当連載で何度も言及している、1980年代後半から1990年代はじめにかけての大変革、長物であれば電動ガン、拳銃ならばガスブローバックの急速な技術進歩がもたらした、革命的とも言えるトレンドの再編に乗れなかった、あるいは乗らなかったメーカーのいくつかは、数年という短いスパンで業界から姿を消していった。
電動ガンやガスブローバックという大きなトレンドとは別のところに強みを発揮することで、今でも生き残っているメーカーもある。エアソフトガンを使ったスポーツ競技射撃という世界で、従来の銃好きとは異なるジャンルから人を呼び込み、確固たる地位を築くところがあれば、普通ならどこもモデルアップなんかしなさそうなほどにマイナーだが好きな人は徹底して好きなジャンルの銃に限って徹底的なこだわりを注ぎ込んでモデルアップすることで、ガッチリと固定ファンを確保するところもあった。
コクサイも、その2つの方向性の両方を試みようとした。1993年にはAPS競技射撃用の精密ピストルとしてゴールドメダリストを発売。それまでエアソフトガンの世界ではほとんど存在しなかったオリンピック競技に使われるようなセミオートピストルのスタイルを、エアコッキングで再現したものだ(モデルガンでは製品化された例はある)。
トリガーの前後位置や重さ、シアのかかり具合など、ありとあらゆる箇所を分解せずに外部から調節可能なしくみを備えるなど、かなりの意欲作といっていい製品だったのだが――残念なことに競技用として見たときの性能が決定的に不足していた。ようするに“当たらない”のだ。せっかくの調整機能も有効に働いているとは言いづらいもので、バリエーションが少し発売されただけで終わってしまい、当然のことながら、競技シーンで広く使われることはなかった。
手応えがあった、と思われるのは後者のほう、つまりマイナーであっても強いファンがいる分野に注力し、固定ファンをガッチリと掴むというやり方だろう。もともとコクサイは、“リボルバーのコクサイ”という異名があるほどにリボルバーに強みがあるメーカーだった。モデルガンの分野では現代にも伝わるいくつもの傑作と呼ばれる製品を生み出しているし、ガスガン時代になってからも外観や操作感に大きなアレンジを加えないままにちゃんとBB弾を発射できるリボルバーを作り続けてくれるという点で、「拳銃といったらやっぱりリボルバーだ!」というコアなファンをガッチリと掴んでいた。


コクサイが1986年に発売したM29パワーアップマグナムは、構造的に問題があり、発売後に“実銃に相当する”と警察から認定され、回収騒ぎになってしまうという大事件を起こした。このことが後々じわじわとダメージが蓄積される原因となってしまったのだが、しかしそれでも事件後のコクサイが世に送り出した製品から魅力が消えてなくなったわけではない。
1989年にはコンバットマグナムやM10といった、鉄板とも言えるリボルバーの人気機種をガスガンとして発売、1989年末から1990年にかけてはM29 44マグナムリボルバーを、もちろん今度こそ法律に違反しない形で発売と、「リボルバーのコクサイ」という評判どおりの精力的な製品展開を続けていた。
実際には、実銃の世界でもエアソフトガンの世界でも、既にリボルバーは時代遅れになりつつあった。実銃の場合、オートマチックがその信頼性を上げ、さらに装弾数も増加するにつれて、確実な作動や堅牢さといったリボルバーの利点は薄れ、装弾数が少なく再装填に時間がかかるという短所が目立つようになっていった。
エアソフトガンの場合は、ガスガン化するにあたっての技術的ハードルの高さが問題で、ガスタンクをどこに収納するのか、そこからカート、そしてバレルまでのガスルートをどうやって確保するか、ガス放出システムをどこに配置するかなど、リボルバーとしての魅力を損なわないままガスガン化するというのはそう簡単には実現し得ないもので、結果として当時作り出されたリボルバーのガスガンは、その構造(リアルさ)または実射性能、もしくはその両方が大きく犠牲にならざるを得なかったものが多いというのが実情だ。
リボルバーの欠点の一つである装弾数の少なさ、それを少しでも改善しようという試みは実銃でも行なわれた。普通は6連発であるリボルバーを、1発多くした7連発にするというものだ。 その後にはさらに1発増やして、一部の機種に限り、8発にしている。
弾数を増やせば当然シリンダーが大きくなる、そうすると銃は重くなるし横幅も増えてしまうのだが、1発だけであればあまり大きな変化はない。なんといっても装弾数が奇数になることで、シリンダーの強度的な弱点であるシリンダーノッチを肉厚が薄くなるシリンダーホールを避けて配置できるため、結果的にシリンダー外径をほとんど変えずに弾数を増やせるだ。

言葉だけでは難しいのでイラストも交えて説明しよう。リボルバーの、回転するシリンダーを決まった位置で停めるためのシリンダーストップは、よほど変わった構造をしていない限り、シリンダーの真下にある。なので当然、シリンダーストップが入るノッチ(溝)はシリンダーの真下に配置される。
その一方で、銃身はシリンダーの一番上にある弾の正面に配置されるのが普通だ。装弾数が偶数(6連発)だと、射撃時に一番上に弾が来るようにすると必然的に一番下にも弾(を入れる穴=ホール)が来る形になる。その結果、シリンダーの肉厚が一番薄くなるホール部分に、さらに肉厚を薄くしてしまうノッチを配置しなければならないのだ。
しかし装弾数が奇数であればこの問題は簡単に解決できる。シリンダーノッチが刻まれるのはホールとホールの間、肉厚に余裕がある部分になってくれるからだ。強度を確保するためにはシリンダー肉厚が最も薄くなる箇所に、最低限の寸法的余裕を設けなければならない。「最も薄くなる箇所の肉厚」が同じまま、つまり強度を確保したままでも、装弾数が奇数のリボルバーはシリンダー直径を小さくできるという大きな利点があるのだ
時代遅れと言われるリボルバーだが、それでも5連発の小型リボルバーだけは例外で、今でも警察などの法執行機関用や民間での護身用として大きなシェアを確保し続けているのは、この点が大きな理由になっているのだと思う。一発減らすのではなく増やす、つまり7連発にする場合も同じだ。